花巻東のブルペンで見た怪物の片鱗 大谷翔平、高校3年秋に受けた衝撃の154キロと捕球できなかったスイーパー
当時、すでに190センチを超える長身。頭が小さく、首の裾野がしっかりして、手足が長く、腰の位置が高い。スタイルの長所をひとり占めしているかのような、のびやかなシルエット。バッテリー間の18.44メートル先が、すぐ目の前にあるかのように感じられた。 今考えると、すでにその頃から"メジャー"の匂いをプンプンと漂わせていた。立ち投げで、軽く腕を振ったボールでも、球道半ばからの"加速力"がすごい。これは逸材や大器と呼ばれる投手たちの絶対的な共通項だ。 腰を下ろして、マウンドの大谷くんを仰ぎ見る。大きいというより、高い! しゃがんでミットを構えると、顔をいっぱいに上げないと大谷くんの顔が見えない。むしろ、空を見上げるようにしないと、頭よりも高いリリースポイントが見えない。 リリースポイントが見えなきゃ、150キロのボールにミットが間に合うわけがない。 【見えなかった154キロの剛速球】 「真っすぐからお願いします!」 丸顔でちょっと甲高い声。ボールを持った右手を、こっちに向かってクイクイッとやる、そんな仕草ひとつからして美しい。 左ヒザが胸まで上がって、そこから先は見ている暇などない。あっという間に、ビシッとボールが来た。 速いというより、見えない。「よく見えますね」と言われることが多々あるが、150キロ前後の剛速球なんか見えるものか。「ここだ!」と思った"光線"のラインに、ミットを入れていくだけだ。 最初の1球からなんとか捕球できたのも、大谷くんがこちらの構えたミットに投げ込んでくれたから。今でもそう思っている。 きれいな縦回転のスピンで、真一文字にミットに突き刺さってくるから、「パーン」と乾いた捕球音が、心地よく耳に響く。 「何キロくらい出ていると思います?」 後ろで見ていたコーチの方に聞いてみる。 「いやぁ......150キロは出てないぐらいですかね。ちょっと待ってね」 そう言って、スピードガンを構えてくれた。