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ビギナーズラックは望めない/Novel by じちょう / かちょう

ビギナーズラックは望めない

18,629 character(s)37 mins

槍→(←)弓。金→弓も少し。
どちらもお触りまではあるのでご注意下さい。

恋愛経験ゼロの弓が、恋愛経験豊富?な槍に迫られ、思わず逃げ込んだ先は英雄王の居城で…というお話。

追記 : 少し修正しました(9/4)

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 英霊エミヤは童貞である。経験はまだ無い。

 どこが英霊としてのせいのきっかけだったのかであれば、何となく検討がつく。薄暗いジメジメした所で途方に暮れていた事は記憶している。私はそこで初めて抑止力というものを見た。しかもあとで聞くとそれは、アラヤという、抑止力で一番獰悪どうあくな種であったそうだ。ーーーー



 さて、話を戻そう。
 冒頭の事情だが、女性との性交渉の経験があるから偉い、無いから悪いという考えは私にはない。男としてのプライド?何だそれ。本来の目的は子作りである。愛の確認作業ともいうが、機会がなければやりようもない。

「おい」

 それ以前に男女交際というものをしたことがないのだから仕方がないだろう。生前の記憶は粗方磨耗していて確かなことは言えないが、人並みに初恋もあったし、恋もしただろうが気持ちを通わすことはついぞ無かったと思う。彼女たちには私の他に見合った相手がいただろうし、後に私の存在が枷になることはどうしても避けたかった。

「なぁ、聞こえてるか?」

 ドンファンだとかプレイボーイだとか呼ばれていたが、相手が求めているであろう言葉を与え、行動しているだけなのだが…何故そうなるのか。思わせぶり、罪づくりとも言われたが釈然としない。
 他の世界線の"エミヤシロウ"はその辺多少奔放らしいが、必要に駆られての魔力供給であったり、気持ちが通じてであったりと諸々もろもろの事情や縁の結果だろう。"俺"が口を出すことは何もない。ただ違う世界線の彼女達であっても泣かせたら容赦なく殺す。絶対にだ。

「俺、霊体化してねぇよな?」

 異国の戦場にて『一夜の夢だけでも』と迫られたこともあったが、夢として胸にしまっておくなら尚更、私なんぞでは荷が勝ちすぎると丁重にお断りした。戦場で指揮を執っていた胸糞悪い偉そうな奴やネジの外れた同輩からの下卑た誘いは拳で黙らせた。真摯な言葉での誘いは、真摯な言葉でもって断った。


 というわけで、童貞である。
 加えて言うと処女?である。


 行為だけをインスタントに行うサービスもあるが、見ず知らずの他人と金銭を支払ってまで共寝する必要を感じなかった。経験の数が己のステータスになるとも思えんしな。
 そもそも『童貞を捨てる』という言い方が良くない。捨てる、というのは不要になったものや価値のないものを手放すことを言う。まるで童貞というものが悪しきもののようではないか。

「おいアーチャー、無視すんな!」

「うるさい!元はと言えば貴様のせいでこんな下世話な思考に陥っているんじゃないか。口を出すな」

 正座は崩さず、視線を目の前の膝から顔に向ければ、私を混乱の渦に突き落とした元凶がこちらを静かに見据えていた。

「返事を聞かせろ」

 こいつは衛宮邸から小僧と少女らと共に、恋愛成就の御利益があると名高い神社へと出掛けた筈だ。なのに何故一人でこんな早く帰ってきたんだ?せっかく縁側に座り込み一人で悠々と洗濯物を畳んでいたというのに。
 視線を彷徨うろつかせると、不意に奴は一歩踏み出し、床が小さくギシと鳴る。反射的に足を崩し、後ろに下がろうとしたが俊敏さは向こうの方が上だ。
 グイと顎を掴まれ、無理矢理目を合わされる。

(クソ…)

 海の紺碧とも、空の蒼穹とも言える美しい髪に、ピジョンブラッドルビーのような紅い瞳。槍を持てば猛々しい嵐のようであるのに、普段は人懐こい犬のように愛想を振りまいては日銭を稼いでいる。しかし静かに思案している顔は神々しく近寄り難い。
 要するに、すこぶる顔が良い。
 半神半人の光の御子。クー・フーリンその人である。

「おい!聞けっての!!」

 名のある英雄なのは間違い無いのだが、今の姿は餌を前にお預けをくらっている猛犬ようだ。
 餌とは何か。私である。

「観念して俺のものになれ」

 いつもは人で溢れている衛宮邸も、今は私とランサーの二人だけであり、誰の制止も入らない。
 顎を固定されながらも後ずさると、先程畳終わったばかりの洗濯物を背中で押し倒してしまう。

