青の光
一応、以前書いた青の影(槍弓前提赤騎弓)の続きといいますか弓サイドの話なんですが、うん、その。
赤騎兵さんのヤンデレがここ数日の私のブームでしてね!
ものの見事にヤンデレ化してますよ!
なので、読む人を選ぶと思いますご注意下さい。
書いてるのは異常に楽しかったです。
※追記 兄貴との全面戦争だと…。赤枝の騎士団vs某戦争の一軍…なにそれ燃えるんですが( ゚д゚ )クワッ!!
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その男は、あまりに彼に似ていたのだった。
その聖杯戦争は、あまりにもイレギュラーであった。
14体ものサーヴァントが召喚された聖杯大戦。その召喚数もさることながら、14体ものサーヴァントの魂を使って叶えられる願望の規模は計りしれず、また、イレギュラーが発生しているともなれば、アラヤのアンテナに引っかからない筈がない。
どう転ぶかわからないその聖杯大戦に、私が様子見として派遣されたのは当然の流れであった。
趨勢が決しない以上、ただ傍観しているしかないという、守護者としては珍しい仕事ではあったが、この先の展開次第ではいつものように仕事をしなければならない。
どうか、誰も殺すことにならなければいいと願っていたのだが、それがまずかったのだろう。
赤のキャスターとそのマスターに目を付けられて、偵察状態であるが故にろくな力を発揮できない状態の私は、あっさりと彼らに捕らわれてしまった。
と言っても、アラヤの守護者の一人や二人殺したところで何の意味もないし、下手に私を害せば、本当にアラヤによるせん滅が待っている。そのことを彼らも理解したのだろう。
害することはできないが、万が一にでも黒の陣営に取り込まれては困るとして、彼らは私の記憶を封じ、私を彼らの陣地の中に囲った。そうしている間に私が少しでもほだされれば儲けものだと考えたのだろう。
私としても、状況に絡めない以上見ているしかやることがないので、何かやることが出来るのは割とありがたかった。貧乏性だと自分でも思うが、これはもうどうしようもない。
どうせ、そのときがくればアラヤにより強制的に目覚めさせられるのだからと、さしたる抵抗もなく私はアサシンの術を受け入れた。
赤の陣営での生活は、想像以上に賑やかなものだった。
セイバーこそいなかったが、ランサー、ライダー、アーチャー、キャスターと揃っていたし、バーサーカーとは意志の疎通が出来ないものの、その独自の思考はなかなかに興味深いものだった。
最初は私のことを警戒していた彼らも、時間とともにそれなりに馴染んでくれて、いつの間にか逃亡防止用の足枷は外され、時には外出に付き合わされる始末。
現代に詳しい私のガイドは彼らのお気に召したらしく、誰かが外にでるときは必ずと言っていいほどお供をさせられた。
他にも、アーチャーには弓の腕比べに何度も付き合わされ、キャスターは自書を寄越しては感想を聞いてくるし、ランサーはいつも無口だったが、私の作った食事をいつも綺麗に食べてくれるのも彼だった。
そしてライダーは、私の何をそんなに気に入ったのだろうか。
「お前が好きだ」
そう伸ばされた手を振り払うことが出来ずに、私はただ受け入れた。
彼はどこか、あの男に似ていたから。
記憶を封じられた私は、その懐かしさに勝てなかったのかも知れない。
空の青に男の影を思う。彼から感じる神性にあの赤い瞳の幻覚を見て、彼のオレンジの瞳に違うのだと我に返る。
男が誰であるのか、私にとっての何者であるのかを全く思い出せずに、ただ彼と男が重なってはズレる。
彼のたくましい身体に抱かれれば、男のやや細身ながらもしなやかな肉体が浮かんで消える。
短く切りそろえられた金髪に、背中までのばされ一つにくくられた青い髪でないことに違和感を感じる。
青い男は、決して消えてくれない、残像そのものだった。
この胸の傷のように、磨耗してもなお焼き付いている眩しい光。
いつかの私を殺し、どこかの平行世界で分霊の私に愛をささやいた、偉大な英雄のくせに愚かな男。
