多くの人は気づかない「AIバブル崩壊」よりも恐ろしい「日本最大のリスク」とは
エコノミストのエミ・ユルマズ氏がクーリエ・ジャポンの動画インタビューに登場。著書の『エブリシング・クラッシュと新秩序』をもとに、エミ・ユルマズ氏が「エブリシング・バブル」の終焉を紐解きつつ、日本株の高騰や“ITバブル2.0”と言える「AIバブル」の行方、そして米中関係がもたらす新秩序について語った。 AI市場で「スター銘柄」となるのは一体どこか? ──株式相場を牽引するAI事業への期待も、弾けるのでしょうか。 エミン・(以下エミン) AI関連は、アメリカのど真ん中を見てみると、エヌビディアにしてもバリュエーション的にものすごいレベルまで行っています。何年先までの利益を織り込んでいる状態です。S&P500全体のPSRは2025年8月時点で3.3倍であり、これは2000年のITバブルより割高です。現在起きているのは、まさに実質上のITバブルです。あるいはAIバブルと言ってもいいでしょう。違いは当時の中心がインターネットで、今回はAIというだけで「ITバブル2.0」と命名しても違和感はありません。 ──では一体どんなことがきっかけでこのバブルが崩壊するのでしょうか。 エミン 明確なきっかけはありません。言うなれば弾がなくなる、燃料切れになるのです。どんなにジャブジャブな状態でも流動性は無限大ではない。今のAIスキームは「いずれはマネタイズできるだろう」という期待値で盛り上がっていますが、実質上儲かっているのは、実際のモノを売っているエヌビディアだけです。 データセンターを借りてAIモデルを動かしている人たちは、まだ儲かっておらず、ROIも低く赤字だと思います。AI自体にはまだキラーアプリもなく、現状は「グレードアップしたGoogle検索」に過ぎません。先行投資した分を回収できていない今の状態は期待先行です。 ──では、AI市場でスター銘柄となる株は今度出てくるのでしょうか。 エミン 多分今はまだないと思いますが、今後はAIモデルそのものが、インターネットプロトコルのように、それ自体に価値はないコモディティになるでしょう。AIを使って薬品開発などのアプリを開発したり、ソリューションプロバイダーは出てくるでしょうが、現在はまだそれが見えていません。 必ずしもここでメガテックになるとは限らないのですが、面白いことに、中国が「ディープシーク(DeepSeek)」でそれをやりましたよね。開発コストがオープンAIなどに比べて10分の1以下であったことに皆ショックを受けましたが、これは起きるべくして起きたことです。日本がオイルショックの時にエネルギー効率の高い製品を開発したのと一緒で、中国は、制限をかけられているからこそ、難しい環境でどうにかしようというイノベーションが働くのです。 ──新たな地政学リスクについてはどうお考えですか。 エミン 日本にとっての一番大きな地政学的リスクは「台湾有事」です。それ以外のリスクは日本にとってさほど重要ではなく、相場に影響はないと思った方がいいでしょう。 台湾有事も、必ずしも全面戦争になるとは限らず、海上封鎖などのエスカレーションが段階的に起きてくる可能性があります。そうなれば中国に対する経済制裁などが置かれ、経済ショックが起きますが、いつ起こるかの予想はできません。 私は以前から、防衛関連は投資すべきだと言ってきました。三菱重工や川崎重工が割安な時に買った方がいいと言い、実際に三菱重工の株価は12倍になりました。色々やり方はありますが、しかしながら100%のリスクヘッジは不可能です。 聞き手:佐藤友香(『クーリエ・ジャポン』キャスター兼編集者)
COURRiER Japon