【Fate】弓子さん【5次弓女体化】
悪ふざけで昔書いたにょた話が出てきたので、気分転換にあげてみる。恋歌でいちゃいちゃに飽きた或いはシリアスめんど、ってお方向け。ギャグです。 あ。エロいことはなんもないです。あしからず。
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ちゅんちゅん。ちゅんちゅん。
すがすがしい目覚めに相応しい小鳥の鳴き声。
大空のネズミとも呼ばれるスズメの鳴き声だ。
そんなことは今はどうでもいい。
アーチャーは意識を取り戻して以来、目を離すことの出来ない己の胸を見下ろす。
ぷるん、と柔らかそうな二つの盛り上がり。妙にずっしりとした重感はリアルにもほどがある。
ふう、とひとつ息をつく。
いつまでもこうしてはいられない。
認めよう。目の前の現実を。
ついていない下半身を。
――――ある朝起きたら問答無用で女体になってました。なんでさ?
「凛―――!!」
物を大事にするアーチャーにしては珍しく、ばたーん! と派手な音を立てて荒っぽく主の部屋の扉を開ける。
「一大事だ凛! 特にあえて何がとは言わないがそのあたりは私の動揺や声音から察してほしい!」
結構むちゃくちゃなことを言っているのは、本人の言うとおり動揺しているからなのか。
「……」
そして一方、こういう時ならばいつもはガンドの一発もお見舞いしているはずの少女は、ベッドに籠ったままピクリとも動かない。
「どうしてくれようかこの現状! ああ凛、早く起きたまえ! そして不甲斐ない私の姿を見て笑うがいい!」
アーチャー、あまりの動揺に支離滅裂な状態に。
誰か早く彼を止めてほしい。
「る……さ……」
ベッドの向こうから何やらだるそうな声が零れる。
ちなみに現在時刻午前10時。休日でなければ大遅刻間違いなしの時間だ。
「あああ一体どうすればいいんだ! ちなみに凛、こういう時はやはり女性は落ち着くために何らかの呪術的な作法を使うものなのだろうか!? たとえば手のひらに"狗"と書いて飲み込んでみたり」
「さっきからうっさい」
布団越しにガトリングガンのごときガンドの嵐。
襤褸切れのように呪いの弾丸に翻弄され、アーチャーはいつもと勝手の違いすぎる身体を力なく寝室の床に横たえた。
結構狗って字、書きにくいし飲みにくいよな、と呟きながら。
その後冷静さを取り戻したアーチャーがどうにか現実へと復帰し、目を覚ました不機嫌な凛をダイニングまで引きずって行くことに成功し。
「で、一体何がどうなってこうなったか、君は知っているか?」
「あのねえ、そんなの」
「流石の君にもわからないか」
自慢の紅茶の腕を披露しつつ、やや諦め加減にアーチャーはカップをそっとテーブルの上に置いた。
どうやら女体になっても身に着けた技術がなくなったわけではないらしい。
「知らないわけないじゃない」
ガチャコン。
テーブルの上に置いた後で良かったと心からアーチャーは思った。
もし持ってる時にこの返事を聞いていたら、カップを叩き割っていたかもしれない。
ひとり済ました顔で紅茶をすすり、ほう、と満足そうな息をついて、凛は傍らに立ち凍り付いている従者の顔を見上げた。
「私ね、いまちょうど女の子の日なのよ」
「……は?」
意味深な単語の暗喩する内容に、ようやく現世へと戻ってきたアーチャーの脳が再び硬直する。
「つまり月に一度、どんな女の子でも味わう呪いの一週間。私は特に酷いほうらしくて、毎月これがくると憂鬱になるし、痛みと倦怠感も強いの」
確かにいつもならば輝いているような美貌をくすませた物憂げな横顔も、その辛さを前面に出している。
「昨夜、就寝する前にきちゃったもんだから、それはもう夢見が悪くて。人が苦しんでるって言うのに、夢に出てきたアンタはせせら笑うし」
夢の中の話かよ。
アーチャーはフリーズしかかる脳細胞を必死に励ましながら、そう暴走している主に言葉なく突っ込んだ。
「で、つい夢とはわかってたけど、令呪使っちゃったのよねー」
あっさりさらっと言われた言葉はあまりにも軽く。
「…………は?」
聞こえた内容を否定してほしいのか、アーチャーはまるで聞き返すように軽く首を傾げて、眼前の少女を食い入るように見つめた。
「だ・か・ら。こっちゃ苦しいのに笑ってるアンタが小憎たらしいから、令呪使っちゃったのよ令呪。大事な令呪を無駄遣いさせてくれて……」
ギリィ! と少女の目が一瞬にして据わる。
いやそれ自業自得だから、とは流石にいえない。超弩級のうっかりだとは言えるが。
「ち、ちなみにその令呪の内容は……?」
恐る恐る、といった風に聞いてきたアーチャーに、凛は清清しい笑顔で答える。
「"アンタら男も一回この苦しみを味わえばいいのよ"」
「無茶だ!」
流石に耐えかねたのだろう、アーチャーががたんと椅子から立ち上がる。
「だったみたいね。だってアンタ女性にはなったけど、別に月のものが来たわけじゃないでしょ?」
「勝手に女にされた挙句そんなものにまでされてたまるものか―――!!」
ちゃぶ台返しならぬテーブル返しをしたい衝動を、アーチャーは必死に耐えた。耐え抜いた。
ここでテーブルをひっくり返したところで何の解決にもならぬどころか、その片づけや仕置きを考えると割に合わなさ過ぎることに無意識の領域で知っていたからである。
「でも良かったじゃない。貴方、意外と女の方が可愛げがあるわよ?」
男の時に可愛げがあったら気持ち悪いだろうに!
そう言い返したくともアーチャーにはその気力が残っていなかった。
こうして、アーチャーはなし崩しに女性としての生活をスタートさせられたのだった。