light
pixiv's Guidelines will be updated on March 18th, 2026.
View details
The Works "【赤騎弓】それは白玉の柔らかさ" is tagged "腐向け" and "赤騎弓".
【赤騎弓】それは白玉の柔らかさ/Novel by marduk

【赤騎弓】それは白玉の柔らかさ

2,075 character(s)4 mins

ア.キ.レ.ウ.スの初手Bアクションの跳び蹴りが凄く好きなのでもっと敵として出てきて欲しい。
※ただしイベントに限る

(本当は赤騎弓のデートが書きたかった)

1
white
horizontal

 10メートル先の彼が消えたかと思えば、次の瞬間視界を埋めたのは分厚い鉄靴の裏側だった。跳び蹴りで一足に距離を詰められた。顎先を掠める踵の向こうから槍の穂先が首を薙ぎに来る。急所を庇った莫耶が砕け、魔力光となって中空に溶けていった。
「どうしたエミヤ。初手で終わりなんて、つまらん結果にしてくれるなよ。」
 追撃は無い。彼我の距離はさらに開いて20メートルはあろうか、というところだが、古今東西あらゆる英雄の中で最も迅いという伝説を持つアキレウスにとってみれば、このような距離はあってないようなものだろう。
 草原フィールドに設定されたシミュレーション内はただ広く、樹木の一本も確認できない。障害物を利用した遠距離狙撃は望むべくもなく、接近戦は必至だった。破砕された莫邪を再度投影し、改めて彼の突進に備える。先手は取らない。速さで劣る以上、たとえ彼の隙をつくことができたとしても、後の先を譲る結果にしかならないからだ。
「君こそ、私の剣を1本砕いたからといって、手を緩めるとは油断が過ぎるのでないかね?」
 足の先、指の先、身体の重心。彼の初動の兆候を見逃さぬよう、全霊で見る。此度の現界はライダーとして召喚されたアキレウスだが、最速の英雄の名に恥じぬ迅さを誇っている。最初の挙動を見逃せば、次の瞬間地に伏すことになるのは自明の理だった。
「残念だがこれは殺し合いじゃない。であれば、少しでも長く楽しみたいと思うのはおかしなこと…かっ!!?」
 台詞の最後はエミヤの目の前から聞こえた。突っ込んできた槍を干将を犠牲にしていなし、擦れ違いざま莫邪を衝き込んでやる。左胸を狙った剣先は、しかし虚しく宙を薙いだ。明るい若草の髪が地面近くで揺れている。
(足払い…ッ!!)
 足払いというには過剰な威力の蹴りを脹脛に受け(英霊でなければ間違いなく膝から下が消し飛んでいる)、背を強か打ち付けた。遠慮なく頭蓋を追って落ちてくる靴裏を既の所で避け、鎧で覆われていないアキレウスの太腿目掛けて夫婦剣を振り下ろす。しかし刃は槍に阻まれ、それを振りぬく膂力だけでエミヤの身体は宙を舞った。吹き飛ぶ勢いもそのままに中空で姿勢を正し、大弓を投影。『壊れた幻想』を撃ち放つ。当たるとは思っていない。アキレウスの進攻ルートを限定させることができれば良い。
 こちらの意図は見抜かれているだろうが、アキレウスは正直に攻撃の隙を縫って突っ込んできた。溢れんばかりの期待に輝く表情は、握られた槍に宿る殺気とはあまりにちぐはぐで、少し可笑しい。
「笑っていられるとは余裕だなァ、エミヤッ!!」
 槍が己が身を貫かんとする刹那、全霊で引き絞った矢をそっと離す。渾身の零距離射撃。投影宝具の爆風に押され大きく後退したエミヤの身体は、次の瞬間再び地に伏した。
「俺の勝ちだな?」
 砂ぼこりで煤けた、しかし無傷のアキレウスが、全身でエミヤを地面に縫い付けていた。
「無敵スキルとは・・ズルいぞ。」
「何言ってやがる。全力でやり合うんだ、当然だろ。」
「・・そうだな。無粋をした。今日は私の負けだ。」
「よぉし!約束通り、夕飯一品増やしてくれよ。」
 若草の髪が、シミュレーションの太陽に照らされてキラキラと輝いている。冷静になってみると、非常に顔が近い。夕飯が増えることがよほど嬉しいのか、ご機嫌でニコニコしている。
「(いや、輝いてみえるのは砂塵に光が反射しているだけの物理現象で、彼自身が発光しているわけでは・・・ええい顔が近いな!?)あ、アキレウス。重い。降りてくれないか。」
 どうにもアキレウスを直視することができず、明後日の方向に向かって声をかけた。腕の付け根を抑えられているせいで身体を起こせない。英霊の身で100㎏程度の重さはものの数ではないが、如何せん顔が近い。彼の生きた地中海の太陽を映した様な瞳が、至近距離で自分を見つめているのかと思うと息が詰まる。
「追加の一品、何作ってくれるんだ?」
「ま、まだ決めていない。冷蔵庫の中身と相談して・・ッ!」
 目を背けていた為、無防備に差し出されていた耳たぶに硬い革が触れた。甲手に包まれた指が柔らかい肉を揉みこんでいる。痛くはない。革を隔てているので熱くも、冷たくもない。ただゆっくりと肉をほぐす動きで、じわじわと熱が積もってゆく。
「お前さん、ここは柔らかいんだな。」
「あ、当たり前だ。私は、身体性能はいたって通常の人間だったのだから・・」
「錬鉄の英霊の名に恥じない身体だもんな、お前。どこも鋼みたいだと思っていたが・・。そうか、ここは柔らかいのかぁ。」
 楽しそうな吐息が降ってきて、鼓膜を微かに震わせる。永遠に終わらない戯れのようにも思えたが、最後に一度、指の腹で肉を圧し潰してアキレウスはエミヤを解放した。
「真っ直ぐ食堂行くか?」
「そうだな。夕食には早いが、お茶の一杯程度は出せるだろう。」
「そりゃあ楽しみだ!」
 遊ばれた片耳がじくじくと熱を訴えるのを振り払い、エミヤはシミュレーションルームを後にした。

Comments

  • まいてぃー
    March 9, 2021
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags