二日酔い
やがて……。
「ヴォフ! 引き分け シオン!」
「わかっているヒック!」
グビグビっとワニ男が飲み。
「はい。元康様!」
「うおおおお! ですぞ!」
俺もユキちゃんから勧められて酒を飲み干しますぞ。
「フ……どうだ!」
「やり、ましたぞ」
うっぷ……目がぐるぐる回るのですぞ……。
「ヴォッフー! 次のしょ、う、しょうぶ……」
ヴォルフも泥酔して呂律が怪しい所で酒を飲み干して次の話をするのですが、ワニ男は立ったまま動く様子が無いのですぞ。
「ヴォフ?」
フリフリとヴォルフはワニ男の顔の前で手を振りますが、ワニ男はピクリとも動きませんな。
ジョッキを持ったまま固まってますぞ。
「ヴォフ! しょろり!」
ヴォルフが勝どきの声を上げましたぞ。勝利と言おうとして言えて無いのですぞ。
間違いなく泥酔して潰れる直前なのですぞ。
「あ、あとはヒック……りゃりの……勇者、だけ」
ヴォルフがユラっとしながら俺に視線を向けますが、俺の方は視界がぐるぐると回ってころりと転がって起き上がれないのですぞ。
くう……意識はしっかりしているつもりなのにぐるぐるなのですぞ。
状況は理解、出来ている。はずなのに……ううう。
「う、ううう」
「ヴォフ」
そのまま勝利宣言を告げようとするヴォルフ、ま、まだ俺は負けてないのですぞ。
ここで負けたらいけないのですぞ。
ヴォルフは、転がって藻掻く俺へと視線を向けましたな。
「まだ……俺は、やれりゅのでしゅ、ぞ」
「ヴォッフッフ。これを食らって平気なりゃまだつづきゅ」
呂律がおかしいですぞ!
勝ち誇るななのですぞ。
くうう……槍を出してブリューナクを……いや、酔いを解消する薬を急いで服用をしないといけないのですぞ。
『力の根源たるツメの勇者が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、彼の者の姿を変えよ』
「フェアリー……うっぷ、モーフ」
「な――!?」
ボフっとヴォルフが俺にフェアリーモーフをぶちかましたのですぞ。
コロンと俺はウサウニーになってしまいました。
「ううう……」
く……対抗する余裕がありませんでしたぞ。
いえ、出来るはずなのに酔って上手く頭が回らないですし力が入らないのですぞ。
「元康様……」
ユキちゃんが脱げた服から這い出る俺を心配そうに見ておりますぞ。
「ヴォフフー! ほら、早く戻る」
「ぐにゅぬ……でしゅ、ぞおおおお……」
必死に立ち上がろうと思うのですが腰に力が入りませんぞ。
そうして立ち上がろうとしているとむんずっとヴォルフが俺の首根っこを掴むのですぞ。
「な、なにをしゅるのでしゅぞ……」
「元康様!?」
「ヴォッフ」
そこから徐にヴォルフは俺をユキちゃんに渡しましたぞ。
「俺の、勝ち! 持ち帰って好きにする」
さらにそこから親指まで立ててユキちゃんの背中を何故か押しますぞ。
「……元康様、残念ながら今夜の勝負は負けのようですわ」
「ううう……」
まだですぞ。ユキちゃん! ここで引いてはいけないのですぞ。
まだ俺はやれる! だから立たせて欲しいのですぞ。
そう言おうと口を開くのですが声が全然でないで目が回り続けるのですぞ。
ぐうう……パンダぁああああああああ!
「すー……」
と、パンダは酔いつぶれていないのにお義父さんを膝に乗せて優しく撫でる動作のまま寝てますぞ。
おのれぇえええええ! この場で優勝できる力を持ちながら何を悠長にしているのですかな?
「さ、元康様。今夜は撤退ですわ」
立ち上がったユキちゃんがそのまま俺を抱えて部屋を出ようとしますぞ。
「ううう……ぬぬ……でしゅ……ぞぉおお」
嫌ですぞ嫌ですぞ。ユキちゃん、俺をどこへ連れて行くのですぞー!
