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【槍弓】其の手に剣を持った正義/Novel by 331

【槍弓】其の手に剣を持った正義

6,237 character(s)12 mins

アニキ、あちゃおをしこたま甘やかすの巻です。

どっかの兎さんみたく「眠れないアル。」みたいな状態に陥ったときに思いついた話なのでだいぶ頭が湧いています。
明るくはないです。当社比としては暗い部類に入るかと。いや、普段もそう明るくはありませんが。
あとは、そうだな、元気よく捏造しています。あ、捏造はいつもですね。
あとは、そうだな、我がカルデアは層が薄すぎてなかなか塔が登れません。助けてフレンドさん。

因みにタイトルはオスカー・ワイルドの言葉より改変しましたが、オスカー・ワイルドの名前を思い出すのに難儀しました。
ダブリン出身で、男色家で、えーっと、みたいな所まででてきたのにそこから先が繋がりませんで。
ザ・ロックのメイソンが挙げてた人や!ってトコまでおもいだしたのでそこからグーグル先生にぶつけました。出ました。ありがとうグーグル先生。

途中で終わってますが、前後編くらいだと思っていただければ。

あと、投稿の形式がてんで変わってたからとてもびっくりしたよ。

[H30.2.12追記]一箇所地名を変更しました。あんまきにしないでね

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 其の座に足を踏み入れた時、余りの痛ましさに大きく息を呑んでしまった
 此の光景よりも悲惨な場面など幾らでも目にした事がある。幾らでも思い出せる。
 只、此の座は、酷い。余りにも痛々しい。
 冷たく凍てつく様な風、焼けた赤い空、重々しく回る歯車。
 無限の荒野に広がる無限に突き立てられた剣。
 此の座の主は、もう、限界なのだと察せられる。
 其れでも態々来てしまったのだから顔を拝まずには帰れない。気が滅入って重くなった足取りで無理矢理に荒野を進む。
 座の主の気配は周囲に漂っているが余りにも朧気で、霊基の核に至っては存在が儚い。
 さて、進むは良いが見付けられるのか。
 些か不安が過る。
 何れ程歩みを進めただろうか。時の感覚は失われて久しい。但し、随分と長く進んだ事だけは自覚している。そして長らく進んだ先、其れは、居た。
 数多の剣の中から選び抜かれたであろう其れ等が籠の様に組まれた其の只中で、其れは横たわっている。
 安楽椅子に体を預けている様な体勢で。しかし、剣に刺し貫かれた状態で。
 無防備に晒した喉を刺し貫くのは何時ぞや見掛けた最強の神造兵器。階級は幾つか落ちてはいるものの、他の武器と比すれば性能は申し分ない。其の複製は見事だ。
 しかし、何故だろう。
 胸を刺し貫く一本だけが剣ではない。
 ゲイ・ボルグは己の得物だ。
 胸を刺し貫いた赤い呪槍。狙い過たず心臓を破いている。
 だのに、其の顔は余りにも安らかだ。
 眠っているのではない。無理矢理停止しているのだ。自ら。最早、其れは全てを停止させてしまう事でしか、安らぐ事が出来ない。
 其れに思い至って、言葉を失う。何も出てこない。此の、腹に澱み胸に蟠り頭を掻き乱す此の感情を表す言葉が見当たらない。
 見当たらない儘、手を延べた。
 頬に触れる。冷たい。
 戦慄く唇を押して喉を震わせた。
「―――エミヤシロウ。」
 意外にも口を突いて出たのは呼び慣れたクラス名ではなく、真名だった。


