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The Works "good day" is tagged "ハリポタ" and "チャビル".
good day/Novel by こはる みやこ

good day

4,488 character(s)8 mins

ハリポタ、チャビル、チャーリー生誕文。SS。
『Portkey』の一年後ぐらい。そちらから読んでもらった方が分かりやすいと思います。
相変わらず、ドラゴンキーパーの仕事は120%捏造です٩( 'ω' )و

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 十二月。これから寒さに拍車が掛かる頃。
 日中でも既に気温はマイナス二十度を下回る。夜となれば尚更だ。長袖の肌着にタートルネックを重ねて、更にその上に厚手のセーター、ダウンジャケット、手には作業用の革の手袋と、マフラー、更にイヤーマフラーと寒さ対策を万全にして、チャーリーは雪が舞う中を箒で進んだ。箒の先にはバケツとカンテラが引っ掛けられている。二つが落ちないように巧みに操りながら、雪が積もる地面が切れた谷底、そこへ箒を飛ばす。暗闇の中でカンテラの灯りだけを頼りに細心の注意を払いながら下へ下へ高度を下げて、深く積もった雪の上に降り立った。

 暗い夜の中でも分かるほどに美しい深緑の鱗に覆われたドラゴンが、踞って座っている。大きな瞳が動いて、チャーリーを捉えた。これが一般人ならば、ドラゴンと目が合ったという事実だけですぐに腰を抜かすだろう。そしてそのまま、恐れ戦いて逃げ出すに違いない。だが、チャーリーはにっこりと微笑みを浮かべて、ドラゴンとの距離を縮めるべく歩き出した。

「やぁ、元気か?」

 声を掛けながら、チャーリーはそっと、ざらりとした鱗の体を撫でる。

「昨日は会いに来られなくて悪かったな」

 撫でながら言う。ロングホーンはじっとチャーリーを見つめて、応えるようにゆっくりと瞬きをした。触れられても嫌がる素振りは見せない。
 ルーマニアに来てから一年と半年。初日からずっと、このロングホーンの世話を続けてきた。他の仕事や、プライベートもよっぽどのことがない限り毎日様子を見に来ていたし、日々の変化等は逐一メモにとって、コミュニケーションを重ねてきた。
 当初は見知らぬチャーリーのことを警戒していたロングホーンだったが、今では体に触れさせてくれるほどに気を許してくれている。

「今日も元気そうだ」

 大きな瞳を見つめる。鱗と同じ深い緑色をした瞳に、チャーリーの笑顔が映っていた。

「食事の時間だな」

 そっと離れ際にもう一度鱗を撫でて、チャーリーは傍に置いていた箒を手にする。引っ掛けていたカンテラは地面に置き、バケツを今度は手に持って、箒に股がる。雪の地面を足で蹴って前傾姿勢を取り、空高く舞い上がった。その姿に煽られるように、ロングホーンも踞っていた体を起こす。
 起き上がったロングホーンの体より高く空へ昇り、チャーリーは両足を箒の柄の下で絡めて固定する。これで両手が使えるようになった。左手でバケツを持ち、右手で中に入っていた肉の塊を引き摺り出す。拡大呪文が掛けられているバケツから出された塊は、かなり大きい。

「行くぞ!そーら!」

 腕と上半身の筋肉を使ってその塊をロングホーンの頭上に放り上げれば、軽やかに上半身を上げて、長く伸びた金に輝く角で肉を串刺しにした。
 角から熱が伝わり、香ばしい香りと共に肉の塊はみるみるうちに丸焼きになる。ロングホーンは頭を振って器用に肉を角から外し、焼けた塊を雪の上に落として食べ始めた。
 チャーリーは再び地面に降り立ち、その様子を眺める。

「食欲もあるな。いい子だ」

 雪の上に座り込み、チャーリーは持っていた手帳に今日の日付と、ロングホーンの体調等を書き入れた。鱗の光り具合は良好で、瞳も濁らず澄んでいる。食欲は旺盛。気性も穏やかで反抗的ではない。
 書き留めて、チャーリーは微笑む。ドラゴンも健康そのもの。今日は良い日だ。


「なぁ、聞いてくれるか?」

 肉を突きながら食べるロングホーンに、チャーリーは話し掛ける。

「俺さ、今日誕生日なんだよなぁ」

 ぼんやりと、星が瞬く空を見上げて。
 考えることは、ただ一つ。

「俺がお前の傍にいるみたいに、あいつも仕事なんだろうな」

 今朝、起きた時に少しだけ期待した。フクロウ便が届いていないか、と。しかし、起きるなり部屋を見回したが、それらしきものは何もなく。 昼過ぎに家を出るまでそわそわしながら待っていたが、何も起こらなかった。分かってはいたが、落胆した。そもそも、来るならきっと連絡を寄越すだろう。ないということは、今日は会えない、それだけのことだ。
 何も悲しむ必要はない。互いに大人になったから、自由な時間が少し減っただけ。呪い破りの仕事は大変に違いない。きっと彼も忙しくしているのだろう。遠い、エジプトの地で。
 溜息を吐く。ロングホーンの長い尾が、そっとチャーリーの背中に触れた。大きな瞳はいつの間にか、チャーリーを見つめている。

「ごめんごめん。お前の傍が嫌なわけじゃないよ」

 尾を撫でる。
 そう、彼も自分も、自ら望んで選んだ仕事をしているのだから、文句は言えない。

「まだ暫く、此処にいるから」

 呟く。今日の勤務時間は遅番だから、朝まで此処でロングホーンの様子を見ていなくてはいけない。特別な日を、終わりまでドラゴンと共に過ごせるなんてドラゴンキーパーの極みだな、とチャーリーは一人ごちる。

