趣味
「そうなのですかな?」
「……うん。具体的にはターゲットがね。テオは知ってるよね」
「ええ、そうですね。具体的にはとある帽子をかぶった方を模した的がありまして、射撃訓練の際にターゲットとして動かされてますよ」
「そんな事を樹はしているのですな。まあ樹はよくターゲットを量産して射撃の練習はしてましたぞ」
何処から確保したのか銃撃用の的を作って練習に使ってましたな。
「しかし帽子ですかな? どんな帽子なのでしょうな?」
帽子と限定するとはこのループの樹は変わってますからな。
「まったくわかってませんよ」
「こういう所、元康くんは鈍いからなぁ……」
「わかりそうなもんだがな」
何やらお義父さん達がそんな話をしながら豚の写真を的にしたのを咎めて辞めさせていたのですぞ。
「ダーツ系の遊びだったね。シルトヴェルトの貴族の遊びにもあるんだね」
「ヴォフ、一応ある」
「こういうのも嗜みなのかな?」
オシャレではあるもんねーとお義父さんは仰いますぞ。
「元康くんも酒場とかでダーツとかやってそうだよね」
「ダーツですかな? そこまでやった事はないですな」
思ったよりは無いですぞ。
ゲームセンターとかで置いてはありましたが豚共の中にそこまでダーツに興味があった豚は居ましたかな?
「お義父さんはどうですかな?」
「俺も少し友達とやった事があるくらいでそこまではね。まあ当然ながら樹は得意だろうなー。ラーサさんは?」
「やるけど投げナイフの練習さね」
パンダが面倒そうに食器に使っていたナイフを器用に飛ばして的に刺しますぞ。
「サーカスでもやってたね。まあ刃物と的さえあれば出来る遊びだからどこでも似たようなのは見るけどね」
遊びと仕事を兼ねたという奴ですな。
「少しここで厄介になるしヴォルフ、この辺りでメジャーな趣味って何だろ? やっぱ貴族の趣味って庭、狩猟、馬術辺り?」
「ヴォフー? 確かに屋敷内の庭管理を趣味にしてる貴族も多い。狩猟もやる人多い」
「まあ亜人獣人の国だとそこまで差は無いのかな? あ、でも肉食草食の種族で趣味は変わるか。結構変わった植物多いらしいし」
前にも似たような話をしたようなやり取りですぞ。
「馬術……フィロリアル様をお披露目ですな! ユキちゃん!」
「はいですわー!」
俺のお願いでユキちゃんがフィロリアル姿で優雅に歩調を見せて下さいますぞ。
どうですかな?
純白の煌めくユキちゃんなのですぞ。
その歩調の一歩一歩が輝いて見えるモデルのような歩きなのですぞ。
どうですかな? どこぞの馬やドラゴン、グリフィン、その他乗り物枠の魔物なんぞと比べるまでもないのですぞ。
「なんか元康くんが自慢のユキちゃんを見ろとばかりに貴族たちに見せてるけど……まあそりゃあユキちゃん、サラブレットらしいもんね」
貴族たちがそんなユキちゃんを見て唸ってますぞ。
「足は速そうだが……畑の開墾に向いてるか?」
「如何に荷物を運ぶのが重要なのだが……勇者が育てたフィロリアル達はとても頑丈だと聞くぞ」
「さっきそこで巨漢の獣人を背負ってスタスタと歩いていた奴の方が正直欲しいな。あの黄色い方だ」
むっ……何やらゾウとコウの事を言っている気がしますぞ。
「この辺りだと競走馬より農耕馬……ばんえい競馬じゃないけど頑丈で力持ちの方が望まれそうだね」
「ヴォフ、早さより持久力が求められるのは間違いない」
「うちの所だと大柄の子が適性ある事になるけど……ルナちゃん辺りがそこかな?」
ルナちゃんは大柄なのがコンプレックスな子ですな。
体格で言えば確かにお義父さん達の言う通り早さより馬力タイプですぞ。
「ぐぬぬ! ユキはどっちもありますわー!」
ユキちゃんのプライドが痛く刺激されたようで、叫んでおられますぞ。
そうですぞ!
