light
pixiv's Guidelines will be updated on March 18th, 2026.
View details
The Works "ぷらいべったー再録・再び" is tagged "赤騎弓".
ぷらいべったー再録・再び/Novel by なぁぎ

ぷらいべったー再録・再び

2,062 character(s)4 mins

多分しぶには載せていないのを引っ張ってきました。載せていたら教えてください記憶がない(2回目)
ツイッターで赤騎弓祭りをやっているようなのですが鍵アカなので参加できないのでひっそりと。
6年前に書いた作品でした我ながら息が長いな?
当時はただどこかの南の海ということで書いてましたが、今ならルルハワが舞台といっても通じるなこれ。

1
white
horizontal

青い海。
否、碧い海。
南国特有のマリンブルーの海中を、アーチャーはあてもなく泳ぐ。
特に目標がある訳ではなく、かといって海中では黙っていることも出来ない。沈むからだ。
既に死人である自分は溺れることは無いと思うが、それでも生前の思考回路が沈むのは拙いと騒ぐ。
故に泳ぐ。泳ぐ。
そもそも何故自分がこのような海の直中に居るのかを思い返せば、少なからず流された自分を思い返してしまうのでそれも封印する。
泳いでいれば多少の嫌なことは忘れられると、ひたすらに体を動かした。

沖合にある岩に掴まり、出発点である浜辺を振り返る。
意外と遠い気もするが、霊体化すればあっという間の距離でもある。
さてこれからどうすべきか。
自分をここに連れてきた男は、女性に声をかけられていたので速やかに放置してきた。
今頃女性と歩いているのか自分を捜しているのか定かではないが、互いに子供ではないのだからヴィラへの戻り方くらいは心得ている。なのでそちらは放っておいても問題なしと判断して、アーチャーの思考は再び最初の問題へと戻った。
則ち、これからどうするか、である。
このままこの岩に掴まっていても仕方ないので、更に沖合に向かうか、浜辺に戻るか。
この岩の上で甲羅干しでもいいのだが、少々日差しがきついのでそれは却下。
残るはこの辺りに点在している岩の間を渡り歩くことだが、さてどうすべきかと思考に嵌りかけているアーチャーの身体を、何者かが突いた。
人よりも遙かに軽いその感触に何かと水中を覗けば、鮮やかな熱帯魚が数匹、アーチャーの前に固まっている。
この岩に巣や餌場でも有るのかと思い場所を移動してみたが、何故かその魚たちは一緒になって着いてきて、アーチャーは首を傾げた。魚たちはアーチャーの身体でも、特に指先を狙って突いてきて、その様子にふと思い当たる。
何処かのガイドが観光客相手に、この辺りの魚には餌付けされているのがいて、その魚たちは人を見つけると寄ってくると説明したのではなかったか。
成る程、この魚たちがそうなのかと一人納得し、再度水中に目をやる。餌を貰えないと分かったのか去ろうとする魚もいれば、諦め悪く指を突いてくる魚もいる。性格だろうかと埒もない事を考えて、アーチャーはこの後の方針を決めた。

ばしゃん。

日射しから逃げるように、水中へと。


水中は海上とは別世界だ。
鮮やかな魚に、珊瑚や海草。見たこともないカラフルな貝に、岩の隙間にいるのはうつぼかエビか。
海に潜る前、南国の大地の実に色鮮やかであったが、それとはまた違う世界の賑やかさに、息継ぎを忘れてアーチャーは潜り続ける。
高速移動するシャコの後ろを見送って、何故か付いてくる小魚の群れを後ろに従えながら海中を進んでいると、遠くから誰かが泳いでくるのが見えた。
それが自分の連れであることに気付いたが、特に気にすることもなくアーチャーは泳ぎ続ける。すれ違えばいいことだ。
前へ前へ。男の方へ。

やがて、ハッキリとその姿が見え、表情すらも分かるようになってくる。
普段は逆立てている髪が海中だと柔らかく揺れ、その印象を変えている。陸上では戦士である男は、彼の母の故郷である海の中では、その神の血をより強く出すようだ。
そんな風に感心している間にも、男は更にアーチャーに近づいてくる。アーチャーが近づくよりも男のスピードの方が早い。
あっという間に男はアーチャーの目の前に達し、その両腕をアーチャーに伸ばす。その慣性のままに抱きつかれたアーチャーは体勢を崩し、後ろにゆっくりと倒れていった。背後の小魚たちがその鱗を陽の光に反射させながら左右に散る。

“つかまえた”

男はそう口を動かした。
水中故に言葉は聞こえない。だが、ハッキリと彼は言う。嬉しそうに。
それに対してアーチャーが何かを答えようと口を開いた瞬間、男は片手でアーチャーの顎を捕らえて、もう片手でその身体をぐっと引き寄せた。
こぽり。僅かな空気の泡が海面に向かう。
ふわりぷかり。柔らかに踊る白と金緑の髪が、触れ合い交わり解けていく。

海の味しかしない、最低なキスをする。


魚たちを引き連れて、半神たる男は去っていく。イルカまで混ざっているその姿に、そう言えば彼の母親は海の神、あるいはその娘だったかともう一度思い出す。
キスだけして、何事もなかったかのように去っていく男の背中をどこかぼんやりと見送って、さてどうしようかと考える。

捕まえられたらしいのでひとまずは一緒に戻ってやるべきか、なんて考えてしまったので、ヴィラに戻ったら男を殴っておくことを心に決めて、海上に顔を出す。
そうしたら意外と近くにいた男が嬉しそうに手を振ったので、アーチャーは思わず目を細めた。
男が太陽を背にしていたからで、水も滴るいい男ぶりに驚いたからではない。断じて。

自分への言い訳に必死な様子を、男がニヤニヤしながら見ていることなど全く気付かないアーチャーの隣で、小魚が一匹、ぱちゃん、と跳ねた。


Comments

  • 銃鬼
    May 3, 2020
  • anzu
    May 1, 2020
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags