【五次】勝手に書かせていただきました【金弓】
素敵な漫画に影響を受けて書かせていただきました。元になるネタは、水田(user/387814)さまのこちら(illust/35566527)の作品です。金弓でちゅっちゅ。短い話ですが水田さまに捧げさせていただきます。イメージぶち壊しで申し訳ないです。
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触れられた、というよりは奪われた、というのがきっと正しかった。
「ん……むっ」
何もかも持ち得て、高らかに笑うような男からのくちづけ。それは貪るようで、息が出来ない。
侵入してきた温度に、心臓がどくりと高鳴った。
――――舌を。
入れられて、いる!
指先は、腕は縋るように男の腕を掴んで突き放そうとしない。どうして。
自分に問いかけてみても答えなんかない。
正直、容量がいっぱいだった。金色の男に満たされて、溢れて、こぼれて、溺れていた。
ぬるぬると舌先が遊ぶ。余裕綽々な相手が俄かに憎たらしくなる。
くそっ、とらしくない言葉で罵ろうとしても余裕なんかない。ただ、ただ翻弄されて。
力で負ければ、心も負けた。どくん。また、心臓が鼓動する。
やわやわと、ぬるぬると、時には激しく、次の瞬間には確かめるように。
何を確かめようとしているのだろう。こんな自分の何を。
他者への、黄金の男への苛立ちは愛撫される度にすっかり失せて、自己嫌悪がかすかに頭を擡げた。
なのに、それなのに。
それさえ溶かそうと、男の舌は口内で蠢く。
歯列をなぞり、上顎を舐めて、舌を絡めて、唾液を送り込み、喉でさえ奪おうと。
……それだけやっても決して下品ではないことに驚いた。
品格がある、というのか。男の持つスキルであるカリスマ。
本人が神々を嫌うためダウンしてはいるが、それでも余りに余るものだった。
だって、視界がくらりと。
歪んで、溶けていくのだ。
負けそうになる。体が受け入れそうに、心まで追従しそうに、
ああ、もう、駄目だ。
なんて。
「……ぷはっ」
なんて思っていたら、仕掛けてきた時と同じくらい唐突に唇は離れていった。
頬が熱い。くちづけだけでどれだけ高揚したというのだろう。興奮したというのだろう。
はしたない。何かを目の前の男に引き出され、荒々しく奪われた。
ついっ、と舌と舌とが糸で繋がれてきらめく。途中でぷつりと切れて床に落ちていった。
あつい。
ひどく、からだが、こころが、すべてが、あつくて、とろけそうで、もうとっくにとろけていて。
目の前の体に縋り付きたいと全部が訴えて、
「貴様の飯はなかなか悪くないからな。貴様自身の味はどうかと思ったが……」
自らの唇を舌でなめずり。
「まぁまぁといったところか」
ななな……!
なんてことを言うのだ!
自身の味!?そんなもののために、その、くちづけを!?
混乱を極める思考、弾け飛びそうになる羞恥、蕩けているものの未だ残っている理性。
それらが眩暈がするほどぐるぐる自身の中を回る。ミックスジュースのようだ。ぐちゃぐちゃになって撹拌されて、目の前の男に、
飲まれて。
喉を流れて、滑り落ちて、音を立ててごくん、と、
ぞくん、とした。
考えるだけで解放された時に収まりかけた鼓動が再度駆動を始める。
おかしい。
こんな自分は、おかしい。
目の前の男に奪われつくすのを想像するだなんて。
飲み下されて、なくなって、腹の底に収まって、男が愉悦の表情を浮かべる。
そんな光景を想像して、本当に一瞬だけだけど息が出来なくなった。
「まぁこの程度の味なら」
男が、何か言っている。
「小腹が空いた時にでも食べてやってもかまわんぞ?」
何を。
言っているんだ、この、たわけは……っ!
「い……」
みっともないほど、声が震えて。
食われてたまるか、と意識が逆らおうとして、それでもくちづけの感触を思い出して。
どうにもならない。だから体を無理矢理動かす。口を、足を、男に向かい。
「いらんわ! たわけっ!!」
ドアを開け、外に向けて、出て行け、とその体を蹴り飛ばす。
あっけなく男の体は外へポイっと射出され、まさにアーチャーのクラスそのものだった。自身が射出武器的な意味で。
ばたん、とドアを閉める。背中で押し込むようにして、侵入を防いで。
フェイカー、などと呼ぶ声がしたが無視だ。やがて気配は玄関前でうろうろしていたが、無駄なことなのだと知るとさっさとその場を離れていった。
「……はあ」
ドアを背にしてずるずると滑り落ちる。
「くそ」
らしくない言葉を吐いた。
顔が、熱くて熱くてどうしようもなかった。
生娘でもあるまいし、くちづけでこんなに反応してしまうのはどうなんだ……。
「最悪、だ」
吐いた言葉を、聞く者が誰もいなかったのは救いだった。
後日。
マスターである彼女に“英雄王を餌付けしていないか”“どこかの野良犬といい”と追究されたが、名誉のために黙っておいた。
まあ、その。
ふたりともしょっちゅう出入りしてくるのだから、どうせいつかはばれるのだろうけど。
……鉢合わせしないでほしい、と願うのが唯一自分に出来ることだった。