がんを患った従業員に“休職”命令、1年後に「自動退職」…会社の“非情な対応”は許される? 裁判所の判断は
裁判所の判断
2年以上にわたる裁判の結果、Aさんが勝訴。裁判所は「復職できる程度に治癒していた」と認定した。 「治癒」とは、原則としてこれまでの仕事を通常の程度に行える健康状態に回復したことを指す。 ■ 会社の反論 会社は「診断書はAさんの強い希望に従って作成されたもので、主治医の本心ではない」と反論した。 ■ 裁判所の判断根拠 しかし、裁判所は以下の点から「治癒」を認めた。 ・主治医の診断書に「9月以降は仕事に復帰できる」と書かれており、有力な資料である ・入院中の記録を見ても回復傾向にあり、遅くとも9月末には日常生活に支障がない健康状態だった ・8時間以内の勤務であれば、ドライバー業務も過重な負担ではない ・産業医も「一般的には胃がんの全摘出であっても、術後1年も経過すれば症状は安定し、就労できると思う」と述べていた その結果、裁判所は「復職できる程度に治癒しており、休職事由は消滅していたので、Aさんは社員としての地位を有する」と結論付けた。 ■「軽い仕事ならできる」場合は、どうなる? 仮に元の仕事が完全にできないとしても、「軽作業なら可能です」などと申し出をしておくことを推奨する(例:肉体労働は無理だがデスクワークなら可能、など)。 その申し出を会社が合理的理由なく断って自動退職させた場合、Aさんのように勝訴できる可能性がある。詳細は「片山組事件」で検索してみてほしい。
最後に
前述のように、復職については「治癒したのか?」が大きな争点となる。治癒を立証する責任は労働者側にあるので、こまめに通院し、体調の回復を主治医に伝えることが大切だ。そして「なぜ復職が可能なのか」を診断書に具体的に記載してもらおう。 ■ 林 孝匡(はやし たかまさ) 情報発信が専門の弁護士です。専門分野は労働関係。
林 孝匡