ケルトの英雄は衰退しました
現実世界のただのサラリーマン槍×Fate世界のサーヴァント弓、という特殊設定ホモ。夢小説にありがちな逆トリップみたいな世界観です。飽きなければ続き書こうと思ってます。できればエロ書きたいです。今回のこの話はエロはしてません。それどころかあんまり甘くないです。
▽このSSの雑な設定
>クー・フーリン
両親がアイルランドから移住してきただけの生まれも育ちも日本の三十路間近の独身サラリーマン。別に社畜ではないが、人の不幸が大好きな上司の手によって度々出張に行かされる幸運E体質。
女性経験はそれなりにしてきた。
キャスターと呼ばれる兄と、オルタと呼ばれる弟がいる。
>アーチャー
第5次聖杯戦争が突如休止となり、なんか暇してたら魔術もなんもない世界にトリップしてしまった幸運E体質。
トリップする前からランサーのことは少し気になってた。
■6/2ルーキーランキング49位ありがとうございました!
■6/4ルーキーランキング2位…だと……。
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出張から帰ってきた日は夕飯もおざなりで。鉛のような身体をお湯でさっと流した後は、泥のように眠る事が大半だ。
学生の時であれば次の日の昼までには自然と目が覚めたこの身体も、最近は正午を跨いだ後にやっと起き上がる体たらくぶり。
……には、今朝はならなかった。
何故かって?
「おや、やっとお目覚めかね?人を犬小屋みたいな部屋に囲ってどうするつもりだ。返答次第ではこちらも本気で迎撃させてもらうぞ」
妙ちくりんな赤い服を着た褐色白髪のマッチョなコスプレイヤーにこうしてマウントを取られてるからだ。
何なのだろう。
これは夢なのだろうか。いや夢に違いない。
だって俺は三十路間近の独身サラリーマン。
こんなマンガみたいな格好のマッスルゴリラが部屋にいる訳がないのだから。
夢にしたってこんなシチュエーションなら、一時期社会現象なっていたドラマの主演女優みたいなかわいい子にされたい。
何だってこんな………独身男にこれは余りにえぐい夢じゃないか。やはり出張というのは身体によほどの疲労を貯めるらしい。
「夢なら二度寝すっか……」
何故かこちらを鋭く睨みつける筋肉モリモリマッチョマンから顔を背けて二度寝の態勢に入ろうとした、その瞬間。
ぴたりと。
玩具のような剣の切っ先を目前に向けられた。
「とぼけるなランサー。聖杯戦争は現在休止状態だが我々は別に仲良しこよしになった訳ではない。こちらはいつでも貴様を殺せるんだ。狙いはなんだ?マスターか?」
特有の用語だらけで何を言ってるのかいまひとつ飲み込めない。
目の前の男の非現実的な姿格好も相俟って、やつのぴりぴりとした空気とは対照的に、寝起きというのも手伝って未だ俺自身ふわふわと夢の中にいるようだ。
いや夢だと俺は思い込んでる。こんなのリアリティがなさすぎるだろ。
「いてっ」
ものは試しとその向けられた切っ先を指でつついたら血が出た。
想像以上に研ぎ澄まされていて、意識が微睡みから僅かに浮上する。
「うわこれ本物かよ」
「……何の真似だ。貴様は犬は犬でもオツムが足りない野良犬のようだな、ランサー」
「てゆーかよぉ、警察呼んでもいいか?」
血が出てない方の左手で枕元のスマートフォンをなんとか探る。
不法侵入の上銃刀法違反だし殺人未遂。犯罪のオンパレードだ。
このコスプレ野郎から慰謝料をふんだくった暁にはその金で、有給とっていっそ温泉にでも行っちまうか。
なんてこんな状況にも関わらず呑気なことを考えてたら、先程までの威勢はどこへやら。
目の前の男は目を丸くして『らんさー…?』などとぽつり、か細い声で呟いてた。
「あー。警察、警察………」
「ま、待てランサー!おい、警察はやめろ!」
あっという間にスマホを取り上げられた。
この男と自分の筋力差は歴然だった。こんなコスプレ男にあっさりスマホを取られてしまった事に、妙な敗北感覚えつつも何故だか認めがたい。
「ほーん?流石のコスプレマッチョも警察を呼ばれたらたまんねぇらしいな」
「コスプレマッチョ!?」
冷淡で低い声音も今や見る影なしの素っ頓狂な声でオウム返しされたのが妙にツボに入る。コスプレしてるの無自覚かよ。
まぁそれは置いとくとして、
「で、結局どちら様デスか」
首を傾げて聞いてみれば、目の前の男は盛大なため息を吐いて頭を抑えた。
いやいやため息吐きたいのも、頭を抑えたいのも出張明けの俺の方だって。