「傲慢が過ぎる。英雄王か貴様は」

「こんな時に他の男の名を出すんじゃねぇよ」

「ヒェ」

 神性が高い美男の真顔というのはかくも恐ろしいものなのか。情けなくも目が泳ぐ。
 かたやアイルライドの大英雄、かたやアラヤの走狗そうくとして駆けずり回る掃除屋だ。聖杯戦争で呼び出されなければこうして目の当たりにすることもなかっただろう。
 聖杯戦争がひと段落し、休戦中であるのも稀有けうな状態だというのに、その間の交流で、何が奴の琴線に触れたのか甚だ理解できないが、事もあろうに私に惚れたのだという。

「体調が優れないのなら凛かキャスターにでも診てもらった方が…」

「女の名も出すんじゃねぇ」

「…獣医の方がいいか?」

「殺すぞ」

「悪いものでも食べたのか?」

「昨日はテメェの作った飯しか食ってねぇよ。どれも美味かった」

「そ、それはなにより」

 どうする。どうする俺。ランサーと付き合う?滅相も無い。しかしどう断る?ランサーの面子めんつを保ちつつ、この場を荒らさぬまま、そして後々に遺恨を残さないようなお断り話法など知りはしない。こちらは童貞以前に恋愛初心者なんだ。しかも目の前の相手は女性ではなく男。それも英雄色を好むとはよく言ったもので、向こうはかなりの上級者だ。相手をするには難易度が高過ぎる。
 立ち上がろうと片膝立ちになりランサーをチラと見上げると、何故か能面のようだった表情が緩む。逆にこちらの顔が強張ったところを見計ってか今度は顔を両手で包まれる。
 思いのほか温かい手をしているんだなと現実逃避をしている間に引き上げられ、首に痛みを感じながらも勢い良く立ち上がったせいで視界が揺れた。
 急に近付いてきた顔に思わず目を強く閉じる。

 耳に息がかかり、そしてそこに唇が微かに触れた。


「…なぁ、俺のこと嫌いか?」


 一瞬、記憶が飛んだ。
 湿度の高い、吐息混じりの甘い声は猛毒だった。
 気がついた時には仰向けに寝ていて、跳ねた息を整えるのに少々時間を要した。ようやく上体を起こし後ろを振り返ると足を向こうに頭をこちらに、ランサーも同じように倒れていた。
 白目をむいて気絶していることに安堵し、落ち着いて検分すると服の胸元や袖が無惨に伸びている。体の下に散らばっているのは先程崩れた洗濯物の一部だろう。

「ふむ」

 多分、混乱を極めたった私の脳は、強制的にその原因を排除しようとランサーを巴投げか背負い投げかで後ろに投げ飛ばしたのだろう。

「………さて」

 ランサーを縁側から和室へとうつ伏せに転がす。
 ひとまず此奴から逃げねばなるまい。敵前逃亡ではない。考える時間を作るための、戦略的撤退というやつだ。

「問題はどこへ身を隠すか…だな」

 遠坂邸にはそれなりに強力な結界が張られているが、今回はランサークラスでの召喚ではあるとはいえ相手はルーン魔術にも長けた英霊だ。突破される可能性もゼロではないし、無理に解除されて庭やら屋敷やらを破損されても困る。投影魔術での家屋や庭の修復よりも凛の機嫌を直すほうが骨が折れそうだ。故に却下。
 誰かの助力を得たいが、頼みの綱のほとんどは先ほど出かけて行った面々であり、柳洞寺に住まう新婚の葛木夫妻のところへ厄介になるわけにもいくまい。

「…………………」

 一人、心当たりはある。門前払いもあり得るし、見返りに何を請求されるか恐ろしくもあるが背に腹は変えられない。
 台所に足を踏み入れ、頭上の戸棚から手頃なラッピング袋と、それを入れる紙袋を取り出す。帰宅後、皆が食べる分の菓子は残し、それ以外を手早く詰めて包む。手土産としては心許ないが無いよりはマシだろう。

(…すまない、凛)

 任されていた留守番の任は転がしたままのランサーに押し付け、それでも一応防犯のために玄関は投影した鍵で閉め、それは庭に転がっていた手頃な石を拾ってきて下に隠す。いつもこの家に来る面々であれば不思議に思って石を持ち上げるだろう。

 では、さらばだ。



+ + + +



 ベルボーイに小さく会釈をし、自動ドアをくぐれば豪奢なエントランスが大きく口を開けていた。頭上のシャンデリアに見下ろされながら最奥に位置するフロントへと足を向ける。

「いらっしゃいませ。どういったご用件でしょうか?」


「ええと…こちらのロイヤルスイートに滞在している男に会いたいのだが…」

 エレベーターで最上階へと昇る。
 フロントで預かったカードを最奥のドアの所定の位置にかざせば、すんなりと鍵が開く。ドアロックが掛かっていない無用心さに戸惑いながらも部屋の中に足を踏み入れる。
 名の知れたホテルのロイヤルスイートではあるが、思っていたより調度品はシンプルにまとめられている。華美過ぎず、単調でもない。センスは良いが、宿主の好みかといえば首を傾げざるを得ない。
 まぁ、部屋の格式に見合った広さではあるのだが。

