正義の末路
モブが出ばる。もはやモブが主人公。
衛宮士郎と英霊エミヤについて考えたらこうなったけどやっぱり士郎はよく分からない。
※フィクションですので、いかなる団体、国も一切関係ありません
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傭兵として雇われたのは20人だった。
国籍は様々だが、1人としてこの国の人間はいない。下らないデモに付き合わされるあげく、自分達を守るためにと足りない頭でガキが雇ったらしい。
金は文句なく貰えるようなので参加した。大層にも何度も戦線をくぐり抜けた奴しか雇っていないという。
どうせ半年かそこらの仕事だ。適当にやればすぐに終わる。
集めれた雑居ビルの一室で汚い字でプラカードを書いている雇い主を横目に溜め息をつく。
金持ちのお坊ちゃんの思考は本当にわからない。ずっとお高く留まってりゃあ、こんな汚くて狭い場所で浮浪者同然の奴らと一緒にいなくて済むっていうのに。
《労働階級に救いを!》
《税金で食うブタのエサは旨いか!》
強い言葉の案を出しながら、談笑してるのは学生の集まりと変わらない。どうせそういうものの延長だろう。
このお坊ちゃんが活動に飽きたら終わりだ。
玩具のエアガンなんか持って政府の膝元で抗議をするのだという。
アホらしい。
他の傭兵もそんな顔をしていた。
赤毛の男はその態度を隠す素振りも見せず、娼館でヤった女の話をしてる。俺でもさすがにそこまでの態度はしない。解雇されたらたまったもんじゃねぇからな。
赤銅に白髪が混じった髪に、褐色の肌の男は、雇い主から声を掛けられていた。奴は雇い主のお気に入りらしい。日本人のようで、ずいぶんと若いように思える。
男が一人一人に声を掛けていく。そろそろ行くらしい。
吸いかけの煙草を足で消す。
「なあ、あんた煙草はいいが、床で消すのはやめろよ。火事になったらどうするんだ。」赤銅の男は声を掛けてくる。
最初に掛ける言葉がそれか?自己紹介じゃないのか?と笑えば律儀に名前を言ってきた。日本人らしいね、と皮肉を返せば
「そうかな?」
と照れたような素振りを見せる。
ずいぶんと人が良いバカらしい。
場所へ向かいながら少し話をした。
「雇い主の彼とは隣国で会ったんだ。そこでこの国の事情を知ってな。暴力以外で国を変えれるなら、俺も協力したいと思ったんだ。」
綺麗事はいいよ。報酬で釣られたんだろと聞けば
「たぶんあんた達がもらってる分の半分も貰ってないよ。あんた達には悪いけど傭兵に払いすぎだと言ったのも、俺だ。悪いな。」
苦々しい顔で告げてきた。
努力虚しく俺達は相当良い額で雇われたぜと宣言すれば。
「まあ、最終的に決めるのは彼だからな。そのことについてはもう何も思ってないさ。」
と言ってきた。不思議なやつ。傭兵らしさの欠片もなかった。
最初のデモは大失敗だった。
プラカードを掲げた瞬間に軍人が飛びかかってきて殴られた。労働階級に関しては、それこそ容赦のない暴力だった。
俺は雇い主とその周りにいた参加者を連れ、早々にその場を離れた。
赤毛の男は軍人に殴りかかっていたらしい。
雑居ビルに戻る。参加者の一部が戻ってきてない。
主は急に慌て始め、会場に戻ると言い出した。
傭兵仲間が、今戻ったら殺されかねないし、戻ってくるときに後を付けられたら終わりだと説得している。
場が荒れ始めたときに、ガチャと扉が開く音がした。
相手が武器を持っていたら、ひとたまりもなく制圧されるだろう。
エアガンを握り締める。心許ない。
入ってきたのは
赤毛の男を背負い、血だらけの参加者と傭兵を連れたあの日本人だった。
歓喜の声が上がる。
人の良いバカは、殴り掛かってボコボコにされた赤毛を回収し、一方的な暴力に震えていた参加者を、他の傭兵と共に催涙弾を使って救出したらしい。
正直、一人くらい死人が出てもおかしくなかったが、とりあえず全員無事だった。
それもこれもあの赤銅の男が全員余さずここに連れてきたおかげだ。
皆が男に駆け寄っていくが、
「怪我人がたくさいる。とりあえず病院に連れていくのを手伝ってくれ。」
と自ら祝福ムードに水を差した。
それでしゃんとしたのか、傭兵はテキパキと怪我人を抱えてビルを出ていった。
死人はいなかったが1人失明、1人二度と立てなくなった人間が出た。
病院の屋上で煙草をふかす。
失明したのは子どもだったらしい。さすがに同情する。
やりきれないなとは思うが、これが現実だ。今度はエアガンなんかじゃなくてもう少し抵抗できる物を持ってないとダメだと思った。
「おい」
振り向くと赤毛と日本人がいた。
「大丈夫か?」
問題ない、そっちは?
