[社説]米国、イランを攻撃 交渉投げ出し また暴挙

 米国とイスラエルが、圧倒的な軍事力を背景に、イランに対する先制攻撃に踏み切った。

 米国とイランの間で核問題を巡る協議が続いていたその最中に、交渉による解決を放棄し、実力行使に打って出たのである。

 この攻撃によってイランの最高指導者ハメネイ師が死亡したことを米・イラン双方が明らかにした。

 トランプ米大統領は、イランが進める核・ミサイル開発の「差し迫った脅威を排除するため」だと攻撃を正当化し、「今こそ行動を起こす時だ。逃がしてはならない」とイラン国民を扇動した。

 先制攻撃の狙いは、指導層を殺害し「体制の転換」を促すことだった。

 ハメネイ師は1989年に2代目の最高指導者に選出され、35年以上にわたって国政を掌握してきた。

 ハメネイ師や革命防衛隊幹部ら指導層の「多数」が殺害されたことで、79年のイラン革命によって樹立されたイスラム共和制国家は、崩壊の危機に直面している。

 イランでは経済危機が深刻化し、昨年末から今年1月にかけて、大規模な反政府デモが起き、多くの死傷者が出た。

 このあたりの事情は、トランプ政権がベネズエラを奇襲攻撃し、マドゥロ大統領を拘束したときと、よく似ている。

 一方的な先制攻撃が国連憲章に反するのは明らかだ。他国の体制転換を狙って軍事行動を起こすことも国際法の原則に反する。

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 ロシアによるウクライナ侵攻、トランプ政権によるベネズエラへの奇襲攻撃。そして今回のイランに対する先制攻撃と最高指導者ハメネイ師の殺害。

 国際法の規範がいとも簡単に破られるようでは、国際社会の秩序は保てない。

 しかも米国とロシアは、国際社会の平和維持を担う国連安保理の常任理事国である。

 米国とイスラエルは「自衛権の行使」だと主張するが、国連が決議などの形で両国に先制攻撃の権利を与えたわけではない。

 イランの核開発については、2015年にイランと米英仏ロ中独との間で「核合意」が結ばれた。

 ところが、トランプ氏が大統領に就任した翌年の18年に、一方的に合意から離脱したいきさつがある。

 両国の間で核開発を巡る応酬が激しくなったのは、その時からだ。

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 イランは、報復のため中東の複数の米軍施設を攻撃したほか、イスラエルにも攻撃を加えた。

 戦闘はいずれやむだろうが、問題はその後のイランの国づくりである。どっちに転んでも混乱が続くのは確実だ。

 ホルムズ海峡が封鎖されたり、実質的に航行不可能な状態が続けば、原油価格を押し上げ、日本経済を直撃する恐れもある。

 高市早苗首相は、米国の暴挙に毅然(きぜん)とした姿勢を示してほしい。力による現状変更を批判してきた高市外交が試される局面だ。

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