『其の手に剣を持った正義』
/致命的なる誠実さ


 丁度其の時、本体が新たな召喚を受けた。時間切れだ。此れ以上此処には留まれない。
 息を吐き切って瞼を下ろす。意識を飛ばして体を解いた。
 そして新たに分霊を編み上げる、喚ばれた其の先へ飛びながら。
 さて、此度の召喚者は誰なのか、思いを馳せながら。
 しかし其の思いも途切れてしまう。ドォン、と衝撃を受けてもんどり打って転げ回った。でんぐり返しの途中のような芸術的な体勢で漸く止まる。
 痛みはないが衝撃が凄かった。辟易しながら僅かに瞼を上げる。気配で悟る。時刻は夜か。其れも日付が変わる頃。大気中のマナが薄い。空気も故郷とあまりに違う。どうやら外れの時代と場所に喚び出されてしまった様だ。
 上下逆さの視界の中、どうも倉庫の一角らしいというのが知れた。頭上に当たるコンクリの床一面に雑な魔法陣が描かれている。余程急いで描いたと見えて、細部の省略は激しいし、所々は間違ってはいないがかなり怪しい。よくもまぁ此んな不確実なもので喚び出せたな、と呆れ半分関心半分で瞠目する。余程、運が良かったか。そして其の中でも己が喚び出されたのは、唯の偶然か、余程、己との縁があるのか。
 何方にしろ何時迄もでんぐり返しの途中で止まっている訳にも行かないので横に転がって体を起こした。
 左手には魔力を帯びた無数の使い魔。
 そして、右手には白い外套を躰に巻き付けて座り込んだ、人だ。僅かながら流れを感じる。如何やら、此れが此度のマスターらしい。
 目深に被っている所為で目元所か口元すら伺えない。但し、体付きで男だと分かった。
 本人が庇っているので見えにくかったがどうやら右腕を負傷している。
 否。右腕を切り裂いて此の魔法陣を描いたのだ。度胸だけは買ってやるとしよう。
 のそりと立ち上がった。
 男を見下ろす。
「―――サーヴァント・ランサー、召喚に応じ参上した。さて、御前さんが俺のマスターか、」
 男が応えようと身動ぐ。其れを邪魔するのが背後で固まっていた使い魔共だ。遠慮会釈なく飛びかかってくる。余りの鬱陶しさにランサーは顔を顰めて怒鳴り散らした。
「邪魔すんな!」
 同時にルーンを発動する。
 一度散らす程度のつもりで発動した其れは、ランサーの意図せざる威力をもって使い魔を一掃してしまった。
 残って漂う熱風に髪を煽られて訝しげに眉を顰める。如何言う事だ、此の能力は時代と地域が見合っていない。
「…凄いな、流石だ。」
 外套の男からぽつりと漏れた声。何処かで聞き覚えのある様な、無い様な。
 男が未だ出血の止まらぬ右腕を押さえつつ、億劫そうに立ち上がる。立ち上がって、顔を上げた。一度右腕から手を離してフードの様に被っていた外套を下ろす。
 ランサーは息を呑んだ。
 受肉したばかりの此の仮初の躰に、本当は必要のない空気だとしても。
「あんた、クー・フーリンだろ、」
 眞白の頭髪、焼けた肌、笑うと存外に幼い顔立ち。
 アーチャー。
 呼びかけようとして、思い止まった。思考を高速で巡らせる。
 何だ、様子が可笑しい。抑もサーヴァントがサーヴァントを喚び出せるのか。否、実例を思い出す。記録から呼び出す。幾つもの平行世界での記録だ。何時かのイレギュラーな聖杯戦争、否や、聖杯戦争なぞ何時だってイレギュラーなのだが、彼の時はサーヴァントにも関わらずキャスターが魔術師としてアサシンを喚び出していた。
 此の男も魔術師の端くれだったか。其れならば喚び出す事も不可能ではないのか。
 ランサーの逡巡を知ってか知らずか、男は、「嗚呼、如何しようかな、」等と漏らしつつ己の腕を見下ろしている。結局、筆にする為にぐずぐずにしてしまった右手は止して比較的無事だが血塗れになった左手に決めたらしい。無理矢理、己の外套で乱雑に血を拭う。
 其の左手を、差し出した。相も変わらず、笑みを湛えた儘。
「俺、衛宮士郎。あんたに遭うのは、二回目だ。」
 呆気にとられた儘、其の手を取る。
 こびり付いた血液を媒介にしてパスが一瞬、強化される。
 そして、至った。
 此奴は、サーヴァントではない。未だ、生きている、生身の、人間だ、と。
 そして、合点する。己が呼び出される訳だ。此奴の心臓には己の因果が刻まれている。