「ああ、でももう少しなんとかならなかったかなって自分で思ってる。」
赤銅の男は失意に満ちた顔で呟いた。赤毛は男の背中を勢いよく叩く。
「お前が凹んでどうする!あんたが来てくれなきゃ俺もアイツらも死んでたんだ!胸張れよ!」
その通りだ、あんたがいなきゃ死人が出てたと慰める。
「こんないきなり暴力を振るわれるとは思ってなかったんだ。俺の想定が甘かった。」
もっとできることがあったと後悔している様子だった。
「それに、アンタがあの軍人を止めてくれたお蔭であの子は死ななかったんだ。あれはアンタが助けたんだよ。」
と日本人は赤毛に声を掛ける。赤毛も満更でもなさそうに
「こんだけボロボロだと格好つかねぇな」
と笑った。
思わず吹き出す。包帯だらけのそれじゃあ、みっともないことこの上ない。
「こいつ笑いやがったな、この野郎!」
「まあまあ。そうカッカすんなって。」
赤銅は口元を上げた。
2度目からはライオットシールドを装備するようになった。
金が有り余ってたってそんなもんそうそう手に入らねぇのに、どこから仕入れたのか。よくわからんが、結構地位が高い強力な支援者はいるようだった。
催涙弾も携帯するようになった。
仲間の身を守るのにも必要だ。
デモをする度に相手の軍人どもは人数を増やしていき、拳銃まで所持するようになった。だが、こっちまで銃を持てばそれこそ泥沼だ。誰が言ったか忘れたが非暴力不服従だ。
傭兵は参加者を守るためにも衝突の前線に行くようになった。特にあの日本人と赤毛は最前線にいる。
今日も催涙弾の嵐と銃声が鳴り響いていた。盾はいくつも壊れ、対抗のために持っていた木刀もほとんどが折れている。
赤銅の男が持ってる盾と木刀は何故かいつも壊れなかった。お前は武器に愛されてんだなと言えば、
「なんでさ。ただ、ちょっと使い方が上手いだけだと思うぞ。」
と返された。
怪我人は衝突の度に増えていく。この前は軍人に撃たれた人間まで出てしまった。今は意識不明だ。
赤毛はこの国の惨状にひどく怒りを持っている様子だ。どうやら奴の国でも同じような状況らしい。
最初はただの雇われだったが、俺もこの国のやり方は間違っていると思い始めていた。
いつの間にか恒例になった決起集会という名の飲みも、熱い舌戦が行われた。
どうすればこの国は良くなるか。次のデモではどこを歩いて、何を主張するか。次の装備はどうするか。
もうお坊ちゃんだなんて笑うのはやめた。アイツは相当肝が据わってる。
「相手が銃を撃つからと言ってこっちが同じことをすれば、自分達の主張は通らなくなってしまう。」
主の言い分は最もだ。
「だが、木刀で反撃するのも限界がある。他の手段も考えないと」
赤毛は苦々しく言った。
催涙弾を増やすにも限界があると、俺も意見を言う。
「一番の目標は政府要人と話し合いの場を設けることだ。デモを起こすことが目的じゃない。」
それはそうだが、デモの最中に死人が出たらどうするんだ。こっちだって対抗しないとと言えば。
「俺が絶対に死人は出させない。絶対だ。」と赤銅は力強く言った。
確かにこいつは一番酷い怪我をしたやつに駆け寄っていくことが多かった。そのお蔭なのか、死んでてもおかしくないヤツが無事生きながらえたことが多々ある。
「お前は、この戦争の女神かもな?」
と主は笑った。
「だったら寂しい俺のことも慰めてくれないか?」と厭らしい笑みを浮かべながら赤毛が言う。
「な……!なんでさ!!」
と真っ赤な顔になったアイツに俺達は笑い転げた。
