大正から昭和初期に流行「洋館付き和風住宅」、モダンであせない魅力…壁の装飾や窓の形式など趣向を凝らし
「サツキとメイの家」を思わせる赤屋根
福岡県広川町には、アニメ映画「となりのトトロ」に登場する「サツキとメイの家」を思わせる赤屋根の洋館付き住宅が立つ。古い建物が好きな会社員の稲冨裕章さん(45)が、同県柳川市の工務店「バウビオジャパン」に相談し、21年に新築した。
和風住宅部分は入母屋(いりもや)造りや鎧壁(よろいかべ)、洋館部分にはドイツ壁といった伝統的な工法を取り入れた。ドイツ壁は、モルタルを竹のササラを使って掃き付ける手法で、70代の左官職人が昔の記憶も呼び起こしながら、若い職人たちと施工したという。有明海で取れた貝殻で製造した漆喰(しっくい)を塗った壁や、国内外から取り寄せた窓ガラスなど随所にこだわりが見られる。
同工務店代表の山川秀徳さん(50)は「当時使われていた材料の品質の良さや職人の技術を知る貴重な機会になった。次の時代につなげていければ」と話している。
試行錯誤していた時代背景
神奈川大建築学部の内田青蔵・特任教授(近代建築史)の話「日本最古の洋風住宅は幕末に建てられた長崎のグラバー邸で、明治初期には政府高官や財界人など上流階級の間で、和風邸宅と洋館を併設する形が流行した。明治30年代になると、知識人など中流層が上流階級を模倣し、和風住宅の玄関脇に洋館を設ける動きが広がり、一種のステータスになった。洋館付き和風住宅からは、伝統的な生活の中に西洋の新しい文化をどう取り入れるか、試行錯誤していた時代背景が感じられる。建物の修理を通して当時の職人たちの技を学ぶこともできる」