「せーはいせんそー?まじゅつし?えーれー?願いが叶う?」
ドラゴ〇ボールみたいなものだろうか。
アーチャーと名乗ったこの男の話を聞くと、いや話を聞いたところでまるでわからなかったのだが、要するにこいつはメルヘンワールドの住民らしい。
にわかには信じ難いが、先ほど玩具みたいな白黒の剣を空間に消していた様をきっちり見てしまったのだ。奴は紛れもなくファンタジーヒューマン。
それでも信じ難いには信じ難いのだが。
「ランサー、よもや貴様記憶喪失になったのではあるまい?」
「つーか、さっきからランサーって言ってるけど、もしかして俺のことか?てか記憶喪失じゃねーし、正常だし、お前と一緒にしないでくんね?」
「なっ。私だって正常中の正常だ、阿呆!──私は、私は気がついたらここにいたんだ」
急にアーチャーは困った様子で辺りを一瞥した。ちょっと部屋が汚いからあまり人には見せたくない。正直やめてほしい。
「思えば貴様ともあろう英霊が、私の殺気で目が覚めない訳がなかったんだ……」
「アーチャーは殺気で俺のこと起こそうとしてたのか?こわっ」
「貴様は──君は…本当にただの人間になってしまったんだな」
なってしまった、じゃなくて元からです。
生まれた時から人間です。
ずっとホモサピエンス。
「んん……じゃあ話も一段落したとこで、寝直していいか?」
「………はぁ?」
「出張明けで疲れてんだよ。ほんとはもっと寝てたいんだ、悪いな。詳しい話は起きたらな。おやすみ」
畳み掛けるように告げた後に頭からシーツをかぶる。やつの言ってることは非現実的すぎる。
やはりこれは疲労による夢。熟睡できていなかった証拠。何度でもいうが俺は出張明けなんだ。
(……なんだよ、あの顔)
なのに。
最後にちらりと覗かせたアーチャーの、迷子になった子どものような顔が何故だか頭から離れなかった。
しばらくして優しいテノールのおやすみの返事が、沈んだ意識の中で遠く聞こえた。
▽▽▽▽▽▽▽▽
ゆっくりと、水の中から上がるようなだるさを伴って意識が浮上する。何度かまばたきを繰り返して少しずつ眠気を払いのけると、ふと食欲をそそる匂い。こんなの実家にいた時以来だ。
すん、ともう一度嗅ぐ。コンソメだろうか。
「昼過ぎまで惰眠を貪るとは感心しないな」
そ知らぬ男の声に未だにぼんやりとしてた頭が一気に覚醒した。
思わず勢いよく起き上がると、先ほどの声の主と視線がかち合う。
白髪、褐色の…ガタイのいいコスプレ男。
確か名前は、アーチャー…だっただろうか。
「………オハヨウ、ゴザイ…マス?……夢だけど…夢じゃなかった、ってやつ?」
「いい加減目を覚ませ、たわけ。──おはよう」
やれやれと奴は肩をすくめると、キッチンの方へ踵を返す。寝る前も思ったが、きちんと返事する辺り中々律儀なやつだ。
もしかしてもしかするとこのいい匂いの元を調理したのはアーチャーだったりするのか。
非現実的な光景に目を丸くするが、今は完全に俺自身目が覚めてる。先ほど見てた夢は夢ではなくて、現実ということを思い知らされたようだ。
寝る前よりも何故か少し片付けられた床に降りればひやり、固くて冷たい感触。
あっ、これ現実ですね。
ちらりと視線を投げれば、アーチャーはローテーブルに食事を用意している最中だった。
「悪いがあるだけの物を利用して、簡易的だが勝手に作らせてもらった。味は保証せんけどな。コンビニ弁当箱とカップ麺だらけの惨状がどうしても許せなくてね。話は変わるが君は無用心すぎないか?知らない男がいるというのに、寝始めるとはよほど愚かなようだな。全くおかげでこちらは君が起きるまで暇になってしまった。勝手に出ていってもよかったが、鍵の所在がわからなくてな。開けっ放しのままにするのは君とは言え、流石の私もいささか良心が痛んだよ。だからこうして君が目覚めるまで、」
「すげぇうまそー。これマジで俺が食べていいのか?」
「人の話を聞いてたのか?……どうぞ召し上がれ」
「いただきまーす」
コンソメスープ。スクランブルエッグにウインナー。主食はフレンチトースト。
ホテルの朝食みたいなラインナップ。何が簡易的だ。充分すぎるほど充分だ。
まずはスープから手をつける。具は玉ねぎとニンジンか。そういえば冷蔵庫の隅に小さいのが転がっていたっけ。見事に化けたものだと一人感心する。
「あーーー………ほっとするわ」
「──そう、か」
具の野菜はやわらかくて、コンソメの味がよく染みていた。美味い。シンプルに美味い。