デモを繰り返す度に俺達の結束は高まっていった。
そして、デモの数を数えるのも面倒になった頃。
政府からデモ隊に向けて通告が出た。デモ活動を中止すれば、話し合いの場を設けると。
「これは、転機だ!彼等がやっと耳を傾けてくれる。」
「いやいやマスターよぉ、その考えは甘いんじゃねえか?デモやめた瞬間に約束反故にされかねないだろ。」
「でも、通告はもう報道されてるんだろう?反故にしたらそれこそ国民から批判が来る」
それもそうだが、アイツらは弁が立つからな。報道だって言いくるめられる可能性だってあるだろう、と告げる
意見は分かれた。赤毛と俺はデモ中止に反対だ。
だが、主と赤銅は対話に賭けている様子だった。
「それこそデモを中止している間に、この場所がバレたらどうするんだよ。」
「場所は変えれば良い。連絡方法は以前のままなら、参加者が散らばっても連絡が取れる。」
逮捕されてるやつらが秘密を漏らす可能性だってあるんじゃないか。
「それが気になるなら連絡方法を変えればいい。この機会を逃したらだめだ。」
「アンタが甘いのはいつもだが、今回はやめろよな!?おい!敵の連中が怪我したらそっち行っちまうしよ?お前はスパイとかじゃないねぇだろうな!?」
赤毛は頭に血が上ってるらしく赤銅の胸ぐらをつかむ。慌てて止めて引き剥がす。
そんなわけないだろうと言えば男は口を開いた。
「俺は皆が納得する結果がほしいだけだ。そのチャンスがここまで来てるのに逃したくない。」
おまえ、もうちょっと言い方ないのかよ?お前もスパイじゃないかってそれはないだろ?
「悪かった。まあ、最終的に決めるのはマスターだ。あんたなら正しい判断してくれると思ってるよ。」
睨み付けるように主を見た赤毛は、そのまま席を立ってどこかに行ってしまった。
アンタなんでそんなにいつも冷静なんだよ。スパイって言われたんだぞ?否定しないのか?
と聞けば
「否定して信じてくれるのか?そんなことするよりちゃんと話をするのが先だろう。」
と返された。
俺はこいつがわからない。仲間に疑われてるんだぞ。涼しい顔でいられるのはなぜだ。
仲間に囲まれて談笑してるときに強く思ってた違和感。ああ、これだ。
こいつ。
笑ってないんだ。
心のどこかで信用できないと思ってた。その違和感がいま、噴出しようとしている。
お前はいったい、誰のためにここにいるんだ。
そう言ってやろうとした瞬間に
「デモは中止だ。彼等を信じてみよう」
と主が言った。
赤毛はその日戻ってこなかった。
赤銅は外の空気を吸ってくると言って屋上から戻ってこない。
問い詰めてやろうとあいつのもとに向かった。
あいつは空を見上げていた。
何してるんだ?と聞けば
「置いてきてしまった人のことを考えてる」
と答えた。ずいぶん遠くに来ちゃったなとぼやいた。
お前、なんでこんな仕事してるんだ?俺はお前がわからんと言えば、
「よく言われるよ。でも俺は皆が泣かなくて済む世界になってほしいんだ。そのためなら俺の命くらい捧げられる」
意味がわからん。そんな具体性のない目標でよく生きていけるな、と返せば
「あんた、俺の知り合いに少し似てるな。そいつに同じようなこと言われたよ。だからアンタのこと好きなんだな」と言われた。
「あんたにも大切なものがあるんだろ。なんとなくわかるよ。きっとだから俺なんかのことも心配してくれるんだな。」
真っ直ぐ見つめられた。言葉が出ない。
「ありがとう」
何も返せないままアイツに背を向けた。