オレを訪ねてこようとは…どういう風の吹き回しだ?贋作者フェイカー

 革張りの一人掛けソファーに座り、長い脚を組んで優雅にワイングラスを回しているのは私ではない方のアーチャー 、金ピカこと英雄王ギルガメッシュである。流石に今は白いシャツに黒いジャケットの、俗世に紛れるためのいつもの私服姿なので金ピカではないが。
 良くも悪くも『王』という概念をそのまま形にしたような、辞書で『王』と調べたら奴の名が記されていそうな…そんな男に平坦な声で問われ、言葉を選びながら返事をする。

「部屋に招き入れたということは、謁見は受け入れられたということかね?」

「興が乗れば追い出さずにいてやろう」

「…………………」

 ランサーに迫られ困っているので匿って欲しい、と本当のことを言うか?いや、言えるわけがない。
 しかし英雄王が興味を持つような別の話も、腹筋に激痛を与えるようなネタも私は持っていない。一先ずのところ、初手を打つ。

「…なに、スコーンを焼き過ぎてしまってな。良ければと思い持ってきたのだが不要だったかね?」

 英雄王は一度私の手元を見、スンと一度鼻を鳴らすと持っていたワイングラスをテーブルに置く。そして視線を窓外そうがいへと外し、腕を組む。

「…このホテルのパンケーキとやらにも飽きたところだ。良い、献上を許す」

「承った」

 短い返事に留めたが、内心ではだいぶ安堵していた。英雄王の住処であればランサーといえど易々と手出しはできないだろう。この面倒な王と争ってでも乗り込む用事があればの話だが。
 小振りの籠にナプキンを敷いたものを投影し、そこにスコーンを入れていく。別に用意したアンティーク調の皿に二つほど置き、その脇にクロテッドクリームとベリーのジャムを瓶のまま添える。

「飲み物は何がいい?」

「紅茶で良い」

「わかった」

 いつもの不遜な態度は鳴りを潜め、ソファーに体を沈めながら街を見下ろしている姿はまさに王のそれだ。もう少し老成すれば賢王としての頭角を表すのも頷ける。
 静かにしていれば、ランサーと同じく半神であるが故の見目の麗しさが際立つ。緊張していないといえば嘘になる。
 悟られぬようにカップに紅茶を注ぎ、静かに差し出す。ギルガメッシュは一瞥したのち、手に取り鼻を寄せる。

「………ふむ」

 一口。そしてすぐテーブルに戻し、今度はスコーンに手を伸ばす。上下半分に割り、まずはそのまま。そしてクロテッドクリーム、ジャムの順に食べ進め一つ分を食べ切りそしてまた紅茶を飲む。
 ほう、と吐かれた息が存外に柔らかく、いつの間にか自分の肩が強張っていたのに気付いてゆっくりと力を抜く。どうやら合格点だったらしい。
 ギルガメッシュが二つ目を手にし、皿が空いたところで籠の中のスコーンをトングで掴む。

「貴様の給仕の腕は買っているのだぞ」


 ガシャン。


 大きな音がしたなぁ、と思った時にはスコーンは屈んだ英雄王の手の中にあり、使われていない分のフォークやバターナイフは長毛カーペットに沈んでいた。
 そこそこの高さがあったトングから滑り落ちたスコーンは、皿の端に当たった後、カトラリーを巻き込んでテーブルの外へと飛び出したようだった。

