生徒が時間をデザインする学校へ―単位認定×学期制×選択群の実践ガイド【前編】―
こんにちは。
横浜創英中学・高等学校 教務部長の横山卓哉です。
教育現場に携わる皆様、来年度のカリキュラム編成作業が本格化する時期になりましたね。特に高校では、必履修科目の配置、選択科目の設定、そして何より時間割作成の煩雑さに頭を悩ませている先生方も多いことと思います。
「生徒にもっと自由に学ぶ時間を与えたい」
「でも必履修科目で時間割が埋まってしまう…」
「選択科目を増やしたいけど、時間割が組めない…」
こうした悩みは、全国の高校教務担当者が共通して抱えている課題です。
今回は、横浜創英で実践している「時間割作成の仕組み」について、前編・後編の2回に分けてお届けします。前編となる本記事では、時間割作成の土台となる「単位認定の考え方」「ターム制の設計」「選択群の組み方」について解説いたします。
本記事が教育現場の皆様の実践に少しでもお役に立てましたら、ぜひ「いいね」・シェア・フォローをお願いいたします。また、時間割作成の実践モデルの詳細解説など、お気軽にお問い合わせください。
1.単位認定の柔軟化―通年から半期へのシフト
学習指導要領の解釈を柔軟に
学習指導要領では、単位について【1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として計算することを標準とする】と記載されています。これは通年で1単位認定をするとき、週当たり1コマ35週を実施することを意味します。
したがって半期で1単位認定をする場合は、週当たり2コマ17.5週で実施すればよいことになります。
横浜創英では、この解釈を積極的に活用し、半期での単位認定を導入しました。具体的には以下のような運用としています。
1単位認定:週当たり2コマ × 半期
2単位認定:週当たり4コマ × 半期
3単位以上:半期で分割せず通年or半期×2タームで実施
この仕組みにより、一部の必履修科目を高1前期(1ターム目)の半期認定とすることで、高1後期(2ターム目)から自由選択科目の【超】拡大を始めることができるようになりました。
生徒自身が「余白」を創出できる仕組み
自由選択科目の【超】拡大は、単に選択肢が増えることだけを意味するのではありません。生徒が科目を「選択する」「選択しない」を判断することで、自身で余白を創出することが可能となる点が最も重要です。
これまで多くの高校では、時間割は学校側が一方的に決定し、生徒はそれに従うという構造でした。しかし本校では、生徒が主体的に学びを選択することで、自分の時間の使い方をデザインできる環境を整えています。
2.6ターム制の設計―異学年協働を生む仕組み
1ターム目と6ターム目を独立させる意味
高1前期から高3後期までの6タームの中で、1ターム目(高1前期)は必履修科目のみで構成しており、6ターム目(高3後期)は生徒一人ひとりの進路実現のために独立させています。
この設計により、「2ターム目(高1後期)+4ターム目(高2後期)」と「3ターム目(高2前期)+5ターム目(高3前期)」では、異学年での授業を実施することが可能となります。
異学年協働は社会との同質化を目指す
異学年での授業を実施することは、社会との同質化を目的としています。
学校では同学年と協働するタイミングは多くありますが、学年を超えた協働は部活動や委員会を除けばほとんどありません。しかし授業は、学校生活の大半を占めているため、同学年に固執せず、異学年がいる環境を作り出すことが重要だと考えています。
社会に出れば、年齢も経験も異なる人々と協働するのが当たり前です。学校≒社会を実現していくことが、これからの学校に求められている役割の一つではないでしょうか。
3.選択群の設計―「多角的なキャリア形成」を軸に
文系・理系の二元論を超える
選択群を考えるときの軸は、「多角的なキャリア形成の視点」です。
大学受験だけを意識した文系or理系の選択群ではなく、生徒が第3、第4の選択肢を考えられるように組むことが必要です。そして生徒は「自分のキャリアを自身で決める」という意識(=当事者意識)を培い、教員はその生徒の考えをサポートすることが求められます。
そのため教員は、現在のタームで "できること" と "できないこと" をしっかり把握する必要があります。
選択群の具体例
本校の選択群は以下のような構成となっています。
選択群Ⅰ:社会・数学系(3通り)+選択しない=4通り
選択群Ⅱ:数学系(1通り)+選択しない=2通り
選択群Ⅲ:理科・英語系(3通り)※選択必修を入れているため「選択しない」を設置しない
このように、科目の組み合わせによって生徒が自分の進路や興味に応じた学びを構築できるようにしています。
時間割作成担当が最も頭を抱える問題
時間割作成担当が一番頭を抱えるのが、条件の間口が広がることです。
1200名の生徒がいたら1200通りの時間割を実現することは、決して「自由選択科目を選びたい放題」という考え方ではありません。むしろ、限られた教員数・教室数・時間の中で、いかに多様な選択肢を提供しつつ、実行可能な時間割を組むかという、極めて高度なパズルのような作業になります。
そのためには、選択群の設計段階から「この組み合わせは物理的に可能か」「教員の配置は適切か」「生徒の希望をどこまで叶えられるか」を慎重に検討する必要があります。
次回予告―時間割作成の実務とツール活用【後編】
今回は、時間割作成の土台となる単位認定の考え方、ターム制の設計、選択群の組み方について解説いたしました。
次回の後編では、より実践的な内容をお届けする予定です。
時間割作成は、教務部の中でも最も時間と労力を要する業務の一つです。しかし同時に、生徒の学びの質を左右する極めて重要な業務でもあります。
次回も、横浜創英の実践を通じて、全国の教務担当者の皆様にとって少しでも参考になる情報をお届けできればと思います。
教育について一緒に考えていけたら嬉しいです。



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