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起点は「刀剣乱舞ONLINE 」。10万人の「推し活」が日本のミュージアムを救うインフラになる?

オンラインゲーム『刀剣乱舞ONLINE』を起点とした「一般社団法人 刀剣文化研究保全機構」への寄付つき有料会員数が、活動開始から1年足らずで10万人を突破し、さらに日々増え続けている。その背景にあるものと、美術館業界に与えるインパクトを、刀研機構関係者たちへの取材をもとに探る。(本記事は3月4日7時まで全編公開となります。プレミアム会員の方は期間終了後も全編をご覧いただけます)

文=橋爪勇介(編集部)

2025年に開催された「刀剣乱舞 大本丸博 2025(富士ステージ)」の様子 写真提供=ニトロプラス

 大人気オンラインゲーム『刀剣乱舞ONLINE』を起点とした「一般社団法人 刀剣文化研究保全機構(以下、刀剣機構)」への寄付付き有料会員数が、活動開始から1年足らずで10万人を突破した。この制度は、ユーザーが定額サービス「本丸刀剣保存会」(*1)に加入すると、月額880円/年額8800円のうち、10パーセントが刀研機構に自動的に寄付される仕組みだ。これを原資として、同機構は昨年から刀剣の調査研究のための助成事業をスタートさせた。

  当初の想定を大きく上回る加入者を達成したこの巨大なコミュニティがもたらす熱量と寄付金は、疲弊する日本のミュージアムの現場をどう変えようとしているのか。株式会社ニトロプラス代表で同機構理事長の小坂崇氣、同機構業務執行理事の橋本麻里、そして日本博物館協会専務理事で同機構理事の半田昌之の三者の言葉から、文化財保護の新しい可能性と、ミュージアムが抱える構造的な課題が浮き彫りとなった。

©️2015 EXNOA LCC/NITRO PLUS

10万人が動いた理由

「想定以上のスピードでした」。小坂は驚きの表情でそう切り出した。「ユーザーの皆さんがゲームを楽しみながら課金してくださる動機は、便利な機能を使いたいという気持ちだけではないと思っています。自分が楽しむことが、めぐりめぐって刀剣の調査研究や保護に役立つ──そうした社会的意義への共感が、この10万人という数字に表れているのではないでしょうか」。

 この「意義への共感」は、既存の寄付文化とは一線を画す。橋本はこれを「楽しみの対価」が自然に社会貢献へとスライドする仕組みの結果だと分析する。「これまでミュージアムへの寄付は『お願い』ベースでした。しかし、本丸刀研保存会の10万人は、自分たちの楽しみを追求することがそのまま文化財の未来に直結することを理解している。2025年1月に行われた、刀剣乱舞サービス開始10周年記念行事『大本丸博』では、会場と配信の双方で、非常に多くの視聴者が、博物館館長や学芸員の言葉に真剣に耳を傾け、深い共感を示しました」。

「刀剣乱舞 大本丸博 2025(桜ステージエンディング)」の様子 写真提供=ニトロプラス
「刀剣乱舞 大本丸博 2025」での刀剣展示 写真提供=ニトロプラス

 有料会員数に強い衝撃を受けたのが日本博物館協会の半田だ。 「10万人という数字には、本当にびっくりします。正直に言って、非常に羨ましい。日本博物館協会の会員(施設・団体)は約1200で、会費収入は年間4000万円あるかないかというレベルで、ほぼ人件費に当てられています。それに比べて、刀研機構が短期間で築き上げた財政基盤とサポーターの規模は、既存の組織からすれば驚異的と言わざるを得ない」。

 半田によれば、現在の日本のミュージアム、とくに地方の公立館の財政状況はすでに限界に達しているという。「地方自治体が設置する施設では予算のシーリング(上限設定)が続いています。管理部門を削り尽くし、ついには企画・事業部門まで削らざるを得ない状況です。『予算はどうですか』と聞いても『横ばい』と答える館が増えていますが、それはもう切るところがないからに過ぎません。これ以上切ったら機能が成り立たないという崖っぷちの現場において、10万人の支援者という存在は、文字通り『新しい血流』になりうるポテンシャルを持っています」。

*1──ユーザーはプレイに役立つ機能や特典を利用できるほか、加入経過特典として便利道具や資源が贈られる。

編集部

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