「ッ!…すまない!」

「良い。些事だ」

 体を起こし、スコーンを皿に置いてから居住まいを正した英雄王の顔を見るに、確かに気にした風ではなかった。

「…………………」

 怪しい。
 私を褒めた上に、不手際を咎めないとは。

「…悪いものでも食べたのか?」

「不敬な。どこぞの狗と一緒にするな」

「それは申し訳ない」

 落ちたカトラリーは魔力へ還し、新しいものを投影する。

「さて、次はコーヒーでも淹れるか?」

「いや紅茶のままで構わん」

 そう言ってカップを差し出されたので、そのまま静かに紅茶を注ぐ。

「で、貴様は狗の求愛を受けるのか?」

「ッ!?」

 動揺が手元に顕著に現れ、紅茶の飛沫がカップの外へ飛び、近くに置かれていたギルガメッシュの手にも降り掛かる。

「ア"ッ…ツイではないか!!何をする!!」

「す、すまない…」

 手の甲をさすりながら『フケイ!フケイ!』と鳴く金ピカはさて置き、溢れた紅茶を布巾で拭く。諸々の処理が終わってからギルガメッシュに向き直る。

「き、貴様がおかしな事を言うからだ!そら、手を見せたまえ」

「不敬だぞ贋作者…」

「はいはい」

「これで今日は『7不敬』だからな。10になったら覚悟しておけ」

「10まで猶予があるとは。ご厚意痛み入るな」

「王の器は大きくなければな!」

「はいはい」

 適当にあしらい、患部に冷えたおしぼりを当ててやる。
 そのまま受け取ったので手を離し、詫びを意を込めて皿にスコーンを山のように盛り付けた。

「…………………」

 英雄王は眼前のスコーンの山をめ付けた後、静かにベッドを指差す。指先がそのまま下を指したので『そこに座れ』ということなのだろう。食べ物で機嫌を取ろうとしたのがにかんさわったらしい。
 これ以上不機嫌にならないように大人しくキングサイズのベッドの長辺に浅く座る。思ったより沈まないのは品質の良さ故だろうか。

「王たる我を児子じしの様になだすかそうとした愚行は特別に許してやろう」

「ほう、慈悲深くて涙が出そうだ」

 首を竦めてやれやれと振れば、英雄王は面白くなさそうに口を歪める。

「その代わり、さっさとここへ来た理由を話せ」

「…………………」

 未来をも見通す千里眼で、ここまでの経緯も知っているだろう。それでも私の口から言わせようとするとは…趣味が悪い。

「…笑うなよ」

「善処しよう」

 私は深く深く溜息を吐いてから、先程の嵐のような出来事を少しずつ伝えた。ーーーー




「ハッハッハッハッハ!!!!!」

「貴様!笑うなと言っただろう!」

「馬鹿め、笑わずにいられるか!馬鹿め!」

「二度も言うな!」

 ベッドに拳を振り下ろすが、勢いも音も全てマットレスに呑まれ、苛立ちが収まらない。シーツの手触りの良さも今は腹立たしいだけだ。
 こちらの怒りを知ってか知らずが英雄王はニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。

「いやぁ、まさかランサーの奴が貴様に執心とはな」

「改めて客観的に言われると違和感が酷いな」

 なんだがドッと疲れた。体が重く、このまま後ろに倒れてしまいたい。

「ハァ…貴様はおかしいと思わないのか、英雄王」

「何がだ」

「『半神半人の英雄が、アラヤの掃除屋風情にうつつを抜かすなど!』と…」

「当人同士が良しとするなら何も言うまい」

「そういうものか」

 この話題を出した途端追い出されると危惧していたのだが、その辺りの線引きは存外に緩いらしい。

「で、貴様はどうなんだ?」

「は?」

「は?ではない」

 ギルガメッシュが立ち上がり、こちらに近付いてくる。

「貴様はあの狗めのことをどう思っているのだ?」

「…どうも何もないだろう。第5次聖杯戦争でのランサーのサーヴァント。ケルトの大英雄にして半神半人の光の御子と言ったところか」

「それは客観的な情報だろう」

 そしてまた一歩。

「近い近い近い近い!」

 眼前まで迫った体に驚き、腹を押すがビクともしない。くそ、筋力差…!

「騒ぐな。我はランサーの奴が貴様に向けているような愛執やら肉欲やらが貴様にはないかと聞いておるのだ」

「にッ、にくよッ…!?」

 なんてこと言うんだ、この金ピカは!!!
 勢いで奴の顔を見上げるが、顔に熱が集まるのを感じてまたすぐに俯く。

「げげげ下世話なことを言うな!ただ惚れただとか…お、俺のものになれとしか…」

 思い出すだけで顔が熱い。言われたことを口にするだけで羞恥心が湧く。
 頭上でクツクツと喉の奥で嗤うのが聴こえる。

「なんだ。まるきりそう言うことではないか。貴様にも奴に対し同じ欲があるなら是と、無いなら否と伝えれば良いだけだろうに何を躊躇ためらう。何故逃げてきた」

 ギルガメッシュの言葉が心に刺さる。確かに、ランサーの言葉から逃げてしまったのは不誠実だった。
 だが…。

「わからない…」

 自分のものだと気づけないほどの弱々しい声が溢れる。

「アイツはまごうことなき英雄だ。そんな人物が何故私オレを…?」

「それは奴に聞かねば分からんことだな。そうでなく今は貴様の感情の話をしている。好きなのか?嫌いなのか?」

「…………………」

 ランサー、クー・フーリン。
 戦闘中は猛々しい野獣のような苛烈さも、半分流れている神の血を感じさせる冷酷さも兼ね備えた戦士。その在り方に敬仰けいぎょうの念がないといえば嘘になる。しかし戦いのない日々のランサーはこの街によく馴染み、たまに商店街でお裾分けを貰ってきては私の住んでいるアパートの一室に上がり込み、飯をせがむ人懐こさがある。
 近づき難い程の憧れの存在。しかしいつの間にかそばにいる。

