「ロミオ」と名付けられたオスのカエルは、かつてセイウェンカズミズガエル(Telmatobius yuracare)の最後の1匹と考えられていた。その後、2019年に同種のカエルが新たに複数見つかり、研究者たちは「ジュリエット」と名付けたメスとの繁殖に期待を寄せた。しかし、残念ながらロミオは2025年、子孫を残すことなく死に、2匹のラブストーリーは終わりを迎えた。
ところが、この薄幸の種に朗報が舞い込んだ。ボリビアの国立公園で生物学者が新たな集団を発見し、セイウェンカズミズガエルの新たな21世紀の物語が幕を開けた。自然下でセイウェンカズミズガエルの集団が確認されたのは、2009年以来2例目となる。
「ひとつの章が終わりを迎えましたが、私たちにとっては新たな保全の物語の始まりです」と、エクアドル教皇庁立カトリック大学動物学博物館の爬虫両生類学者、テレサ・カマーチョ・バダニ氏は語る。
実を結ばなかったカエルのロミオとジュリエット
研究者がロミオを見つけたのは、2009年、ボリビアのカラスコ国立公園だった。この地域では当時、世界各地で両生類を大量死させていた致死性の真菌、カエルツボカビが広がっていた。研究者チームは予防措置として、ロミオをボリビア中部のアルシド・ドルビニ自然史博物館へ移した。(参考記事:「501種の両生類が減少、90種が絶滅、ツボカビ症で」)
「その後の9年間で、ロミオがこの種の最後の1匹になるだろうとは誰も思っていませんでした」とカマーチョ・バダニ氏は話す。(参考記事:「最後の生き残り「エンドリング」の物語が私たちにもたらすもの」)
2018年、セイウェンカズミズガエルを探す取り組みが勢いづく。当時、最後の1匹とされていたロミオの窮状に注目を集めようと、NPO「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(GWC)」(現「Re:wild」)がマッチングサイト「Match.com」と手を組んだのだ。ウェブサイトにはロミオの恋人募集用プロフィールまで作られた。
彼女がマッチングアプリをダウンロードしたわけではないだろうが、するとロミオが発見された地域から「キャピュレット家の娘」が登場した。当時アルシド・ドルビニ自然史博物館で働いていたカマーチョ・バダニ氏らが、カラスコ国立公園内の別の小川で、さらに5匹のセイウェンカズミズガエルを発見したのだ。(参考記事:「「世界一孤独なカエル」ロミオ、お相手見つかる」)
セイウェンカズミズガエルの「キャピュレット家の娘」、すなわち「ジュリエット」。
その頃のロミオは、すっかり希望を失っていたのか、求愛の鳴き声を上げることもなくなっていた。ところが、新たに捕獲したメスの1匹と対面させると、突如やる気を取り戻し、「ジュリエット」に向けて求愛の声を奏でるようになった。
最初のデートでは、ジュリエットはロミオにあまり興味を示さなかった。「ロミオは少し押しが強くて、ジュリエットをいらだたせていました」とカマーチョ・バダニ氏は振り返る。
ジュリエットは食べなくなり、隠れるようになったため、2匹は離された。
2回目のデートは1回目よりうまくいき、その後は仲良く暮らしていた。ナショナル ジオグラフィックの「PHOTO ARK」プロジェクトを立ち上げた写真家ジョエル・サートレイ氏は、この将来の恋人同士の姿を写真に収めている。
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