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生徒が時間をデザインする学校へ―単位認定×学期制×選択群の実践ガイド【後編】―

こんにちは。
横浜創英中学・高等学校 教務部長の横山卓哉です。

【前編】では、時間割作成の土台となる「単位認定の考え方」「ターム制の設計」「選択群の組み方」について解説いたしました。多くの方から反響をいただき、時間割作成に対する関心の高さを改めて実感しております。

今回の【後編】では、より実践的な内容として「時間割作成の具体的な流れ」「予想時間数と配当表の作成」「学校設定科目の設計思想」について、横浜創英の実践を通じてお伝えいたします。

本記事が教育現場の皆様の実践に少しでもお役に立てましたら、ぜひ「いいね」・シェア・フォローをお願いいたします。また、時間割作成の実践モデルの詳細解説など、お気軽にお問い合わせください。


1.選択群がもたらす「クラスの壁」を超えた学び

従来の時間割の限界

今までの時間割はクラスで固定化されており、その中で選択科目が同じならば「教室」も「教科担当者」も同じという状況でした。これは管理上は効率的ですが、生徒の学びの多様性という観点では大きな制約となっていました。

24通りの選択がもたらす変化

【前編】で示した選択群Ⅰ~Ⅲにおいて4×2×3=全24通りを細分化することで、クラスメイトであっても「教室」「教科担当者」が異なっていく仕組みを構築しました。

この仕組みの最大のメリットは、他クラスで同系統を志望している生徒の集合体を作り上げることができる点です。進路志望が近い生徒を集めることで、授業の難易度や進度を適切に設定しやすくなります。

クラスという枠組みを超えた学びの集団が形成されることで、生徒は自分の進路に最適化された授業を受けることができ、教員も指導しやすい環境が整うのです。


2.時間割作成の年間スケジュール―組織全体で取り組む

管理職・教科主任・全教員との綿密な連携

時間割作成をするときに、管理職をはじめ、教科主任や教員全体と密に情報を共有しなければいけません。横浜創英における大まかな流れは以下の通りです。

【教務部の動き】

(前年度12月まで)

  • 予想時間数の作成

  • 配当表(次年度の教科担当者を決めるときに使用する用紙)の作成

(2月)

  • 教科主任会議で配当表の説明

  • 時間割作成ソフトへ基本情報の入力

(3月)

  • シフト希望及び諸条件をExcelで整理

  • 時間割作成の実施

【全体の動き】

(2月)

  • 教科会議で配当表を基に教科担当者の仮決定
    (※新入生が未確定なので、新入生は予想時間数を参照)

  • シフト制の希望調査

(3月)

  • 教科会議で教科担当者の本決定
    (※新入生は実数で算出)

この一連の流れを見ると、時間割作成は教務部だけでなく、学校全体を巻き込んだプロジェクトであることがわかります。特に教科主任との連携は不可欠で、各教科の実情を踏まえた調整が求められます。


3.「予想時間数」と「配当表」―時間割作成の基盤

予想時間数が教員採用の指針にもなる

時間割作成の一番の基盤となるのは、【予想時間数の作成】です。

予想時間数には、以下の情報を詳細に記載しています。

  • 「どの科目」が

  • 「どのターム」に

  • 「何展開」あるか

さらに、各教科における前年度と次年度の総時間数も算出しているため、その増減から教員採用の一助となります。例えば、数学科の総時間数が大幅に増加する場合は、数学科教員の増員を検討する材料となるのです。

この予想時間数の精度が高ければ高いほど、その後の時間割作成がスムーズに進みます。

配当表に「柔軟性」を持たせる重要性

配当表には、教務部が想定する諸条件を落とし込みますが、ここで重要なのは条件を固め過ぎないことです。

条件を固め過ぎると、時間割作成時に行き詰まったときの選択肢が狭まってしまいます。むしろ、猶予を持たせることで時間割作成時に多数の筋道を考えることができ、より最適な時間割に近づけることができます。