「…何なんだろうな」

 そもそも戦闘スタイルやスタンス、性格がまるで違うのだから仲良くできるはずもない。 水と油、犬猿の仲。奴と俺はそういうものだった筈だ。
 しかし、テーブルの向こうで美味しそうに料理を食べている姿は…まぁ、好ましいが。

「今の、友人のような関係のままではいられないのか」

「少なくとも狗めはそれ以上を求めているようだがな」

「…………………」

 そう、私は今のままで充分だったのだ。宿敵であったはずのランサーと日々交流し、和やかに食事が出来るだけで。戦いになれば殺し合うことになるが、それでも"友人"と呼べる間柄に収まっていたと思っていたのに。
 好きだとか惚れただとか、そういう感情は過去に置いてきた。そもそもそういった経験が爪の先ほども無いからランサーの想いにどう答えて良いか考えあぐねているというのに。

「…どうすればいいんだ」

 無意識に目の前の服にしがみつく。眼前の人物が誰なのか頭の中から抜け落ちていた。

「知っているなら、教えてくれ」

 勝手に口が動く。

「俺では想いに応えられない」

 目に熱が篭り、声が震える。

「愛も恋も分からない。そんな俺に何が出来る」

 あまりの不甲斐なさ、情けなさに視界が少しずつ滲んでいく。

「求められても…これでは何も返せない」

 助けを乞うように、服の主を見上げる。

「…愛とは一体何なんだ…っ」

 ぼやける世界の中で金糸が微かに揺れる。
 ひどく情けない顔を晒しているに違いないので、それを見た相手の表情が分からないのは唯一の救いだろう。
 スン、と鼻をすすると、頭上から嘆息が落ちてきた。

「なんとも罪作りな奴よ」

「は」

 トン、と肩を押され後ろに倒れる。ベッドの程よいスプリングを背中に感じていると足元から右、左と交互にマットが沈む。
 訳もわからずぼんやりとしていると、視界の下の方からギルガメッシュが顔を出した。
 マウントを取るように私の腹のあたりで膝立ちで陣取り、こちらを見下ろす。

「眉をひそめ、涙を湛えた目で男を仰ぎ見て『愛を教えてくれ』と懇願するなど…男の憐憫れんびんを誘い、一夜の情けを乞う乙女のようではないか」

「…………………」

 一夜の情けを…乞う?

「………ンな馬鹿な!!!!!!」

 先程と比ではないほど顔が熱い。羞恥と怒りで気が狂いそうだ。

「貴様の目は節穴か!」

「千里眼持ちだ、たわけ!!」

「こんなむくつけき男を捕まえて何を言う!」

「ええい、煩い!」

「ぐぇ」

 ギルガメッシュの膝が胸の上に乗り、一瞬息が詰まる。

「我はただ貴様のスカした表情かおが歪むのを見て愉悦に浸るつもりだったのだがな…気が変わった」

「な…」

 嫌な予感がする。
 逆光の中、英雄王の瞳だけがやけに光を湛えていて、それが弓なりに細まる。

「なァに、知らんと言うのなら貴様に教えてやるのみよ。この王たる我が、直々にな!」

 嬉々として顔を近づけてきたせいで更に体重がかかり肋骨が軋む。痛い、苦しい以前に今こいつはなんと言った?

「んんん???」

 誰に?誰が?
 何を、教えるって…?
 俺の顔を見て困惑を察したのか、奴は嫌な笑みを一層深める。

「こうして御誂おあつらえ向きにも寝具に転がっているからな。特別に、直接身体に教えてやると言っている」

 トン、と胸の間に人差し指が置かれる。
 こいつは何を言っているんだ?

「感涙にむせべよ、贋作者。王たる我が一から抱いてやるのだからな」

 そして言葉の横暴さとは真逆の、柔らかな手つきでオレの頬に触れた。途端。

 ゾ、と悪寒が背を駆けた。

「遠慮する!!!!!!」

 手首を掴み、引き剥がそうとするがやはり力が及ばない。そうこうしてる間に逆の手でこちらの黒シャツのボタンを外しにかかる。

「大人しくしていろ。貴様相手とはいえ、乱暴にはせん」

「乱暴でなくてもやめろ!貴様には気にくわない奴を抱く趣味があるのか!?」

「それはそれ、これはこれよ。思ったより良い反応が見れそうだ」

「この悪食め!!」

 無理矢理服を脱がされるのがこんなに辛いなんて…。
 遥か昔の、半裸姿で肩を抱いて震える学友の姿を朧げに思い出して心の中で合掌する。ごめんな一成。
 心の中で手を合わせているとギルガメッシュが不機嫌を隠さず吐き捨てる。