 町外れの空き家が今の拠点だという。
 簡易な魔術による警戒線、しかし常人には十二分な施錠を超えて案内された。
 がらんとして埃に塗れた空き家の中で唯一清潔にされた居間が、今の根城なのだという。
 色々と積もる話があるのだが、先ずは傷を如何にかしたいと言い出した。
「嗚呼、其んなもん、直ぐ治せ。」
 顎でしゃくって示すと、マスターは少し困った風に笑った。丸で、嘗ての少年の様な表情で。調子が乱れる。
「―――俺、余り上手くないんだ。」
「は、」
「強化と複製だけが得意で、其れしか、出来ない。」
 「洗ってくる。」と言い残して居間を後にしようとするのを取っ捕まえた。
 ぼはぁ、と盛大に息を吐いて「出せ。」と低い声で命じる。
 意図を掴み損ねたらしく、マスターは眉を顰めている。
「出せ、右手。」
 もう一度命じると、怖ず怖ずとぐずぐずに傷つけた右腕を差し出してきた。
 改めて良く良く見遣る。酷い。中指が特に。引き金を引く人差し指、握把を支える親指と薬指、小指は残したのか。掌も出血を誘う為にメッタ斬りにしている。手首から上腕にかけてもだ。
 痛かろうに。
 必死だったのだろう。如何にかして、誰かを喚び出そうと。限られた時間で、彼れだけの魔法陣を描き上げた。真逆、自分だとは思わなかった様だが。
 低く謳って傷を癒やす。瞬きの間に治った右手にマスターは酷く感心している。
「凄いな、あんた。」
 口調が一々幼くてギャップが凄まじい。頬が妙にひくつくのは未だ、少し慣れないからだ。
 其れを誤魔化そうとランサーも己の右手を見遣る。握ったり、開いたり。
「俺自身も如何も納得、行かなくてな。」
 マスターはきょとりと目を丸くして小首を傾げている。何だ、凶器か。威力が半端ないぞ。
 片目を眇めて押し殺し、続けた。
「―――大気中のマナが薄い。時代が離れ過ぎてやがる。其れに此処ァ、俺の故郷じゃねェ。其れだってのに、どうも俺が元の俺に近過ぎる気がするんだが。」
 マスターは治ったばかりの右手を口元に当てて、考え込む。「嗚呼、良かったら座ってくれ。」などとスリーピングの上を示しながら。其の一方で己は床に直に座ろうとするものだから見かねて端に転がっていたクッションを引っ掴んで押し付けた。
 埃に塗れていた其れを受け取るのにマスターは難色を示したが、ランサーが尚も押し付けるので渋々、受け取った。
 受け取った其れが、何時の間にか新品同然になっている。また、目を丸くしている。
「―――何か、したか、」
 クッションを押し付けた当のランサーも己の手を訝しげに見つめている。
「否や、何も。―――でも、嗚呼、此れァかなり来てるな。」
「何が。」
 如何説明したものか、迷ったが、らしくないと直ぐに止めにした。端的に答える。
「神は汚れを厭う。」
 しかし其れで腑に落ちたらしい。マスターが「矢張りそうか。」と頷いている。
「あんた、多分、負の補正が掛かってない。完全に相殺はされてないが、相当、打ち消されてる。」
「補正、」
「時代がかなり下ってるから大気のマナは薄い。あんたは息苦しい位だろう。其れに此処はアイルランドでもない。欧州ですらない。中央亜細亜だ。遠く離れ過ぎていて地域もマイナスに作用する。
 でも、此処一帯は国連軍の展開地域なんだ。」
 意外な単語に今度はランサーが首をかしげる番だ。一体、国連軍が如何したと言うのだ。
「アイルランドの部隊が来てる。」
 マスターがデイパックから地図を引っ張り出した。綺麗に折られた其の地図は彼方此方が補修されて随分と使い込まれている。
 治してやった長く美しい指が綺麗な爪を備えて広げた地図を辿る。ランサーも地図を覗き込んだ。
「現在地が此処、聖杯の影響下はざっと此の範囲。此の、端に国連軍のキャンプが引っ掛かってる。」
 示された地域。確かに、此処なら部隊も展開し易いだろう。
「此の人達の信仰が、あんたのハンデを帳消しにした。」
 マスターは丸で我が事の様に自慢げな顔をしている。
 如何な表情を返せば良いか咄嗟に思い至らなかった。何とも言えぬ顔の儘、ランサーは躰を起こした。
「…ほォん、然様か。」
 マスターは未だ地図に視線を落とした儘、僅かに弾んだ声で続ける。
「アイルランドだけじゃない。欧州の他の部隊も、幾つか。あんたの話を寝物語で聞いた連中だろう。信仰と知名度で補正が修正されてる。」
 しかし其処で、ぐっ、とマスターの躰が傾いだ。息を詰めて、否、呼吸が可笑しい。
「おい、」
 ランサーの手が届く前にマスターの躰は沈んでしまった。愈々息が荒い。
「―――マスター、」
 呼んだ所で応えが無い。荒い呼吸が続いている。
 肩へと延べた手は、しかし礼を逸しない程度の強さで払われた。
「済まない。見苦しい所を。大丈夫だ。」
 とても大丈夫に見えない。見えないから、其の儘、告げる。
「一ミリも其んな風には見えねェがな。」
 マスターは掠れた声で「はは、」と笑い声を漏らした。笑っている場合でも無い。
「―――面目ない。魔力を使い切ってしまって。其の上、かなり出血したから、多分、貧血だと思うんだ。水を摂って、休めば、何とか。」
 其れは一体何時迄待つ事になるのか。
 己は余り気が長い方では無いのを重々承知しているランサーは右手の人差指と中指を揃えると、俯くマスターの額に押し当てて力を流した。
「然様か。ならば休め。」
 マスターの鋼色の瞳がぐわん、と揺らぐ。
 遠のく意識を手放すまいと抗っているが其れも直に力尽きる。
 尚も床へと沈むマスターが抵抗出来ないのを良い事に横抱きに抱え上げると己の座していたスリーピングの上に横たえた。転がっているクッションや隅に寄せられた儘のクッションを掻き集めて体勢を整えてやり、デイパックの脇に置かれていた外套を取り上げる。勿論、触れるだけで何れも汚れは払われた。
 外套をばさりと広げてマスターに掛けてやる。
「…ランサー、」
 掠れた声で呼ばわる。かさついた唇に人差し指を押し当てて、「シィ―――…、」と宥める。
「眠れ坊主。今は休め。」
 マスターの瞳がとろりと溶けて、「もう、坊主って、年じゃ…、」と零し、瞼は静かに閉ざされた。
 鼻から盛大に息を吐き出して、天井を仰ぐ。
「笑うの下っ手糞。」
 無論、マスターには届いていない。