この「余白」の設計は、時間割だけでなく、教務部の仕事全般に通じる考え方です。


4.学校設定科目に「教員の強み」を活かす

学校設定科目が持つ可能性

各教科・科目の目標をきちんと達成したうえで、学校設定科目には特色を持たせることが必要です。

本校では、一番早い教科で「3ターム目(高2前期)」から、遅くても「5ターム目(高3前期)」から学校設定科目を設置しています。そして、その特色として最も重視しているのが【教員の強み】を出すことです。

具体的な実践例

(数学)
数学Ⅰ、A、Ⅱ、B、C、Ⅲの6科目の中でも、得意とする単元がある場合、学校設定科目では、その単元について深める授業を展開します。例えば、微分積分が得意な教員は「微積分探究」、確率統計が得意な教員は「データサイエンス入門」といった科目を担当することが可能です。

(地理歴史)
時代を大きく4つ(古代史、中世史、近世史、近現代史)に分けて、得意とする時代がある場合、学校設定科目ではその時代に特化させた授業を展開します。例えば、「戦国史研究」「明治維新と近代化」といった具合です。

教員の強みが生徒に伝播する

持ちコマの一部が【教員の強み】で構成されれば、その強みは生徒にも伝播しやすくなります。教員自身が情熱を持って教えられる内容だからこそ、生徒の学びも深まるのです。

さらに、教材研究という視点では、働き方改革の一部に繋がっていきます。得意分野であれば教材研究の時間を効率化でき、より質の高い授業準備が可能になるからです。

【教員の強み】についても、実現可否をきちんと見定めて、予想時間数の作成段階から落とし込むことが必要です。


5.次期学習指導要領に向けて―さらなる柔軟化への準備

現行学習指導要領での試み

ここまで述べてきた内容は、現行学習指導要領を読み解いたときの試みです。現行制度の枠組みの中でも、解釈を柔軟にすることで、生徒の学びの選択肢を大幅に広げることができます。

論点整理が示す新たな方向性

次期学習指導要領に向けて、中央教育審議会教育課程企画特別部会が論点整理をまとめています。そこで示されている方向性は、今の試み以上にもっと柔軟な教育課程を考えることが、すべての学校に求められるというものです。

これは、単に制度が変わるということではなく、学校現場に真の裁量権が与えられるということを意味しています。

次のステージへ―情報交換の重要性

ここから次のステージを検討するために、文部科学省の動きをしっかりとキャッチし、多くの学校と情報交換をさせてもらいたいと考えています。

時間割作成は、各学校が独自に取り組む業務ですが、その知見やノウハウを共有し合うことで、教育現場全体の質が向上します。ぜひ、本記事をきっかけに、皆様の学校での実践もお聞かせいただければ幸いです。


おわりに

【前編】【後編】の2回にわたり、横浜創英の時間割作成の実践についてお伝えしてまいりました。

時間割作成は、教務部門の中でも最も時間と労力を要する業務の一つですが、同時に生徒の学びの質を左右する極めて重要な業務でもあります。

「生徒にとって最適な学びとは何か」
「教員が力を発揮できる環境とは何か」
「持続可能な教育課程とは何か」

これらの問いに向き合いながら、これからも実践を重ねてまいります。

教育について一緒に考えていけたら嬉しいです。

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フォローさせて頂きました。よろしくお願いします。 私も教務として、今後進学型単位制の時間割作成に携わります。そこでお聞きしたいことが2つあります。 ・選択科目が増えると時間割作成も煩雑になると思いますが、作成に際し、どのようなツールを使っていますか? ・平常時の時間割変更は行わ…

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横山卓哉

@そうちゃん先生 コメントいただきありがとうございます。 さていただいた質問ですが、 1点目「どのようなツールを使っていますか?」については、【時間割作成ソフト】と【Excel】を使用しています。 2点目「平常時の時間割変更は行われていますか?」については、次年度の年間行事予定表を…

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