「あれ、エミヤちゃん、それどーしたの?」
大量に積み重なった皿の山を、ブーディカとエミヤがキッチンで片付けをしていると、ふとブーディカが何かに気づいた。
一方で、ブーディカの発言に納得のできていない我らがカルデアキッチン代表は、首を傾けて固まっている。
「すまないがブーディカ、それとはどれのことかね?」
「え、あぁ…えーっとね……ごめん、やっぱり私の勘違いだったみたい♪」
頭にクエスチョンマークを浮かべたエミヤをよそに、ブーディカはそそくさと片付けを続ける。
その様子に、エミヤははぐらかされたと感じたが、ブーディカが自分に対して、何か実害のある嘘をつく理由もないだろうと判断し、自分も片付けに手をつけていく。
一方で、片付けをしながら、ブーディカはチラチラとエミヤの方に視線を向ける。視線の先にはエミヤの耳。彼女の耳についている虫刺されの様に赤い跡、それがなんなのかを知っているブーディカは、跡について全く気付いてないエミヤについて悶々とした気分だった。
(あれって…あれだよね?エミヤちゃんは気付いてないみたいだけど…まさか寝込みを、いやでもいくらエミヤちゃんでも、そこまで鈍くないだろうし、けど、じゃあ…う〜ん。)
見れば見るほど、疑問が深まる中、ブーディカは気持ちを抑えるように片付けをしていく。仮に、彼女がなんらかの理由で言えないとしたら如何だろうか?っとなさそうで、ありそうな考えを思い浮かべながら、ひたすらに皿を洗い続けるブーディカは、傍目には勤勉な態度に見えるだろう。
一方で、ブーディカの悩みの種となっているエミヤはと言うと。
(ふむ、今日も残しは殆どないな…しかし、やはり一部のサーヴァントは好き嫌いが多くていけないな。英霊たるなら、苦手も克服して欲しいものなんだがな。)
などと、悩むブーディカに気付く事なくナチュラルにオカンブームをかましていた。この女、鈍感系主人公属性持ちである。そりゃ、同居人全員から将来を心配もされる。何処か抜けているのが、エミヤの個性でもあるわけだが。
そうこうしているうちに、ブーディカもエミヤも、片付けが終えて、それぞれのプライベートに戻ることになった。
廊下越しで別れ、キスマークについて最後まで、悩みに悩んでいたブーディカは、その日はエミヤについて考えすぎて、あまり快適な睡眠を取ることができなかった。あのキスマークはなんだったのか、いつ、誰が付けたのか。ブーディカは、翌日の朝までその事でいっぱいだった。
(うーん。取り敢えず、エミヤちゃん自身に問題はないみたいだし、様子見かな。まぁ、なんにせよ、あの子は色々と苦労しようとするから、キスマークを付けた誰かさんには、きっちり責任をとってもらわないと。)
ちゃっかり、娘の恋を見守る母親ポジにつくことにしたブーディカは、そういう風にまとめると、今日は寝てしまうことにした。
自室の前を、キスマークをつけた誰かさんが通った事に気づくことなく。