「いい加減腹をくくれ。童貞処女でもあるまいに」

「ーーーーーッ」 


 言葉が胸をえぐった。


 私の寄った眉間の皺と、絶句し開いたままの口とで、色々と、諸々もろもろ、たくさん察したギルガメッシュが手を止め、憐みの眼差しを向けてくる。

「………ごめんなさいね」

 むかつく。

「雑な謝罪をするくらいなら服から手を離せ!」

「断る!」

 無情にも動きが再開する。
 シャツのボタンが全て外され、上半身が露わになると、今度はベルトに手が掛かる。いよいよ血の気が引いて怒りに燃えていた体の熱が一気に下がる。

「まっ、待て!早まるな!!俺が知りたいのはランサーへの返事と対応をどうするかであって、こんな…身体を暴かれるなど…」

 と言っている間にいとも簡単にバックルが外れる。

「うわっ」

「…貴様のその物言い…遠回しな言い方ほど淫靡いんびだとなぜ分からぬ」

「あああ…なぜ何もかも裏目に…!」

 ズボンのボタンが穴を通る。

(誰か…誰か、誰か…!!)

 生前も、今に至っても口に出すのを躊躇う救済を乞う言葉。
 一度目は火の海から、二度目は冷たいリノリウムの床から。それからも幾度となく多くの手を差し伸べられ、その度にそれを取ってきた。それなのにまだ卑しく救いを求めるのか、俺は。

(…そうだとしてもこのまま抱かれるわけには…!)

 ジッパーの金具に指が掛かる。
 神さま、仏さま、じいさん…ーーーー

(凛!!りーーーーん!!!!)

 パスによる念話で凛に呼びかけるが、うんともすんとも返事がない。

「この階層には結界が張ってあるからな」

「心を読むなァ!!」

「魔術も音も衝撃も漏らさんからな。いくら貴様が暴れようともどうにもならん」

 霊体化も出来んぞ、とニンマリ笑う。

「クソッ…!」

 両手でズボンを掴み、最後の砦を死守していると不意にあちらの手が離れ、羽織るのみとなったシャツの隙間から脇腹、そして胸をスルリと撫でられる。

「ひぅ…ッ」

 冷たい手に驚いたのと、擽ったさとで思わず漏れた声が、自分で言うのもなんだが少しばかりいかがわしかったような気がして、ズボンのことはさておき慌てて手で口を塞ぐ。
 が、時すでに遅し。

「…………………」

「…………………」

 ギルガメッシュの口角がつり上がる。

「嫌よ嫌よも…と言うやつか?身体は初物だが悦楽には弱いようだな」

「ちがッ…」

「そら、もっと鳴いてみせろ」

 口を抑えたせいで防ぐものがなくなった身体を臍からから胸までなぞられる。

「ぅ、あ」

 頭の中が甘く痺れ、思考が散る。
 もはやここまでか…。
 さらば、私のバックバージン。ーーーー





「殺す」

 轟音は、聞こえなかった。

 人の言葉というより獣の唸り声のような、怒りと殺気に満ちた声が聞こえた時には、ひしゃげた扉はベッド脇まで飛んでいた。
 体を起こしたギルガメッシュと、その下から這い出て後ろを振り返った私の視線の先にはバーサーカーもかくやというオーラを纏ったランサーがこちらを見据えていた。

「ーーーーーッ」

 身を灼かれるような冷徹な眼差しに身動きが取れずにいる私とは違い、ギルガメッシュの方はというと優雅に前髪をかき上げるなどしている。

「猛犬とは名ばかりの愚鈍さよなァ」

「ア"ァ?」

 私はランサーからの精神的圧力プレッシャーをヒシヒシと感じているというのに、ギルガメッシュの嘲るような物言いは止まらない。

「駒鳥のように籠の中に囲っていたわけではあるまい。獲物をのうのうと野放しにしていた貴様の怠惰が招いた結果がこれだ」

「俺の獲物モンだという察しがついてて態々ちょっかいかけるとはな…英雄王ってのもダセェことしやがる」

「フン、人聞きの悪いーーー」

 息を潜めて静観していると、いきなり顎を掴まれる。

「駄犬の無駄吠えに怯えて飛んで逃げてきた先が、我が居城だっただけだろう?」

 部屋の気温が数度下がる。

(おい、煽るな!)

