東京電力は、福島第1原発の廃炉完了目標を2041~51年としているが、昨年までに取り出しに成功したデブリは2号機の約0.9グラムにとどまる。県民が望むような廃炉への進行具合は、ほぼ0%に近い。
まず、廃炉の定義について考え直す必要がある。県民の多くが想定している「廃炉」は、原発の敷地を更地にすることであろう。はっきり言って、将来更地にできる可能性は限りなくゼロに近い。デブリの取り出しが15年でわずかしか進んでおらず、全てを取り出せたとしても処理や保管が非常に難しいからだ。
とはいえ、現状のままでは1~4号機とも危険を伴う。事故の責任主体である東電はデブリを取り出し、放射性廃棄物を安全に処理することで少しずつ廃炉に近づける義務がある。
デブリ取り出しにはもっと大胆でパワフルな施策が求められる。現状はピンセットでつまんでいるような状況だ。いざ880トンを取り出す場合を考えると、何の見通しも立たない。
51年までに全て取り出すためには、残りの25年間で毎日約90キロずつ取り出す必要がある。現状は、その目標からかけ離れている。東電が廃炉の年限を修正しないのは先送りにしているだけだ。年限や目標は想定できるものではない。
デブリを取り出せたとしても、莫大(ばくだい)な放射能を含んでいる。保管するための頑丈な遮蔽(しゃへい)容器や保管場所が必要だ。例えばフィンランドでは使用済み燃料の埋設処分に向けて取り組んでいるが、数千年レベルで安定的な地盤が必要になる。地震大国の日本に安定した地盤があるのか。地質学的な分野でも、保管方法の模索や検討が必要になる。
今後の廃炉作業で重要なことは、透明性を持った情報開示だ。東電は廃炉の手順や計画、課題などについて県民に対する説明が少ない。事故によって失った信頼を取り戻すには、県民と真摯(しんし)に向き合うしかない。廃炉を進める作業がどれだけ大変なのかを県民と共有し、理解を得てもらうためにも透明性を持った対応が必要になる。
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たなか・しゅんいち 福島市出身。東北大工学部卒。1967年に日本原子力研究所に入所。原発事故発生後の2012年から5年間、原子力規制委の初代委員長を務めた。退任後の17年から飯舘村と茨城県ひたちなか市での二拠点生活を送る。81歳。