そんな男の影に惑う私を、ライダーはいつも何でもない顔で流していた。
一度だけ、最初の夜伽の時に胸の古傷のことを聞かれ、そうして私の反応から私が男に抱かれたことがあると感づいたその瞬間に、明らかな殺気を発した以外には、何も。
だから私も、彼には何も言わなかった。好きだという言葉には嫌いではないと答え、ただ伸ばされた手を受け入れる。
総ては私を絆そうとしての言葉と態度だと思えば総て納得がいった。
そんな無理に手を伸ばさなくても、私はもう十分に君たちに好意を持っているし、絆されているよ。
けれど、私がアラヤの守護者なのだけは、どう足掻いても変えられないのだから、もう止めておきたまえ。
そう、伝えてやれればどんなに良かっただろう。
きっと、彼にあんな顔をさせることもなかった筈だ。
運命が決したその瞬間、アラヤの守護者として目覚めた私は、その場の総てをせん滅せんと戦場に向かう。
私の姿を目にした彼は総てを悟ったのだろう、目を瞑り大きな息を一つ吐いて、私に相対した。
「お前を逃したりはしない。お前は俺のもんだ」
俺の座にお前を連れて帰るから、この戦争が終わるまで大人しくしていろと槍を向ける彼に、私は可能な限り表情を消し、無言で答える。
そういえば、あの男もそんなことを言っていたような気がする。
『絶対に、オマエを座に迎えに行くから、その時までいい子チャンで待ってろよ』
そんな戯言を未練がましく覚えている自分が滑稽で、剣戟を交わしながら僅かに唇が歪む。
「何がおかしい!?」
「すまない、君の事ではないよ赤のライダー。ただ、昔の戯言を後生大事に覚えていた自分がおかしかっただけさ」
「っ。また、あの男のことかよ!」
激高した彼の槍をかわし、双剣を彼の背後に向かって投擲する。双剣は弧を描き敵に襲いかかる。そのことを、一度この技をかわした赤のライダーも知っている。私がこの技で彼の急所を狙うことも。
だから彼は、この投擲に対して何らかのリアクションをとる。
そう予想できていれば、新たな武器を一瞬で投影することなど、たやすいことだった。
「あ……。な、ぜ」
「君の身体は、神の持つ不死身性で覆われている。神性スキルを持つサーヴァントの攻撃が通じるのは、同じ神の力を持つからだ」
神は神により傷つけられ、死をもたらさられる。
「私には神性はない。しかし、世界には数は少ないものの、人が作った神殺しの武器が存在する」
時に宝具ですらないそれは、概念武装として私の中に登録されている。
「神殺しの……概念………はっ、そんな隠し玉、持っていやがった、とはな」
短刀の切っ先を胸から生やして、赤のライダーの身体がゆっくりと倒れる。
私の胸にぶつかるように。
赤のライダーの唇から地が一筋、流れ落ちた。もう足下は光の粒に変わり始めている。
「なあ、エミヤ」
最後の力で、赤のライダーは私の頬に手を伸ばした。
自分のやったことを、これからやることを重いその手に触れることも出来ずにただ拳を握る私に、冷たい口づけが贈られる。
「ナァ、俺のこと、自分の手で、殺したかったのか?」
オレンジの瞳が焦点を結ばずに、しかしまっすぐに私を貫いている。
「オレを、コロセて、うれしいか?」
「馬鹿なことを!」
「コロシたいほど、オレのこと、アイしてた?」
「何を。言っているんだ、ライダー………?」
「あのオトコより、オレのこと、アイしてるから、コロシたんだよナ?」
ウレシイと幸せそうに、彼は笑う。
狂気に満ちた目で、私を見つめる。
もう、胸から下は形を保っていない。
そうして、彼は私に呪いをかけた。
「俺は、お前のこと、愛してる」
すべてが終わったあとでも、その言葉は残響のように、私の耳に残っていつまでも鳴り響いていた。
分霊の全ては記憶ではなく記録になる。
座に戻ったところで全てはリセットされる。
だから何も問題ないと何度も自分に言い聞かせ、生あるものは誰もいなくなったその場を後にした。
やっぱり、槍弓前提の赤騎弓めっちゃ萌えます。何度も読み返してます。大好きです。