意外と知らない、なぜ昔のコンクリート構造物は長持ちするのか

『日本のインフラ危機』

日本はこのまま崩れ去ってしまうのか? 道路、鉄道、水道、インフラ、橋……なぜ全国各地で次々に事故が起きるのか? お金も人も足りない……打つ手はあるのか?

注目の新刊『日本のインフラ危機』では、私たちの暮らしを揺るがす「大問題の正体」を豊富なデータと事例から解き明かす。

(本記事は、岩城一郎『日本のインフラ危機』の一部を抜粋・編集しています)

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二つのインフラ

本書『日本のインフラ危機』の主題はインフラを長持ちさせることです。一口にインフラを長持ちさせると言っても、インフラを二つに分けて考える必要があります。今すでにあるもの(既設構造物)と新たに造るもの(新設構造物)です。

前者についてはさまざまな環境下で10年しか使われていないものもあれば50年以上使われているものもあり、劣化の状況も異なります。このようなインフラを長持ちさせるには人の医療のように、適切なメンテナンスによって、インフラの寿命を延ばす行為、すなわち「延命化」が必要となります。

では、新たに造るインフラを長持ちさせるにはどうしたら良いでしょうか。答えはシンプルで、最初から耐久性の高い構造物を造るのです。そこには先人の教えが隠されています。

先人の教えに学ぶ

日本のコンクリート工学の礎を築いた吉田徳次郎氏は「よい(土木)構造物をつくるには親切に丁寧に」と繰り返し述べました。また、元東京大学工学部長で、コンクリート研究室の教授だった岡村甫氏は「世のため人のため、良いものを安く造る」のが土木技術者の使命と語っています。これらは極めて平易にして簡潔な言葉でありながら、技術者としての誇りに対する力強いメッセージが込められています。

実際こうした理念を体現し、後世に残る長持ちする構造物を実現させた例として小樽港北防波堤が挙げられます。

小樽港北防波堤

この構造物は廣井勇博士が陣頭指揮を取り、1897年から建設に着手し、1908年に完成したもので、寒冷地における外洋防波堤という厳しい環境に置かれながら100年以上現役の構造物として使い続けられています。この構造物は火山灰をコンクリートに混ぜることで耐久性を高めるなどの工夫をおこない、まさに「親切に丁寧に」施工をおこなった結果完成したもので、「世のため人のため、良いものを安く造る」を体現した事業と言えます。さらに廣井氏はこの構造物が長年にわたり所定の性能を確保しているか検証するため大量のモルタルブリケットという供試体(試験体)を作製し、後世に引き継いでいます。今もこの供試体による強度試験がおこなわれており、100年以上経った今でも十分な強度を有していることを確認しています。

実際、「1900年代前半に造られた構造物は長持ちする」という話をよく聞きます。1980年頃までコンクリート構造物はメンテナンスフリーと考えられていたのも、こうした構造物の実績があったからかもしれません。

ではなぜ、昔の構造物は長持ちするのでしょうか。逆に高度経済成長期に造った構造物は早期に劣化してしまうのはなぜでしょう?

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