ほぼ漫画業界コラム136【漫画編集者の報酬(お金)の話】
今日は際どいお金の話をします。今回は漫画編集者の報酬についてです。さて、漫画編集者ってどれくらい稼げるのでしょうか。先日、前職小学館の編集者の方が「編集者はサラリーマンなので作品が売れなくても給料が変わらない」とポストしておられるのを見かけました。ただ、その記述は不正確です。サラリーマンだから変わらないのではなく、前職が一切査定がない会社なだけです。年収は年齢と社歴だけで決まります。それとは逆に、査定があって自分の担当作の売り上げが自分の給与にダイレクトに反映される会社もあります。インセンティブをしっかり取るフリーの編集者もいます。編集者の報酬設定は様々です。ただ、実際に日本の歴史ある出版社の多くには査定がありません。
おそらくこれは出版社社員に対する人事査定での権力行使を防ぐために労働組合が働きかけてできた制度だと思います。そして、今でもそれが続いています。しかも大手出版社は給料が高いです。40代を超えると誰でも2000万オーバー。最近はインフレで他業種も高くなってきましたが、2000年代前半は不景気でどこも給与が低く、それに対して大手出版社の給与は現在の体感の数倍にも感じられました。僕は中途入社で2006年に前職に入ったので、突然年俸が数倍になり宝くじにでも当たった気分になりました。物価も安かったし円高だったし。そんな大手出版社の収益部署である漫画編集部の編集者のモチベーション維持は人それぞれです。才能ある作家さんを支えたい人、ひたすら出世を目指したい人、自分のプライベートを充実させたい人、本当にそれぞれですね。僕はモチベーション関係なくワーカホリックなので、どこでも気が狂ったように働いてしまいますので、どれも当てはまりませんが。
逆に金銭がモチベーションになる人にとっては厳しい環境です。自分が誰よりも働いて、ヒットを出したり媒体を作ったりしても関係ないからです。僕は編集者が金銭をモチベーションにしても問題ないと考えています。漫画家さんも金銭をモチベーションに描いている人は沢山います。資本主義社会ですから当然だと思います。漫画家さんと共に歩む編集者が、この資本主義のルールから外れた意識でいるとどうしても関係は歪になると思うのです。
そして、最近大手出版社のエース編集者が次々と退職しています。ちなみに役員などになれれば年俸はさすがに上がります。出世はサラリーマンの本懐だと思うので、出世自体が目的でもいいと思います。ただエース編集者だったら出世しやすいのではないかと思う方もいるかもしれませんが、仕事の成果でなれるのはせいぜい副編〜編集長までで、それ以上の出世には関係ありません。マネジメント能力と編集者の能力は別ですし、出世は社内政治に長けているかどうかの方が重要です。
僕は成果を出した編集者にはしっかり金銭的に報いようと思って会社を立ち上げました。作家さんと頑張って作品をヒットさせたら、編集者の収入にもしっかり反映される。そちらの方が仕事にも責任が持てるし、作家さんにも感謝できると思うのです。表現の自由の問題は、雑誌がメディアとして力を持っていた時代の話で、今はSNSである程度表現の自由は担保されています。出版社や新聞社が気にする問題ではないんじゃないかな。公共の電波を使っているTV局は別ですが。
今後どうなっていくでしょうか。僕はそろそろ査定なしの出版社が利益を出していくのは厳しくなっていくと思います。大手書店が市場を握り、漫画を売るのはこれまでよりもどんどん難しくなっていきます。エース編集者は大丈夫でしょう。いや、これまでよりルールを理解し、より成果を出す可能性もあります。ただエースとそうでない編集者の売上差はこれまでの何倍にもなるでしょう。漫画を作るのは漫画家なのに、なぜここまで差がつくのでしょうか?漫画を作るのは漫画家ですが漫画を売るのは編集者だからです。それで収入が変わらないとなるとやはりそんなエース編集者はやっぱり辞めて行くでしょう。それどころか漫画家と組んで、権利を出版社から引き剥がす人さえ出てきます。彼らは億単位の収入を得るようになるでしょう。実際にそうなっている人も見聞きします。
歴史ある出版社も様々なシステムを見直す時がきたのだと思います。


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