花巻東のブルペンで見た怪物の片鱗 大谷翔平、高校3年秋に受けた衝撃の154キロと捕球できなかったスイーパー
立ち投げの初球が、飛び上がっても間に合わないほど高く抜けた。大谷くんは突っ立ったまま投げている。その時のイメージは、竹馬に乗って投げているような......それほど強烈な違和感があった。 5球、6球......。頭より高いボールが続き、指にもまったくかかっていない。ダメだ......投げるのを怖がっている。 「大谷くん、やめとこう。これ以上、無理だ!」 「いや、大丈夫です!」 こういう時、真面目で腕に自信のある高校生ほど「大丈夫」だと言う。大人のほうが心を鬼にしないと、取り返しのつかないことになったりする。 「ダメ! これ以上投げたら、壊れる。体調のいい時に、またお願い!」 今となっては、思いとどまらせて、本当によかったと思っている。 せっかく岩手まで来たんだから......などとさもしい了見で、あの冷え込んだブルペンで投げさせ続けていたら。もしかしたら、今の「世界の大谷翔平」はいなかったかもしれない。そこまでのことはなかったとしても、万が一と考えたら、今も背中がゾクッとしてしまう。 【球道半ばからの加速力のすごさ】 というわけで、大谷くんの二度目のブルペンは、高校3年の秋、現役を退いたあとのことだった。まだ十分に暑かったから、9月の終わり頃。いずれにしても、ドラフトを控えたタイミングだった。 「なんだ、現役を退いたあとか......」と思うなかれ。じつは、高校生の投手のボールは、3年秋が一番えぐい。強いられた練習はなく、公式戦登板という緊張もなく、自分の思うまま調整できる、いわば"ノンプレッシャー"の時期。ただ受けるこっちは、シーズン中より、ずっとプレッシャーがかかる。 そういうわけで、高校3年秋の大谷くんは、とんでもないボールを投げ込んできてくれた。 二度目の舞台は、花巻東のグラウンドの三塁側ブルペン。ネットを挟んで、少し高くなっている場所から、花巻東ファンらしき人たちが何人か見ていて恥ずかしい。ただそれ以上に、ブルペンのマウンドに立つ大谷くんの姿が美しい。