町の書店は取次によって倒産を免れている?取次から「頼んでもいない本が届く」不条理を批判しきれない業界の歪み
「売るも地獄、返すも地獄」──。町の書店から長年“嫌われ者”として不満の矢面に立たされてきた「取次」ですが、実は彼らこそが日本の出版文化を守るキープレイヤーであることはあまり知られていません。 もし現在、大手取次が機能不全に陥れば、下手をすれば全国の書店の約半分が潰れてしまうかもしれません。私たちが本を手に取る日常は文字通り崩壊するでしょう。取次が担う「金融機能」など知られざる実態を紐解き、業界の最重要プレイヤーの真実に迫ります。
※本稿は『書店を守れ!』から一部抜粋しています。 ■書籍流通のキープレイヤー「取次」とは? 本稿では、書店を巡る諸問題に関する私の認識と、それに対する処方箋について述べていきます。最初に取り上げるのは「取次」の問題です。取次は、現在の書店業界・出版業界を取り巻く「危機」について語るうえで、最重要のキープレイヤーです。にもかかわらず、その存在は、一般にはあまり広く知られていません。 出版社の編集者のなかにも、取次の業務をよく理解していない人がいます。そこで、まずは取次に関する基本的な知識を共有しておきたいと思います。
読者のみなさんは、書店が本をどこから仕入れているのか、ご存じですか? 「出版社から直接送られてくる」と思った人もいるかもしれませんが、出版社と書店の「直取引(ちょくとりひき)」はあまり多くありません。 統計によってばらつきはありますが、日本には実に数千もの出版社が存在するとされています。社会的に広く認知されている中堅〜大手に絞っても、300〜400社です。これらすべての出版社と、書店が直接やりとりするのは現実的とは言えませんし、出版社・書店の双方に負担が大きすぎて、業務がパンクしてしまいます。ですから、みなさんが書店で目にする書籍の大半は、「取次」と呼ばれる業者から仕入れたものです。
では、取次とはどんな組織なのか。一言で言うと、出版社と書店の間に立って、本や雑誌を全国に運び、お金のやりとりもする「流通と決済のハブ」です。農家(出版社)から野菜(本)を集めて市場で仕分けし、町の青果店(書店)へ一斉に届ける、中央市場のようなものだと言えばイメージしやすいでしょうか。 出版社が作った本が書店に届くまでの流れは、おおよそ次のように要約できます。まず、出版社は新刊の情報を取次に知らせ、刷り上がった見本を取次に搬入します。取次は、過去の販売実績や予約数、店舗の規模などを基に初回の配本数を決め、発売日に間に合うよう各地の書店へ一斉出荷します。私たちが「全国どこでも、発売日から近日に新刊が並ぶ」環境を享受できているのは、この一括集配の仕組みがあるからです。