 目で訴えるがギルガメッシュの口は止まらない。
 横目で私の狼狽を確認すると目を細め、口の端を釣り上げる。どこぞの神父を彷彿とさせる笑みに心臓が冷える。

 愉悦、愉悦。

 そう聞こえた気がした。
 英雄王はランサーの舌打ちにも意に介さず、果てには私の頬を奴に見せつけるように撫であげる。

 ランサーの手に朱槍が顕現する。

(やめろ、これ以上は…)

「羽色が珍しい鷹だしなァ。それにーーー」





「イイ声で啼くぞ」
 ガシャン。

 ゲイボルクを振りかぶった形で天の鎖に拘束されたランサーは視線で射殺さんばかりにギルガメッシュを眼光鋭く睨みつけている。

「殺す」

「先程も聞いたセリフだな」

「落ち着けランサー!ギルガメッシュもやめろ!」

 2人の男に挟まれ慌てふためく乙女のような立ち位置に頭を痛めつつ、ベッドから降りて双方の間に躍り出る。
 ギルガメッシュをキッとひと睨みしてからランサーに向き直る。

「…まぁ…その、姿を消したのは悪かった」

「…………………」

「に、逃げ場にここを選んだのは私としても愚策だったと反省している」

「…………………」

「………それで…」

 普段口数の多い分、黙っている時の圧が尋常じゃない。既述の通り、美男の真顔ほど恐ろしいものはないので私が気圧されても致し方のないことである。目を見ていられず、ゆっくりと視線を下へ逸らす。
 ランサーの怒りはもっともだ。愛を伝えた相手が自分を昏倒させて消え、逃げ込んだ先で手籠めにされそうになっているのだから。

(…私自身がその渦中の人間だとは到底思えないのだが…)

 ランサーの言葉も、手を出してきたギルガメッシュの心中も、何もかも理解が追いつかない。
 困った。非常に、困った。

「…………………」

「………ハァ~~~、しゃーねぇなぁ」

 その声に緩々と顔を上げると、嘆息と共に槍もくうに溶かしたランサーと目が合う。

「別に、困らせたかった訳じゃねぇよ」

 そう言って困ったような顔で笑う。
 それから体に絡んでいた鎖も消えたので、ランサーは肩や手首を回しながら近づいてくる。

「嬢ちゃんたちと行った神社でおみくじとやらを引いたんだがな」

「半神半人の君がか?」

「別の神の神託を受ける権利はあるだろ。総評は"大吉"だったんだが…"恋愛"のとこが『さわりあり。心せよ』、"争事"が『後手に回るべからず』って書いてあってな」

「…まさか」

 衛宮邸でのランサーの暴走の訳を悟る。
 バツが悪そうに頬を指で掻いて視線を逸らしたということは、やはりそうなのだろう。

「そのまさかだよ。合わせて考えりゃ、後手に回ったらテメェが別のやつにとられちまうってことだろ?こうしちゃいられねぇって急いで坊主の家に戻って口説いたらひっくり返されたってわけだ」

「…たわけめ」

「で、」

 ランサーの声のトーンが一段下がる。

「俺から逃げてる間に答えは出たんだろうなァ?」

 …これはマズイ。

「い、いや、待てランサー。こっちにくるな」

「待たねぇ」

「ステイ!!!!!!」

「犬じゃねぇ!!!!」

 数歩で目の前までやってきた足の長さが恨めしい。
 一歩後ろに下がったところで、先程の金の鎖が今度は私の腹に巻き付き、後ろに引っ張られる。そのまま尻からベッドの上に落ち、スプリングで少し体が跳ねた体にギルガメッシュが後ろから抱きついてくる。

「おのれ、貴様も何なんだ英雄王!離れろ!」

「断る」

「おいギルガメッシュ、お前こいつのこと嫌ってただろう?」

 激昂まではしないものの、不機嫌そうに眉間に皺を寄せてランサーが指をさしながら問う。

「なに、在り方と 小言に目を瞑れば、器量と料理の腕は悪くない。それにさっきも言っただろう。いい声で啼くとな」

「ンッ…」

 首筋から耳の裏までを指先で擽られ、肩が跳ねる。

「貴様も触ってみるか?」

「…………………」

 無言のランサーの喉が上下に動いたのが見えて、ザッと血の気が引くのがわかった。
 羞恥や怒りで熱くなったり、血の気が引いて寒くなったり、私の代謝機能はもうとっくに壊れているのだろう。

 絶望感に苛まれている間にランサーがベッドへ乗り上げる。後ろにギルガメッシュ、前にランサーというまさに前虎後狼ぜんここうろうの有様だ。
 言葉の意味合いとしては一難去ってまた一難なので現状を表すには適さない。しかも狼と虎がなんとなく逆だ。

(八方塞がりじゃないか…)

 こちらが正しい。
 と、不覚にも現実逃避している間に事態は悪化の一途を辿り、シャツは肩から滑り落ち腕に引っ掛かるのみとなる。

「離せ!お前たちの倫理観はおかしい!こういうのは心を通わせたもの同士でないと…」

「俺は好きだって言ってンだろうが!お前の気持ちはどうなんだ!」

「ぁう!」

 ギュッと胸の頂を摘まれ、堪らず裏返った声がまろび出る。
 痛みと、それとは別の甘い痺れが脳髄を駆け抜け、またもジワリと涙がせり上がってくる。悔しさだとか、歯痒さの所為ではない。絶対。