 しかしその時、不意に背後に気配を感じて、チャーリーは顔色を変えた。ドラゴンの見張りの交代時間にしては早すぎるし、何より同じドラゴンキーパーならばこそこそと隠れてやって来たりはしない。ルーマニア・ロングホーン種のドラゴンは、金の角が魔法薬の材料になるため、裏で乱獲と角の取引が密に行われている。そのためにドラゴンキーパー達の手によって保護しているのだが、まさかこのロングホーンを狙っている者だろうか。
 そろそろと手を動かし、ベルトに挟んでいた杖を握る。守らなければ。何に変えても。
 相手が動く前に、と、チャーリーは勢い良く振り返って杖を突き付けた。鋭く睨んだはずの瞳が、しかし段々と見開かれていく。

「ビ、ル・・・」

 突き付けられた杖の先で微笑っていたのは、チャーリーが恋して止まない人。

「なんで・・・」

 おずおずと杖を下ろす。
 驚くチャーリーの姿を見ながら、ビルは言った。

「仕事が終わって、すぐに姿現ししたんだ。チャーリーの家で待ってたのに全然帰って来ないから」

 だから、痺れを切らして事務所へ行った。帰るところだったアンドレイに偶然会って尋ねたら、チャーリーは今日はもう帰って来ないはずだと言う。危ないからと言われたが、どうしてもとお願いして場所を教えてもらい、此処までやって来た。

 そう言って、ビルは気持ちを落ち着かせるように白い息をふーっと吐いた。

「伝えたかったんだ」

 言葉を区切り、頬を染めて。

「誕生日、おめでとう」

 チャーリーが聞きたかった言葉を、紡ぐのだから。

「明日の朝には帰って来るって言われたけど、今日じゃなきゃ、意味ないだろ?」

 照れながら頬を染める人が、愛しくて愛しくて。

「わっ!」

 駆け寄って思い切り抱き締めた。

「チャーリー、痛いって」

 苦笑しているビルの声ですら、チャーリーの心を震わせる。
 嗚呼、愛しい。

「ありがとう、ビル」

 抱き締めながら、溢れそうな涙を堪えながら、言った。

「あ、あれがロングホーンか」

 気付いたように呟かれたビルの言葉を聞いて、チャーリーは体を離して振り返る。

「ああ、見るのは初めてだっけ」

 会話の中にはよく登場していたのだが、見せたことはなかった。チャーリーが世話をしている、大切なドラゴンだ。
 ビルはチャーリーから離れ、ロングホーンの元へ近付いて行く。

「あ、おい!」

 チャーリーが引き止めようと手を伸ばすが、ビルが歩く速度の方が速くて空を切る。
 ドラゴンは警戒心が強い。基本的には獰猛だし、人を襲うことなど日常茶飯事だ。ドラゴンのことを熟知したドラゴンキーパーでさえ怪我をすることがあるぐらいなのだから、何の訓練も受けていない人間が近付けば、どうなるか分からない。
 ビルが怪我をするかもしれない。最悪の場合、死ぬことだって。
 そう思った瞬間、ゾクリと寒気がした。怖くなって、声を荒げる。

「ビル!よせ!今すぐ離れろ!」

 走り出す。ロングホーンの瞳が、ビルを捉えた。引き剥がそうとするが、ビルの手はそれより早くロングホーンの体に伸ばされて。

「あ・・・」

 そっと、ビルの指先が触れた。

「思ったより、ざらざらしてる」

 ロングホーンは大人しいままだった。
 ビルは笑って、ロングホーンの鱗に触れている。

「ビル!」
「あ」

 チャーリーが、ロングホーンに伸ばされたビルの腕を掴んで引き離す。ビルの口から不満そうな声が漏れた。

「何してるんだよ、前にも言っただろ?ドラゴンは危ないんだって・・・!」

 不安になった。愛しい人がいなくなるかもしれない、と。
 知らず口調も荒くなる。

「不用意に触って、攻撃されたらどうするんだよ!箒にも乗ってないのに!もし、ビルに何かあったら・・・」

 怖かった。
 自分がドラゴンを相手に仕事をしていたことを初めて後悔するほどに。

「何かあったら?どうするのさ?」

 腕を捕まれたままのビルは、尋ねる。
 チャーリーは腕を離した。やるせない思いを言葉に出来ず、唇を噛む。

「何もないよ。大丈夫」
「何もなかったからそんなことが言えーーー」

「守ってくれるんだろ?お前が」

 美しい、美しい微笑みを浮かべて。

 息を呑む。
 ビルは微笑っていた。 綺麗に。とても綺麗に。

 どこから来るのか、その自信は。けれど、確かに絶対に守るとチャーリーも思っていたから。
 怒りも焦りも、何処かへ吹き飛んでしまった。

「あの子も気付いたのかもしれないな」

 苦笑しているチャーリーに、ビルは言う。

「俺が、チャーリーの恋人だって」

 ニッと笑って。
 降参だ。チャーリーは両手を上げて笑った。

「敵わないな、ビルにはさ」
「そりゃあ、伊達に年上やってるわけじゃないから」

 言い合って、笑う。

 一人だと思っていた誕生日は、愛しい人と大好きなドラゴンと共に祝う日になった。
 寒空の下、けれど心はあたたかい。

 本当に、本当に、今日はなんて良い日だろう。

Happy Birthday Charlie!!!

finished 20161212

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