「ヴォッフー!」
ヴォルフは既に寝ているお義父さんを抱えてベッドに運んで行き、寝かせた所で勝利の拳を突き上げてましたぞ。
そうして、ユキちゃんに抱えられてお義父さん達が見えなくなったのですぞ。
ううう……ら、ライバルにお義父さんが奪われたような感覚が脳裏を過ると同時に、プチンと俺の意識が遠くなって行ったのでした。
「は!?」
次に気づいた時はユキちゃんの寝床でウサウニーの姿で羽毛の中にくるまって俺は寝ていたのですぞ。
起き上がってモゾモゾとユキちゃんの羽毛から這い出て外を見ると既に日が大分高くまで登っているのと同時に、頭が凄まじくガンガンと痛みを放っていたのでしたぞ……。
「元康様! おはようございますですわ!」
起きた俺に反応してキラキラのユキちゃんが元気よく声を掛けて来たのですぞ。
「おはようですぞ」
ううう、頭が痛い……二日酔いの薬を作るのは中々大変なのですぞ。
回復魔法を使っても中々治らないのが二日酔いなのですな。
魔法の詠唱にも大きく影響が出てしまうのですぞ。
ですが、ここで引いてはいけないのですぞ。
俺は急いで元の姿に戻り、お義父さんの元へと駆けつけようとヴォルフの城の中を進んで行きますぞ。
すると……。
「あ、元康くんおはよー。結構遅かったね。ご飯でも食べる?」
お義父さんが下層の広間でパンダやウサギ男、ワニ男、ゾウ、そしてヴォルフと一緒に何やら地図を広げて話をしている所に遭遇しましたぞ。
「く……」
「うううう……」
「ヴォフう……」
「元康くんも含めてみんな飲み過ぎだよ」
呆れるようにお義父さんは二日酔いで苦しむ俺たちを注意してましたぞ。
「何を張り合っていたのかわかりませんが……」
ゾウは呆れるように言いますぞ。ちなみに既にコウと一緒ですな。
ぼんやりと朝にコウがゾウの所に行くと声がしたような気がしますぞ。
「おと、うさん。何も……無かったのですかな?」
「何もって何が?」
よくわかってないというかのような顔でお義父さんは仰いましたぞ。
あの後、いったい何があったのか、ヴォルフに問い詰めないといけないですぞ。
と、ヴォルフに視線を向けると、当人のヴォルフが非常に悔し気な顔をしてますな。
お? もしやパンダが阻止したのですかな?
「頑張って勝ったのに、何も……」
ポツリと青ざめた顔でヴォルフは呟いてましたぞ。
「ああ、なんかヴォルフが拳を突き上げて俺の足の方で寝転がってたね。シオンは立ったままで、テオも寝転がって居たね。随分とみんな個性的な寝相で酔い潰れたみたいだよ」
「そ、そうなのですな」
「で、ラーサさんが隣で寝てたよ? なんかこっちを見てたような気がして、可愛いからそのまま手を掴んで寝直した気がする」
「パンダ?」
「あん? 可愛い言うな。トイレに目が覚めて行って帰って来たらこいつの言う通りにこいつ等寝てたさね。で、こいつの寝顔を見て部屋に帰るかと思ったらアタイの手を掴んで離さなかったから、しょうがないからそのまま隣で寝ていただけさね。ふわああ……」
お義父さんの寝顔を確認した所でお義父さんが寝ぼけてパンダの手を握ったそうですぞ。
そこから手が離れなくて止む無くパンダはお義父さんの隣で寝たらしいですな。
寝て無い様なあくびですぞ! パンダ!
問い詰めた所、ヴォルフは足元で転がっていて起きなかったと白状しましたな。
寝ぼけたお義父さんに抱き着かれて動けなくなったとも吐きましたぞ。抱き枕にされたのだそうですな。
満更でもない様子でしたぞ。
思ったより役に立ったようですな。もっと踏み込めですぞ。
「元康くんはユキちゃんと帰っちゃったって所?」
「で、ですぞ!」
ユキちゃんが返事をする前に肯定しますぞ。
事もあろうにヴォルフにウサウニーにされて酔い潰れて動けなくなった所を運ばれた等と言う訳にはいきませんからな。
「酒の強さで張り合うのは結構だけどさ、次の日にこんなになっちゃうんだから程々にね」
何もわかっていないお義父さんが注意してきますぞ。
「……ええ、そうですね。ヴォルフ」
「ああ、一応バスローブで寝る事は出来たみたいだな」
「ヴウウウ……まだまだ」
「諦めが悪いですね……う……」
それを俺たちは黙ってうなずくしかないのですな。
「まあ、賑やかに友好を育む事は出来たみたいで良いけどね」
俺は全然酔わないみたいだからねー。
と、ちょっと疎外感を持ったお義父さんが印象的な出来事でしたぞ。
尚……なんかユキちゃんがとても機嫌が良かったのですな。
そんなこんなでヴォルフの実家で数日過ごしていた所で、ヴォルフの元に何やら依頼がやって来たみたいですぞ。