 空き家の屋根に降り立った。勿論、足音一つ立てる事無く。
 階下ではマスターが深い眠りについている。ルーンで厳重に結界を施した。マスターを仇なす者は入れない。生憎とマスター自身も出られないが。 
 夜空を振り仰ぐ。上弦の月は西の彼方へ。星が瞬き埋め尽くしている。
 何時か喚び出された都会での聖杯戦争とは大違いだ。彼の時、夜空を埋め尽くすのは人の作り出す光の束だった。幾ら目を凝らしても星なぞ拝めはしなかった。
 息を吐く。受肉した躰から吐き出された其れは温かく、白く烟る。此の地域は昼夜の寒暖差が激しい。
 其の白く烟った息が解けて失せるのと、声をかけられたのは同時だった。
「―――入っても良いかい、」
 振り向かぬ儘、首を傾げてばきりと鳴らす。
「もう入ってるだろ。」
 ランサーの切り返しに相手は笑った。
「違いない。邪魔するぜ。」
 横に並んだのは黒髪に褐色の肌の人好きのする笑みを浮かべた男だった。
 訝しげな顔をするランサーに深くした笑みを返し、横を過ぎて縁迄、進む。見下ろしながら口を開いた。
「彼奴、何だかんだ言いながら、召喚させたんだな。良かった。」
 ランサーは更に目を細める。
「手前ェもサーヴァントだろう、何言ってやがる。」
 肩越しに振り返り、ランサーの表情を認めると、男は―――サーヴァントは片眉を跳ね上げた。振り返って、「嗚呼ー―――っと、」漏らし、「あ、こうか。」と思い至って両手を広げて肩迄上げて見せる。
「―――何だ其れ。」
「敵意が無い、って仕草だ。此れで合ってるかい、」
「あ、」
 思わぬ台詞に剣呑な呻き声が漏れたが、埒が明かぬ、とランサーは諦めた。
「然様かよ。」
 額に握り拳を当てて呻くしか無い。
 サーヴァントは笑っている。
「彼奴の代わりに説明に来た。どうせ、ガス欠で寝込んじまったんだろ、」
 寄せた眉間の皺を解かぬ儘、ランサーは顔を上げた。
「俺はアーラシュ・カマンガー。クラスはアーチャー。マスターは、そうだな、正確に言うと、居ない。」
 アーチャーの台詞にランサーの眉間の皺が深くなる。
「話をしよう。此の、歪な聖杯戦争の。」
 アーラシュが優しくて、其れでいて喰えない笑みを浮かべている。


[つづくよ→その2だよ

Comments

  • ツキ影
    January 28, 2018
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