きらきらになりたかった
キャリーケースを引き摺る音がAirPodsを貫通する0時過ぎ。
もっとバカみたいに電子音まみれの曲を聴いていたらと今日も同じことを思った。そうしたらきっと、持ち手がマイクの太さにはほんの少し到達してないなとか、アイドル故に浮かんでしまう終着点のない靄を生むことはなかった気がするから。
今日に至るまで何度も書こうとしてきた文がある。
始まりは決まって「突然のお知らせとなって」に続く。私からしてみれば突然なんて部分はひとつもない。
それでも今日まで何度も何度も、書いては消してを繰り返してきたのと同じ数だけ、脱退発表をしなくても良い理由を探しながらアイドルをしてきた。だって私は辞めたくない。辞めたくないんだよ。
私はこの世界に長く身を置きすぎてしまった。
誰でもアイドルになれる時代だとよく言うけれど、身を置いていながらも飽和状態に思える。それ故に、私もちょっぴり居座りすぎてしまったと、珍しく芽生えた当事者意識が苦い。
続けることはかっこよくて、凄いことで。そんなのわかってる。続けることでしか守れないこともたくさんあって、そんなのもわかってるんだよ。
それでもやっぱり私にとっては途中で投げ出すことよりも、続けることの方が簡単に思えた。今までずっとそう生きてきたから。
そう思えると、私が終わりの美学に囚われて逃げられなくなってしまうことなんて、必然だったのかもしれない。
数え切れないほどのアイドルが真っ直ぐに夢を見て脇目も降らず走ってゆけるこの現代に、終幕を自らの手で選ぶことのできたアイドルはどのくらいいるのだろう。
そう思った途端にこれまでの正反対に舵を切ってしまった私は、元の航路に戻れなくなった。アイドルは散ることができるからかっこいいと思ってしまってやまない。私の好きなアイドルは儚くて本当に消えてしまうアイドルで、アイドルでしかなくて、その先なんて、なくて。それがどうしても欲しくなった。欲しくて欲しくて欲しくて、選んだ。さよならを選んだ。
だけどやっぱり辞めたくなんてない。
私にはアイドルしかなくて、他に大切だと思えるものもなくて、他に生きる価値になりそうなものも見当たらない。そのくらいにアイドルが好きで大好きで、アイドルでいる自分のことだけはちょっとだけ大事にしてあげたくなる日々を過ごさせてもらってきた。
だからずっと探してたの。消えなくて良い理由を。
売れて、大きくなったら、終わりが来る確率は下がる。
ちょっときれいなおばちゃんになったって、歌って踊ることができる。売れたら。売れたらの話。
だから私は売れたかった。辞める理由が無くても続ける意義のあるフェーズにいきたかった。そしたらずっと一緒にいられるから。ずっと一緒がいいよ。どこにもいきたくないしどこにもいってほしくない、ずっとだよ。
辞めたいと告げた年の瀬から、辞めたくない理由を探し始めて、辞めたくない理由ができたら良いなと思ってSNSを動かすとかもしちゃって。何かの間違いで何かの間違いが起こったらいいのにな。そしたら私こんな消えるなんて選択しないから。毎日そう思っていた。辞めたいって思うよりも続けて良いんだって認められる何かをずっとずっとずっっっっと手に入れたかった。
それでも今日が来て、私の脱退発表は地下アイドルシーンのよくある小さな出来事のひとつになった。最後の足掻きさえも正しい方向に力を割けなかった私がそこに座ってしまったのは、途中で終わることの方がかっこいいやって邪念を抱いてしまったからに違いない。ごめんなさい。
きみがこれからの話をしてくれる度に、これからがあることを大前提に話をしてくれる度に、次はないんだよって言いかけた。言って楽になりたかった。春も夏も秋も、もう2度と一緒に過ごせないことを知っているのは私だけで、ねえそんな来年の生誕はとか来年の浴衣はとか言わないでよって思ってた。たくさん泣いて帰った。お誕生日も浴衣も次はないのに、泣くことだけは次もあるってわかること、ごめんなさい以外思えそうになかった。
私のアイドル人生にもう次の季節はこない。
積もらない雪を見て何かを伝えたくなっても、メジロがあの日の白椿に止まって聴いてほしい曲が出来ても、私はきみに伝えることができない。その時のことを少しばかり想像できてしまうのが、居座りすぎていたという感想に辿り着く。皮肉だよ。私以外誰が笑ってくれると言うの。
散り際が一番美しいのかもしれない。だったら今日までの、ずっとを願ってやまなかった日々たちは報われない。もう何がどうなってくれたら正解なのかもわからない。
それでも選んだの。さよならをすることを、選んだの。
結局私は最後までお人形さんになんてなれなかった。
なりたかった。
お人形さんはきっと、終わることが綺麗だなんて発想はないんだろうな。だって存在するだけできらきらなんだもん。
かわいいが先頭にきて、歌とダンスと、キャラと、そういうのが後からついてくるような。でも結局最後にはかわいいでしか言い表せることのできないような、きらきらのアイドルに、なりたかった。
きらきらが、ほしかった。
自分でも認めざるを得ないほどの眩しさが欲しかった。
きらきらになりたいと思って走るんじゃなくて、きらきらを守るために走りたかった。
なりたかったって思い続けた私に、最後にアイドルとしてのとびきりの価値を付けて幕を閉じます。不可侵領域になってキラキラのまま、今度こそ、自分の手だけで剥製にするの。
ここまで読んでくれてありがとう。
残りの時間糸生りとを全うしますなんて言わないよ。だって今も昔ももうずっと全うしているの。どろどろでぐちゃぐちゃの糸生りとをずっとずっと全うしているの。
だから終わりが来てしまう最後の最後まで、私がどれだけ、きみとずっと一緒にいることを望み続けていたのかを伝えさせてください。だって他になにもないもん、知ってるか(、._. )、(笑)
それでは、またね。
またねって言える限り、またねって言うよ。
最後の一緒の季節が来るね。
次の次の冬からは、私のこと思い出してもらえるかな。
そんなアイドルになって、ちゃんとアイドルになって。
私は息をするのを、やめたい。


りとちゃんの言葉が大好き りとちゃんがりとちゃんでいるうちにnoteたちを読み返して、本当は何もわからないりとちゃんのことを少しわかったようなつもりになってステージ上を見つめたいと思います
読むのが怖かった。 けど読んでよかった。 大好きな、そして悪くはない現状を捨ててまで、自分で決めたことを貫き通す必要って本当にあるのかとは思う。 思うけど、それを貫き通せるような人にしか糸生りとにはなれなかったんだと思う。 どちらを選んでも何の保証もない時代。 あなたの選んだ…