「世界一孤独なカエル」ロミオ死す、だが悲劇では終わらない

ジュリエットとの恋では実を結ばず、しかし希望をもたらす新章が始まっている

2026.03.02
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 しかし、ロミオとジュリエットの繁殖は実現しなかった。ロミオは、最初に捕獲されてから16年後の2025年1月、年老いて自然死を迎えたとアルシド・ドルビニ自然史博物館の館長リカルド・セスペデス氏は話す。

 幸い、ジュリエットはロミオの死を知っても、シェイクスピア劇のヒロインと同じ道を選ぶことはなく、今も博物館で生きている。

ボリビアのカラスコ国立公園を流れる小川のほとりで撮影されたセイウェンカズミズガエルのオス。最近見つかった集団の1匹だ。(RENE CARPIO)
ボリビアのカラスコ国立公園を流れる小川のほとりで撮影されたセイウェンカズミズガエルのオス。最近見つかった集団の1匹だ。(RENE CARPIO)
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カエルたちの物語は新章に突入

 カマーチョ・バダニ氏は、「ハッピーエンドを決して諦めない」ロミオに励まされたという。ロミオが死んだ2025年1月ごろ、氏のチームは、2019年にジュリエットが見つかった小川から100kmほど離れた地域で活動する生物学者サウル・アルタミラーノ氏の助言に従った。その結果、小規模ながら安定した集団をその地域で発見できた。

 現在チームは水中録音装置を使い、新たな集団を観察している。邪魔な騒音もなく、カエルたちに過度なストレスを与えずに野生で初めてその鳴き声を録音したという。

 ロミオ亡き後、この発見は、セイウェンカズミズガエルに新たな希望をもたらした。だが、依然として大きな課題が残っている。同種はツボカビの脅威や生息地の喪失により、世界自然保護機構(IUCN)によって「近絶滅種(critically endangered)」に分類されている。

 アルシド・ドルビニ自然史博物館では、ジュリエットのほか、現在飼育している9匹のセイウェンカズミズガエルの繁殖にはまだ成功していない。

 しかしながら、同博物館はこれまで、コチャバンバミズガエルやチチカカミズガエルなど、同属のほかのミズガエルでは、飼育下での繁殖に成功している。セスペデス氏によれば、セイウェンカズミズガエルをはじめとする種の保全にとって最も重要なのは、保全活動に携わる人材と資金のさらなる確保だという。

 安定した野生の集団が新たに発見されたことで、保全活動は、残された生息地の保護へと移行しつつあると、カマーチョ・バダニ氏は説明する。

 一方、「Re:wild」は、エクアドル、ボリビア、ペルーの専門家らと連携し、既知の63種すべてのミズガエルを保全する共同計画を進めている。ミズガエルの多くの種は、病気や生息地の喪失などにより、絶滅の危機に瀕しているからだ。

 だが、さらに多くのセイウェンカズミズガエルを探し出すのは、必ずしも心ときめく仕事ではない。捕獲の際はたいてい、濁った水の中に両手を突っ込んで探すことになるのだと、カマーチョ・バダニ氏は言う。手探りでミズガエルやオタマジャクシをつかまえられることもあるが、運が悪いと、つかんだのが30センチほどもある巨大なナメクジだった、ということもあるそうだ。

関連ギャラリー:50年で200種が絶滅、愛すべきカエル写真13点(写真クリックでギャラリーページへ)
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アカメアマガエル カメラを見つめるアカメアマガエル。米カンザス州マンハッタンのサンセット動物園で撮影。鮮やかな赤い目は、たとえ一瞬でも捕食者を驚かせ、躊躇させるためのものだと考えられている。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

文=Joshua Rapp Learn/訳=夏村貴子

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