1. f(x) = \mu(f) について これは、測度 \mu が点 x を「表現する(represents)」ということの定義そのものです。ここでの \mu(f) は、関数 f を測度 \mu によって Y 上で積分した値(\int_Y f d\mu)を意味します(資料の後半の証明でも \int_Y f d\mu という表記が使われています)。つまり、任意の線形関数 f に x を代入した値 f(x) が、f を測度 \mu で重心をとるように積分した値と一致するという意味です。
2. \mu(f) \leqq \sup f(Y) について\mu は「確率測度」であるため、Y 全体での測度の総和(重み)は 1 になります。ある関数 f を Y 上で積分した値 \mu(f) は、Y 上での f の最大値(上限である \sup f(Y))を超えることは決してありません。最大値に全体の重み 1 を掛けたものが上限となるためです。
3. \sup f(Y) \leqq \sup f(X) について X は Y を含んで膨らませた集合(閉凸包)なので、Y は X の一部です(Y \subset X)。したがって、狭い範囲 Y で探した f の上限値よりも、より広い範囲 X で探した f の上限値 \sup f(X) の方が大きい(または等しい)ことになります。
【この数式が意味する結論】 以上の連なった式により、E^* のすべての連続線形汎関数 f に対して、f(x) \leqq \sup f(X) が成り立つことが示されました。
※ここから先は提供資料外の一般的な関数解析(ハーン・バナッハの分離定理)の知識に基づく補足となりますが、もし点 x が閉凸集合 X の外側にあった場合、f(x) > \sup f(X) となるような関数 f が必ず存在してしまいます。 しかし、上記の数式によって「どんな f を持ってきても f(x) \leqq \sup f(X) になる」ことが証明されたため、「x は X に属している」と結論付けることができます。資料の該当箇所の直後でも、まさに「X は閉集合かつ凸集合なので、これから x は X に属することがわかる」と証明が締めくくられています。
特に、E^* の各 f は(Y に制限されたとき)C(Y) に属するため、\lim f(y_\beta) = \lim \int f d\mu_\beta = \int f d\mu となる。 y_\alpha は x に収束するので、部分ネット y_\beta も同様に x に収束し、したがって E^* の各 f に対して f(x) = \int_Y f d\mu となり、証明が完了する。□
上記の命題により、Krein-Milman(クレイン・ミルマン)の定理を容易に再定式化することができる。そのステートメントを思い出そう: X が局所凸空間のコンパクト凸部分集合であるならば、X はその端点(極値点)の閉凸包である。 我々の再定式化は以下の通りである: 局所凸空間のコンパクト凸部分集合 X のすべての点は、X の端点の閉包を台とする X 上の確率測度の重心(barycenter)である。
\boxed{質問3} ご質問の「X の端点の閉包を台とする X 上の確率測度の重心」という表現は、これまでの会話履歴に登場した「Krein-Milman(クレイン・ミルマン)の定理」の再定式化における最も重要な結論部分です。
この一文は、「コンパクトで凸な集合 X の中にあるどんな点 x であっても、それは X の『カド』にあたる部分に適切に重みを配置したときの『重心』として表現できる」ということを数学的に厳密に述べています。
それぞれの用語を分解して解説します。
1. 「X の端点の閉包」
端点: 集合 X の中で、他の 2 点を結ぶ線分の内分点(中途半端な場所)として表すことができない「カド」や「輪郭」にあたる点のことです。
閉包: 端点の集まりに、その極限点(限りなく近づく先の点)も付け加えて、境界を含めて閉じた(コンパクトな)集合にしたものです。以前の会話履歴の「命題 1.2」の適用部分では、これを Y と置いています。
資料の手書きメモに「~によって表現されるもの」とある通り、ここでの「重心」は、点 x が測度 \mu によって「表現される(represents)」ことと同じ意味です。
物理的な重心のイメージと同じように、端点(の閉包)の上に散らばった重み(確率測度 \mu)の「平均的な位置」が点 x になるということです。
数学的な数式としては、任意の連続な線形関数 f に対して f(x) = \int_Y f d\mu が成り立つ(関数 f を、測度 \mu を用いて積分して得られる期待値が、x での関数値 f(x) に一致する)ことを意味します。
【全体の意味まとめ】 元のクレイン・ミルマンの定理は「集合 X は、その端点たちを混ぜ合わせて膨らませたもの(閉凸包)である」という主張です。 これを測度の言葉で言い換えたものがご質問の一文であり、「X の中の任意の点 x は、端点(およびその極限点)の上だけに合計 1 となる重みをうまく散りばめたときの、ピッタリ釣り合う中心点(重心)として表すことができる」という非常に美しい幾何学的・解析的な事実を示しています。
これら2つの主張が同値であることを証明するために、前者が成り立ち、x が X に属すると仮定する。Y を X の端点の閉包とする(手書きメモ:Y \subset X);このとき x は Y の閉凸包に属する。すると、命題 1.2 により、x は Y 上の確率測度 \mu の重心となる。もし \mu を(自明な方法で)X に拡張すれば、求める結果が得られる。逆に、第2の主張が正しく、x が X に属すると仮定する。このとき(上記のように Y を定義すると)命題 1.2 により、x は Y の閉凸包に属し、したがって X の端点の閉凸包に属することになる。(証明終)
X の端点の閉包ではなく、端点そのものを台とする測度による表現は、Krein-Milmanの定理をより鋭くしたものであることは今や明らかである。実際、Klee は、ある意味で(彼はこれを厳密に定義しているが)無限次元バナッハ空間のほとんどすべてのコンパクト凸部分集合は、その端点の閉包であることを示している。そのような集合については、Krein-Milman の表現は「点質量(point mass)」による表現以上の情報を与えない。
X の端点を台とする測度を見つけることの困難さは、大部分において、端点の集合が必ずしもボレル集合になるとは限らないという事実 [Bishop and de Leeuw, "the representation of linear functionals by measures on sets of extreme points, Ann.Inst.Fouier 9(1959), p. 327] に由来する。X が距離化可能である場合、この困難は以下の結果に示されるように回避される。 (\RightarrowChoquet II. p.178 Cor.27.3)
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