他の物にも手をつけたが食事が進む進む。たいした食材などなかったろうに、まさかここまでの物を生み出すとは。
そういえば。八割ほど食べ尽くした時にふと気がついたが、アーチャーは先程から食事に手をつけていない。俺の「美味い、美味い」に対して「そうか」「よかった」など相槌をうつだけ。満足そうな視線をよこすだけ。……このアーチャーという男はこんな風に柔らかい表情もできるのか。
ではなくて、
「おい。俺ばっか食ってるけどお前の分は?」
「ない」
「ないって」
きっぱりと即答された。秒で返されたから思わず食の手が止まる。
「英霊だからな。食事は必要としない。とはいえ現状魔力のパスも繋がってる様子はないから……」
「なんかむつかしい事また言ってるけどよぉ。そうじゃなくて、俺が一人で食い続けてるってのが小っ恥ずかしいっていうか、味気ないっていうか…」
「私は君と食事を共にするような間柄ではないのだがね」
「それを言うなら俺だってお前とは初対面で馬乗りされた上、恐喝してきた男に朝飯を作ってもらうような間柄じゃなーし」
むぅ、とアーチャーは言葉につまる。彼を閉口させたことに僅かな優越感に浸る。
論破してやったぜ。
彼から見えない位置で小さくガッツポーズ。
「それを言うのはずるいぞランサー」
「だから俺はランサーじゃねーっての」
「……ただの一般人である君を殺そうとしたんだぞ、私は。そんな男と食事を共にしようだなんて」
「それはそれ。これはこれだ。いいじゃねーか、なんだか誤解だったみたいだし。明日は明日の風が吹く?昨日の敵は今日の友?ってやつ?」
このやり取りがなんだか楽しくてつい笑っちまう。
それを見た彼はため息を吐いて肩をすくめた。君はどんなになっても変わらないんだな、とぼやいた後に降参の意味を込めて手を上げる。
「まぁ食事を共にしてもいいにはいいが、この家にあった食材的にも作った分量的にも私が口にする物はないのだが」
「じゃあこの食いかけの、」
「却下だ」
ですよねー、と残骸のような最後のフレンチトーストを口にいれる。俺だって野郎の食いかけは嫌だ。
もひもひと咀嚼する俺を見たアーチャーは鼻で笑ってきた。ドヤ顔のオプション付きで。くそう、最初にマウント取られた時から思ったいたがこいつかなり腹がたつな。
「……ゴチソウサマ」
「お粗末さまでした」
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
「君の食事も済んだことだし、私は立ち去ろう」
「待て待て待て待て待てなんでそうなるんだ」
玄関の方へ向かおうとするアーチャーの手を思わず引く。怪訝そうな目を向けられた。
「お前行く宛あんのかよ」
「ないが」
「ほらやっぱな。いいじゃねーか、ここにいろよ」
帰る宛のない、どこか遠いところから来てしまったこいつを外へほっぽり出すのは、流石の俺も良心が痛い。
ここまできたら乗りかかった船だ。
ほんの少し最近に、今はいない元彼女と同棲してたんだ。ここで人1人増えても問題ない。
それに何故だかこいつを、彼の事をほおってはいけないと、漠然と感じていた。
「───ランサー。私と君はそんな関係では、」
「お前とランサーのことなんか知ったこっちゃねーよ。今いる『一般人の』俺だ。目が覚めてないのはお前のほうじゃねぇのか、アーチャー」
ひゅっと息を飲む音。
掴んだ手首はこわばっていて、彼の瞳が揺れた。玄関の方へ向けた身体はのろのろとこちらの方に直る。
かたくなな彼の折れた素振りを目の当たりにして、内心でやったぜとほくそ笑む。
するとアーチャーは、自身を拘束してる俺の手の上に自分の手をそっと重ねた。
突然の体温に俺もまた息を飲む。
重ねられた褐色の肌から視線をあげると困ったように笑うアーチャーと目と目が合う。
(──なんだよ、その顔)
「そう……だな。現実を受け入れてなかったのは、俺の方だったな。少し、自暴自棄になってたみたいだ」
カッコつけたような口調ではなく砕けた口調。
まるで背伸びをやめた子どものような。
「お、おう。帰る目処がたつまでここにいろよ、野ざらしよかマシだろ。まぁなんだ、お前みたいな料理が上手いやつがいると俺も便利っつーか」
「ほう?つまりは?君は私を?便利屋か家政婦かなにかかと?思ってるわけか?」
先程までの幼い印象はもうなりを潜めた。今は嘘みたいに元の調子だ。
コンマ数秒の間に垣間見たあの少年のような有様はそれこそ本当に夢を見たような気分。
あれは気のせい……なのか?