ユキちゃんはどっちも十分持っておりますぞ。
「それより喋るフィロリアルだ! さすが勇者様の育てたフィロリアルだな」
おお! っと貴族たちが拍手をしておりました。
「何を拍手しているのですわ! ユキは! 何でも出来ますわー! コウ、勝負ですわよー」
「えー? どうしたのユキー?」
ゾウの近くでご飯を食べてたコウが絡んできたユキちゃんに首を傾げてましたぞ。
「勝負ですわ! 走りますわよ!」
「コウ、エルメロとパーティー楽しんでるから後でね」
「まあまあユキちゃん落ち着いて、元康くんもユキちゃんを宥めてね」
「わかりましたぞ。ユキちゃん、大丈夫なのですぞ。ユキちゃんはみんなのリーダーを務める立派なフィロリアル様ですからな。レースでは間違いなく一番ですぞ」
「元康様! わかりましたわー!」
ユキちゃんがとても機嫌よく答えて下さいますぞ。
「あの掌返しの速度も中々ですよね。さすがは速度重視といった所でしょうか」
「シッ! あんまり言うと反らせなくなるでしょ」
ちなみに最初の世界の虎娘もお義父さん相手だとユキちゃんの様に切り替えが早かったですな。
「馬術も一応この辺りだと趣味に入るのか」
「ヴォフ、移動に便利だけど重要度はそこまで……自分たちでも問題ない」
「そこも人種によるか……まあ、本気で走る獣人とか結構早いもんね。最近じゃテオとかも足が速いし」
「フィロリアル達ほどじゃないですよ?」
「まあうちの所だとね。なるほど……狩猟とかも獣人だと個人能力とかに影響があるから魔物を狩るのも実質趣味の面もあるか」
「ヴォッフー。うちは結構、猟は得意で領民に振舞うヴォフ」
うんうんとお義父さんは頷いてますぞ。
「来た直後にした話題じゃないけど人間を放って狩るとかやってたりしなくて良かったよ」
とお義父さんが言った直後、ヴォルフやパンダ、ゾウは顔を反らしますぞ。
「素直に答えれば……趣味の悪い貴族が非合法でやってるという話はある。ヴォフ」
「理解できない趣味だねぇ。そんな事して何になるのかわからないよ」
「……うちの方の地域だと多いそうです」
「ああ……そうなんだね。樹に見せたらこっちへの願望とか覚めるかな?」
お義父さんがちょっと切なそうな顔になっておりますぞ。
「まあ……正直、シルドフリーデンだと人種関係なく弱者を閉じ込めて狩る、しかも銃器で狩猟するって話があるみたいで潰してましたよ。あの人」
闇が深いなーとお義父さんが小声で仰いました。
「……既にやってるのか。せめて魔物相手にして欲しいね」
「基本は野生の魔物でやるべき。ヴォフ」
「とはいえ貴族の狩猟ってどうなんだって代物あるもんな。俺の方の世界でもキツネ狩りってのがあってさ」
「ヴォフ、それは興味ある。どう違う?」
ヴォルフが首を傾げますぞ。
「ああ、西洋の方の狩猟だと既に捕まえていたキツネを放って、それを狩るらしいよ。銃器の使用はダメなんだったっかな? 猟犬を何匹も放ってね」
思えば結構残忍な趣味だね。
かなりお金が掛かったらしいよ。と、お義父さんは説明しておりますな。
「お義父さんお義父さん、日本の方だと近いのは鷹狩とかですな。昔の日本のお金のかかった趣味が釣り、盆栽、骨董品でしたかな?」
「元康くんはそっち方面で詳しいもんね」
「ですぞ。釣りは釣り竿は元より船なんかにまで凝ると湯水の如くの消費だったとかですな。骨董品は言うまでもないでしょうな」
ふと……ライバルを捨てに行く、グラスとやらの居る世界の聖武器の勇者が確か釣り竿を使うと聞いたような?
違いましたかな?
「盆栽ねー世代が合わない趣味だけど、あれもある意味、庭系の趣味だね。そう言えばあの盆栽って地面に植えると大きく育つとか聞いた気がする。大学の教授がそんな事を言ってたかな?」
時々お義父さんが大学の教授と称して零す事がありますぞ。
どうも亡き妻の味の再現をさせられたとか……どう言った関係がお義父さんと構築されているのかわかりませんが、お義父さんに対して色々と配慮している匂いがしますな。