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おいしくて脳ビリビリ「雪鶴」
2/23、10:30発の飛行機に乗るべく、ホテルの無料シャトルバスで千歳空港へ向かいます。
搭乗ゲートの待合エリアのテレビでは「御用列車」の番組が放送されていました。
私が同行した友達に御用列車のことについて持てる知識をあれこれ話している最中、友人は適当に相槌を打ちながら東京に戻ったあとのスカイライナーの席を必死に検索していました。
私も、過去の記憶を整理するために相手を利用して話している部分もあるので、ノーダメージではあります。
搭乗開始が遅れているようで、待合のベンチで朝ごはんがわりに北海道の有名なお菓子屋さん「もりもと」で買った「雪鶴」を食べることに。
なにげなく口に運ぶと、美味し過ぎて脳がビリビリしました。
軽くてふわっとした甘い生地に塩バターがはさまり、夢心地の甘じょっぱさ・・・共感してくれるかわかりませんが、マカロンを初めて口にする前に想像していた(そして打ち砕かれた)、「こういう味・食感だったらいいな~」ど真ん中の味わいです。
蛾、蛾、蛾『リンバロストの乙女』
やや遅れて搭乗ゲートがオープン、乗り込んで離陸。
飛行機に乗っている最中、『リンバロストの乙女』を読みました。
貧しい女の子・エルノラが、冷たい母親との関係に悩みながらも自分で学費を稼ぎ、ステキな男性と出会って幸せをつかみ取っていく青春小説。
20世紀初頭の作品で、今読むとベタな筋ではありますが、エルノラがお金を得る手段が「蛾の標本を作る」というのが特異でした。
そのほかお母さんと喧嘩して和解するきっかけ・男の子と出会って仲良くなる話題も全部「蛾」だったのが面白かったです。
笑い飯の漫才に、蠅の存在がやたらと描写される桃太郎のネタがあるのですが、それを彷彿とさせるほどに出てくる蛾、蛾、蛾。「私の人生にも実は同じくらい蛾が登場しているけれど、興味関心がないから見逃してるだけなのかな…」とも思えてきました。
到着からの吉村昭文学記念館
成田空港に到着し、別の用事があった友達とはここで分かれ、私は第3ターミナルのフードコートで一人うどんを食べ、スカイライナーに乗り込みました。
15:00から四谷くんと合流して吉村昭記念文学館に行く予定です。
スカイライナーで日暮里駅まで行き、そのまま京成本線で町屋駅へ。あまり無駄のない動線に得意満面です。
吉村昭記念文学館は、荒川区の公共施設「ゆいの杜あらかわ」の中にあるとのこと。中に入ると、大きな図書館にカフェや勉強スペースがたくさんあって、利用者がたくさんいました。めっちゃうらやましい…。自分の住まいと離れた地域の公共施設が充実してるとちょっとジェラシーです。
カフェでパンを食べていた四谷くんを発見。2人で2階の文学館へと向かいました。
私的面白かったポイント
私も四谷くんも吉村昭の作品は『羆嵐』しか読んだことがありません。
ただ、私は北海道帰りホヤッホヤ、吉村昭の北海道旅話にはノリノリで食いつける状態です。しかも、四谷くんの地元・宇和島は吉村昭が何度も訪れた地。この接点二本槍で突進です。
吉村昭の波乱万丈な人生と豊富な著作をくわしく紹介した展示はとても充実していて、ほとんど彼の作品を読んでいない私たちでも楽しめました。ざっくり面白かったポイントを書き並べてみようかなと思います。
①子ども時代の文章が達者すぎる
吉村昭の生い立ちの紹介と、自筆原稿などゆかりの品が展示されているのを2人で見ていくと、吉村昭が小学校6年生くらいのころに書いた「旅の思い出」にまつわる原稿が。
「どれどれ」と読んでみると、書きぶりがあまりにも達者で、私も四谷くんも絶句してしまいました。
比べること自体おこがましい行為ですが、28の私が書く文章よりも、小6の吉村昭が書いた随筆の方が出来事の推移の描写がなめらか且つ印象的で、もうとにかく上手です。
四谷くんが、「ぼく、こんな風に書けるようになりたい」と、小6の吉村昭にあこがれを抱いていました。
②津村節子との北海道への行商
吉村昭は学習院大学在学中に熱心に同人誌で小説を発表しはじめ、卒業後は文筆業以外の職をこなしながら執筆活動をしていたそうです。
著作が膨大なので、てっきり若いうちから専業作家だと思っていたので意外でした。
びっくりしたのが、負債をかかえてセーターを売りさばかなくてはいけなくなり、妻で作家の津村節子と冬の根室まで行商したというエピソードです。
北海道から帰ったばかりなので、冬の行商の厳しさがありありと想像でましたし、映像資料で津村節子が「ここで死ぬんじゃないかと思った」と笑いながら言っていたのがすさまじかったですね・・・
その後、吉村昭が執筆活動に専念してからも何度も北海道に足を運び、蝦夷地・北海道の歴史をテーマにした作品を多数発表しているのはかなりアツいです。行商の時に、なにか強く惹かれるものがあったんじゃないかなと思います。
私も北海道に行って、悲惨さをはらんだ歴史と、大阪や東京とはまるで違う大地&豪雪といった自然に触れるたびに新しい発見があります。
『羆嵐』以外も読もうと思いました。
③太宰治賞
吉村昭は、自身の作品が芥川賞候補作に4回もノミネートされていたのにも関わらず、一度も受賞には至らなかったそう。
そんな中、1966年にやっと『星への旅』第二回太宰治賞を受賞しました。
四谷くんがなにやら笑っているので理由を聞いたら、「太宰治賞、第一回は『受賞作なし』らしい」とのこと。
わざわざ賞をつくっておいて、初回で「受賞作なし」って、ゴリっとしていていいですね。
④宇和島の「朝のうどん」の色紙
吉村昭が何度も旅をした場所として、長崎・北海道・宇和島(愛媛)が紹介されていました。
宇和島は、蛮社の獄でお尋ね者になった高野長英の逃亡先で、その出来事に取材した吉村昭の作品もあるようです。
吉村昭が宇和島にある有名な朝からやってるうどん屋に贈った色紙のレプリカが展示されていたのですが、「朝うどん」と書いていました。
格調高い至言とか、心を寄せる宇和島の印象とかじゃなくて、「朝うどん」・・・。
あんなに丹念な調査に基づく小説を書いているのに、ほぼ中身のないストレートな言葉でグッときました。
北海道旅行、いい流れでフィニッシュ
今回の北海道の旅は、残念ながら現地で長く滞在はできませんでした。
しかし、雪に飽いてホテルでじっとせずに出歩いた分だけ知れたことも多く、東京に帰ってから北海道熱冷めやらぬまま吉村昭文学記念館に行けて、総合点数バリ高でした。
次は夕張あたりに行って、炭鉱の歴史を知れたらと思ってます。
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