「わ、わからないんだ!」

「わからないって…テメェの感情だろうが」

「我が聞いてやってもずっとこうだぞ」

「はぁ?」

「そら、我につらつらと語った心中をそのまま此奴に伝えよ、贋作者」

「…………………」

 ああ、くそ。

「…友愛、では駄目なのか?」

 ランサーの片眉が跳ねたのに一旦怯むが、一度だけ息を飲んでそのまま続ける。

「そもそも、私が君の友人のような間柄に収まっているのも過ぎたものだったんだ。輝かしい英雄、下賤な守護者。例えるなら太陽と路傍の石だ」

「…それ以上貴様をおとしめるような物言いをするならその口を塞ぐぞ、弓兵」

「ーーーーッ」

 手を使ってではない事は確かなので、大人しく口を噤む。口調が丁寧なほどランサーの怒りが深いのはよく知っている。
 ランサーへの反論が出来ないムシャクシャを、背後から人知れず腹を撫でてくるギルガメッシュの手を無言で抓ることで発散する。

「…………………」

「…俺がなんと言おうと、貴様の信念も後悔も願いも揺らがんのだろう?その酷く歪な在り方も全て含めて惚れたと言っているんだがな」

「…………………」

 とんでもない殺し文句を、とんでもなく真摯な眼差しをもって伝えられる。しかもいつの間にか両手を掬い上げられ包まれて、だ。姫か。
 流石にここまでされて無言でやり過ごすなど、到底できる筈もない。
 しかし。しかしだ。それでもその返答として適した言葉を持ち合わせてもいなければ、推敲する知識も経験もない。
 断りたくないと思っている時点で私は奴が好きなんだろう。だが熱量が違いすぎる。同じ好きでも同じでなければ不誠実ではないのか。
 ぐるぐるとアレコレ考えている間にも不埒な手は前と後ろから伸ばされ、身体を這い回る。

「やっ…ま、待て…!」

 触れるか触れないかの加減のものから、肌質をあらためるように掌全体で撫でさするもの、肉の弾力を愉しむように揉み込まれるなど、様々な触り方で身体が火照るのを感じる。

「…ふ、ぅっ……」

 声が漏れ出ないよう唇を噛んで耐えるが、ランサーが指先で解すように柔く触れる。

「声、聞かせろ」

 掠れた低い声が耳から身体を駆け抜け、ゾクゾクと背筋が戦慄わななくのを抑えられない。

「や…いや、だッ……ぁ」

 脳まで痺れるような刺激に意識が散り散りになりながらも、静止を訴えるためランサーを見上げる。が。

「…………………」

 戦いの合間に向けられるものとはまた別の、熱の篭った眼とかち合う。宝石のように美しく、冷たい赫は、いつの間にか炎を抱えて揺らいでいた。

(いつから、そんな眼で……)

 炙られるようにジワジワと身体が熱を持つ。
 目は口ほどに物を言う、とはいうが…まさかこんなにも雄弁だとは思わなかった。
 私の矜恃や恥じらいなど、あまりにも小さく思えるほどに。

 ランサーの顔が静かに近づいてくる。これは、もしかして、もしかしなくても…。

(キス…してしまう…!)

 ダメだ、と思う自分と、したい、と思う自分が脳内で争うが、どうも後者の方が優勢で、勝手に目蓋が落ちてきてしまう。

(ダメ、なのに……)

 そうは思っても、心に迫る感情は、紛れもなく歓喜だった。




『アーチャー!あんたどこにいるの!?』

「凛!!!!!」
「へぶっ」
「グハッ」

 キメ顔だったランサーの顔を右手で押し退け、口は挟まずもずっと身体を撫で回していたギルガメッシュに左側から肘鉄を喰らわせて二人の間からうのていで抜け出す。
 恥ずかしさで頭が爆発しそうだ。顔は火が吹き出していそうなほど熱い。

(このままここに居たら頭も体もおかしくなってしまう…!)

『凛!頼む、今すぐそちらに呼んでくれ!』

『アーチャー…?』

 訝しんでいるような声に焦る。早くしないと二人が復活してしまう!

『時間がない!たすーーー』

 けてくれ、と続けるその前に、

『令呪を持って命ずる!来て、アーチャー!!』

 凛の声がまるで天樂てんがくのように頭の中に響く。そして刹那のうちに、己の身が霊体となり、どこかへと引っ張られるのを感じた。




「…………………」

「…………………」

「貴様が扉と共に我の結界を壊したせいだぞ」

「……チクショウ…」


Comments

  • なす

    とても好みなお話の上、まさかのオチに心底笑わせて頂きました!ランサーの愛とアーチャーの明日はどっちだ笑

    September 12, 2020
  • anzu
    August 31, 2020
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