それにしたってこいつの皮肉は中々止まらない。むしろエスカレートしていく一方で、俺もだんだんイラついてきた。
「あー、あー!うっせ、うっせ!とりあえずこれ着ろ」
顔面に向かってその辺に落ちてたカットソーを投げた。無理矢理閉口させようという魂胆があって投げたのだが、容易くキャッチされてしまった。
悔しい。
「おら、出掛けっぞ。食材が無けりゃお前の飯にありつけられないからな」
「……了解した」
ほんの一瞬、ふわりとアーチャーの身体が光ったと思うと気がつけば端正な筋肉が露わになった。コスプレみたいな赤い外装はやはりというか、普通の衣服とはまた違う代物らしい。
「やっぱ俺と違う世界の人間なんだなぁ……ってかめちゃくちゃいい身体してんじゃん」
「いや、そんなことはない。自分でも身体作りには失敗したと思ってる。無駄な筋肉が多い。それに見た目ほど筋力はないんだ」
「またまた〜。謙遜すんなって」
「っ…!?」
「俺も学生の時だったらなぁ、多少は張り合えたのかねぇ……」
むにむに。
厚い胸板を触ってみると、手のひらを押し返すような程よい弾力。同じ男として正直羨ましい胸筋だ。感嘆のため息を吐いてまじまじと腹筋へと視線を移したら頭をはたかれた。
「あだっ!?」
「君はパーソナルスペースというものを知らんのか!いきなり触る奴がいるか!」
「んだよ、なに女々しいこと言ってんだよ。いいだろ別に減るもんじゃねーし」
「減るとかそういう問題ではない!」
しゃーっと効果音が付きそうなくらい威嚇された。
1モーション、1モーション何かとこいつに絡む度にこうして言い合いになるのはなんでだ。
彼が着替え始めたのを見て、自分もスウェットを脱いだ。……なんか俺の筋肉落ちた?最近はまともに運動してなかったからだろうか。だとしたらショックだ。
あらかた着替え終えて最後に惰性で伸ばしてる髪を髪留めでひとまとめに。
アーチャーの方に視線を流すと微妙に居心地悪そうにこちらに背を向けてる。
行こうぜと肩に手を置いたら、ぱつぱつになった可哀想なカットソーが視界に入った。
そのカットソーは彼の豊満なバスト、違う胸筋によってシワなく伸びていた。
なんだこれ。
まさかここまでアーチャーと体格差が歴然としてるとは。
「胸…………苦しそうだな……………」
「やめろ……その言い方はやめろ…………」
「このシャツ……着るか?」
「………ああ」
しかしそのシャツも胸でつっかえることとなった。
無理してボタンをかけようとしたら、ポップコーンみたいに弾けた。
なんてわがままなダイナマイトボディだ。
食材の買い出しのリストに彼の衣類も追加しておこう。同じ男なんだし俺の服を貸せば事足りるだろ、という見通しは甘かったようだ。
とりあえず以前弟が泊まりにきた際に置いていったジャージとパーカーを着せよう。弟のオルタは俺より図体がデカいから今度は平気なはずだ。
…よし。中に着れるものがないから裸onパーカーという変態仕様になってしまっているが、それはもうしょうがない。脱がなきゃバレない。
これでどこからどう見ても現代人だ。これからコンビニ行きますというていをしてる。
なのに、変な違和感。
──そうか、前髪か。
「うわっ、急に何をするんだ君は!」
「ほぉーん………」
撫でるように彼の髪をくしゃくしゃにしたら、そこには少年のような顔立ち。いや元々彼の顔つきは童顔らしい。ただ前髪を上げてるから大人びて見えるだけで。
急に髪をかき混ぜられたからか拗ねた顔で嫌味を言ってるが、それが余計に幼い印象に拍車をかけることに彼は気付いてるのだろうか。
「まぁなんだ。ジャージとパーカーだし、髪を降ろした方が自然に見えるかな、と」
「むぅ…それは一理あるな。……一理あるが、君が私の髪をいじる必要はないと思うのだがね?」
へいへいと適当に受け流し、このままでは言い合いが始まって家を出れそうにないのでさっさと玄関へと彼を向ける。
……いやそれは言い訳だ。
本当はこのままアーチャーと向き合ってると、何か妙な気分になるから。さっき不意に見せた幼い一面を少しでもかわいいと思ってしまうなんて。いつしか前に後輩の女子社員が言ってた、ギャップというやつがこれなのだろうか。
心のどこかで悪くないと思う自分がいるのを自覚した。
>くもり空さん スタンプありがとうございます〜!! (つ∀<●)゚+.キャァ