進化続ける大谷翔平、「投手」のピークはまだ先に◆MLBデータアナリストが分析
2026年01月08日11時00分
2025年の米大リーグで、ドジャースの大谷翔平選手が2季ぶりに投打の二刀流を復活させた。打者で打率2割8分2厘、55本塁打、102打点。投手ではリハビリを兼ねたシーズンで14試合に先発して1勝1敗、防御率2.87の数字を残し、ポストシーズンでも2勝を挙げてワールドシリーズ制覇に貢献した。大リーグ公式サイトのデータアナリスト、デービッド・アドラー氏は「打者としては絶頂期に近い。ただ、投手としてのピークはまだ先にある」と、さらなる進化を予想する。
26年シーズンも日米の野球ファンを魅了するであろう31歳のスーパースター。その投打について、アドラー氏が詳細に分析した。(時事通信ニューヨーク総局 岡田弘太郎)
理にかなう「アタックアングル」
25年の大谷は、打者として盗塁が24年の59個から20個に減り、打率も少し下がった。二刀流を復活させたシーズンで、打撃への影響はあったのだろうか。
「走塁のスピード自体は24年までと変わらず、リーグ平均より上。盗塁数が減ったのは(走塁時に肩を脱臼した)24年のプレーオフで起きたようなけがを避け、体力を温存する意図があったのではないか。打率に関しては2割8分2厘と悪くない数字を残しており、影響は感じない。平均打球速度もリーグトップクラスの数値を残している。やや引っ張る傾向が強くなったものの、打撃の力強さはこれまで通りだった」
ボールに当たる瞬間のバットの角度を示す「アタックアングル」にも特色が表れている。25年は15度で、24年の11度から上がり、これまでよりも角度が大きくなった。
「少しだけアッパースイングが強まっている。本塁打を量産する打者の特徴的な傾向。24年は高めを長打にする確率が高かったが、25年は低めの球を強くはじき返していた。スイングを変えたというよりも、相手投手の配球に対応した結果だろう。これは大谷のようなホームランバッターであれば特別なことではない。シュワーバー(フィリーズ)やローリー(マリナーズ)も同じ。打球速度に角度が備われば、より本塁打になる確率は高まるので、理にかなっている」
空振りを奪える高速スライダー
右肘の手術から2季ぶりに投手として復帰した。速球は平均98.4マイル(約158キロ)を記録し、96.8マイルだった23年よりも3キロ近く速くなっていた。
「右肘の靱帯(じんたい)修復手術から復帰1年目で2マイルも速くなるのは異例のこと。通常なら復帰2シーズン目に速くなることはある。そこが一番の驚きだった。もう一つは新たに高速スライダーが球種に加わり、今季のベストピッチになった。手術前よりもスピードが上がり、より鋭く落ちる軌道になった。以前は横変化のスイーパーを多く投げていたが、高速スライダーは左打者に非常に有効だった。レギュラーシーズンで多く使っていて、空振りを奪える最大の武器となった」
ポストシーズンでは3試合とも6イニングを投げた。ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズは2安打無失点、10奪三振の力投。レギュラーシーズンよりもスプリットを多く使って空振りを量産したのが印象的だった。
「スプリットはメジャーに来たばかりの頃のベストピッチだったが、ここ数年は制球に苦しんでいた。低めに狙って投げることができていなかったため、投げる割合が減っていた。復帰した後も試合で使っていたが、制球は安定していなかった。でもプレーオフに入ったら再び多く使うようになった。フィリーズ戦ではシュワーバーやハーパーから空振り三振を奪った。リーグ優勝決定シリーズでの10奪三振のうち、五つがスプリットで奪ったものだった。プレーオフという大きな舞台でスプリットの安定感を取り戻したことは今後につながるだろう」
投手大谷の完成形が見えた
23年はスイーパーが全球種の35.1%を占めたが、25年はスライダーやカーブ、シンカーなど多彩な球種を操るようになった。
「一番ナスティー(えげつない)な球種だったスプリットが復活し、高速スライダーが大きな武器として新たに加わった。カーブも多く使い、とても効果的だった。カットボールもあり、シンカーは長いイニングを投げるために有効で左右の打者を打ち取れる。打者1巡目から2巡目以降にいろいろな球種を操りながら試合をつくれるようにもなった。投手大谷が目指す完成形が見えたと言えるかもしれない」
大谷の二刀流のベストシーズンは22年だというアドラー氏。同年は投手として28試合に先発し、15勝9敗、防御率2.33、219奪三振を記録し、打者で34本塁打、95打点を挙げた。25年にプレーオフで見せた投球は進化の跡を感じさせ、二刀流の伸びしろに期待が高まる。
「実力的には将来的にサイ・ヤング賞を獲得することもできるだろう。25年のデータを見ると、フルシーズンを投げた時に同賞を争える投手であることがうかがえる。例えば、30試合に先発して180投球回くらいを投げられれば、彼の実力からして最終候補に挙がるような成績を残せるのではないか。22年に見せたような200奪三振をクリアし、防御率も3点以内に収めることができれば可能性は高まる。打撃ではレギュラーシーズンとポストシーズンを合わせて(長打の出やすい速度と角度を組み合わせた指標である)113バレルを記録した。この数値を計測して以来、過去最高だった。60本塁打を放つ可能性があり、打者としての絶頂期に近い。一方、投手としてのピークはまだ先にあると思う」
MVP&サイ・ヤング賞「ダブル」も
大谷は25年、3年連続4度目のシーズン最優秀選手(MVP)に輝いた。近い将来、バリー・ボンズが持つ通算7度の最多記録の更新にも期待が懸かる。
「最近5年間で4度のMVPを受賞している。唯一取れなかった年は投手で200奪三振をクリアし、30本塁打を放った22年。ジャッジ(ヤンキース)が62本塁打を放ったのが理由だった。大谷が投打の二刀流を続けている限り、MVPを獲得する可能性はとても高いと言える。他に誰もまねできないことを極めて高いレベルでやっているからね。ボンズの記録には誰も届かないと思われていたが、あと3~5年ほど二刀流で活躍できれば破ることもできると思う。投手としての伸びしろを考えれば、MVPとサイ・ヤング賞を両方受賞することだって可能だろう。自分で言っていて笑ってしまうくらい信じられないことだけどね」
25年は大谷の同僚の山本由伸投手がナ・リーグのサイ・ヤング賞候補3人に入った。将来的には大谷と山本が日本勢初を懸けて同賞を争う可能性もありそうだ。
「両投手ともサイ・ヤング賞を狙える実力があるから十分あり得るだろう。大谷の方が一つずつの球種のえげつなさはあるが、山本は投げたいように自在に操る能力があって投手として完成されている。25年は山本のすごさが証明された年だった。来季にも2人のハイレベルな争いが見られるかもしれないね」