小銃発射事件で自衛官確保懸念 任期制縮小を検討

岐阜市の陸上自衛隊射撃場で自衛官候補生が隊員3人を小銃で死傷させた事件を受け、防衛省・自衛隊で自衛官のなり手不足が深刻化しないか懸念が深まっている。今春採用の自衛官候補生が計画数を大幅に下回るなど、ただでさえ人材確保が喫緊の課題となっている。防衛省は雇用形態が不安定な任期制自衛官の縮小を検討しているが、事件が来年度の採用増加に向けた動きに水を差さないか関係者は気をもんでいる。

「まだ背景事情がよく分からないが、事件が採用に影響しないか心配だ」

ある自衛隊幹部は小銃発射事件について、こう懸念を漏らした。教官らが銃撃される凄惨な光景を目の当たりにした若い訓練生らの「心のケア」も必要だと強調した。

今春採用の自衛官候補生は計画数9245人に対し、実際の採用数は4500人程度にとどまった。計画達成率は5割を切り、現行制度となった平成21年度以降、過去最低だった30年度の72%を大きく下回った。殺人容疑で送検された18歳の男は、その1人だ。

自衛隊では部隊の精強性を維持するため、若年層の確保策として任期制を採ってきた。今年は少子化に加え、新型コロナウイルス禍から企業などが採用を回復させた動きも重なり、熾烈な競争下に置かれた。ロシアのウクライナ侵略で武力行使が現実感を増し、自衛隊が忌避される傾向を指摘する声もある。

一方、任期がない「一般曹候補生」は採用計画数6980人をおおむね達成できている。防衛省は、1任期2~3年で雇用形態が不安定な自衛官候補生の採用枠を減らし、比較的安定的な一般曹候補生を増やす方向で対策を検討する。

しかし、それも「対症療法」(防衛省幹部)に過ぎない。今後5年間で防衛力の抜本強化を目指す中、防衛省は今年2月、有識者会議を設置して対策を協議してきた。任期と非任期の比率だけでなく手当の拡充など待遇改善に踏み込み、今夏にも対策をまとめる方向で検討を進めている。

こうした中、自衛官候補生の実弾射撃訓練中に事件は起きた。ある防衛省幹部は「採用者の質は確保できている」として事件と採用難の因果関係を否定した上で、自衛官希望者の減少に拍車がかかることに強い懸念を示す。「防衛力強化のため定数は維持する方向だが、質を維持するためには減員も考えた方がいいかもしれない」と苦しい胸中を明かした。(市岡豊大)

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