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日本の男子接種率は1%未満。でも……

男子もHPVウイルスによる関連疾患があるにも拘らず、日本の男子接種率は1%未満と推測されている。「推測」と書いたのは、男子接種率の公的な調査“すら”行われていないためだ。

重見医師に男子の接種が全く進まない原因を聞いてみた。

「一番の理由は、男子はまだ定期接種の対象ではないこと。医療機関によってばらつきがありますが国による公的支援がなく、自費で接種する場合、4価で5〜6万円程度、9価の場合は8〜10万円前後程度かかります。対象年齢であれば男子も全額助成、半額助成など公費補助がある市区町村もありますが、まったく助成がない自治体もあってバラバラなのが現状です。

そして、学校での周知がほぼなく、女子の場合は婦人科などで接種が受けられますが、男子が接種しやすい医療機関がまだ少ないことも一因ですね。また、親世代がHPVワクチンを経験しておらず、自分の経験として子どもにHPVワクチンの重要性が語れない、HPVワクチンに関する基本的な知識がないために積極的に接種を勧める・情報を求めることができないというのも大きいと思います」(重見医師)

親が接種していない世代であることも広まらない要因のひとつと言われている。photo/iStock
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ただし、国の制度が追いつかない中で、先行して動き始めている自治体もある。東京都では私が住んでいる豊島区だけでなく、23区と15の市町が小学校6年生〜高校1年生相当の男子を対象に全額助成(一部負担の自治体あり)を実施しているし、神奈川・大阪・福岡など、男子への助成を開始する自治体が増えている

そして遅ればせながら国も男子のHPVワクチン接種について、前向きな動きを見せている。

2024〜2025年の厚労省審議会では、男子の定期接種化が正式に議題として扱われている。HPVワクチンの有効性・安全性は国内外の複数の大規模研究で確認されており、現在は費用対効果などの課題を議論中だ。また、32の医学会は連名で「男子の定期接種化を速やかに導入すべき」と要望書を提出している。世界から後れを取っているとはいえ、制度として着実に動き始めているのは確かだ。

HPVワクチンは、世界でも数少ない「がんを予防できるワクチン」のひとつだ。予防できるがんなら、できる限り防ぎたい──その思いに性差はない。

必要性が理解されても、実際に接種が進むかどうかは子どもとその親のマインドにも関わってくる。HPVは性行為で感染するウイルスなので、親子で話しづらい。そもそも包括的な性教育が不十分。男子の場合はとくに医療機関にアクセスしづらい、などなど。日本にはまだ多くの心理的ハードルがある。

HPVが性交渉と関連があるのは事実。でも、対象年齢となる小6の子ども自身が“自分ごと”として理解できる伝え方はあるのだろうか。その答えを重見医師とともに後編で探っていきたい。

重見大介医師
婦人科専門医/公衆衛生学修士/株式会社Kids Public 「産婦人科オンライン」代表。著書に男の子のための性教育本、『RESPECT 男の子が知っておきたいセックスのすべて』などがある。ニュースレターなどでも医療情報をわかりやすく発信している。

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