【赤ペン!】先月25日夜、長嶋茂雄さんの長男でタレントの一茂が日本テレビ「しゃべくり007」に出演。巨人に在籍していた1996年、自分が起こした舌禍事件を振り返った。

暴言を謝罪した翌日に江本孟紀氏(左)と談笑する一茂(中)と土井さん(96年)
暴言を謝罪した翌日に江本孟紀氏(左)と談笑する一茂(中)と土井さん(96年)

 土井正三守備コーチに延々とバント練習をやらされてプッツン。練習後、選手や記者の前で「何様のつもりだ! いらねえよ、あんなやつ!」と土井コーチについて暴言を並べ立てたのである。

 この一件はスポーツ紙の1面で報じられ、球団は一茂に罰金50万円と厳重注意処分を科した。これを広報部長から伝えられた長嶋監督は、顔をしかめて「しかし土井もねえ」と土井さんにも非があるとこぼしている。

 だが、最後は「球団のよろしいようになさってください。息子には私もよく言って聞かせましたので」と広報部長に一任。長嶋さんもやはり人の親だった。

 一方の土井コーチは「何様と言われても殿様じゃないしな」と困惑の体。このコメントも新聞に載り、球場でファンに「殿様コーチ」とヤジられて渋い表情だった。

 土井さんは長嶋さんとともにV9時代(65~73年まで9年連続リーグ優勝と日本一)を達成した名二塁手で、ミスターの熱烈な信奉者だった。遠征先の旅館では長嶋さんと相部屋で、よくショートの黒江透修氏と一緒に夜の素振りを手伝っている。

「土井、ふすまを外せ! 黒ちゃん、バットを持ってそこに立ってくれ!」

 長嶋さんがそう言ってバットを構えると、土井さんはふすまを長嶋さんの腰の位置で水平に、大きな盆を支えるように持つ。そして黒江さんがバットのヘッドを球の代わりにして「アウトコースです」「インコースです」と長嶋さんに突き出すのだ。

 長嶋さんが渾身の力でバットを振って、ダウンスイングやアッパースイングになると、土井さんが水平に持つふすまにバットがぶつかる。「ミスターはそうやってレベルスイングに軌道を修正して、しっかり振り抜く練習をしてたんだよ」と土井さんは解説してくれた。

 そんな土井さんは川上哲治監督に最も反抗的な選手でもあった。「クソ親父め!」と叫んで後楽園球場の医務室のドアを蹴り、勤務医の柴孝也氏にしょっちゅう川上監督への文句を言っていた。

 そうした言動を柴医師が川上監督に明かすと、V9の名将は「土井ならそれでいいんですよ。彼は私に怒っている時ほどいい仕事をするから」とうなずいていたという。

 一茂の舌禍事件には、そうした“歴史的背景”もあったのだ、と言ってはちょっと大げさか。