少子化対策より、子ども政策重視を 「こども庁構想」発起人、自民・山田太郎氏に聞く【解説委員室から】

2024年09月09日12時00分

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 少子化対策を強化する改正子ども・子育て支援法などが先の通常国会で成立した。昨年4月に発足したこども家庭庁は、子どもの利益を第一に考えた「こどもまんなか社会」の実現を目指しているが、政府のこれまでの子ども・子育て政策をどう評価するか。「こども庁(現こども家庭庁)構想」発起人の一人で、子ども政策に詳しい自民党の山田太郎参院議員は「別の山に登っていないか」との懸念を示す。山田氏にその理由を聞いた。(時事通信解説委員 村田純一)

「別の山」に登っている?

―子育て支援強化を求める市民団体主催の集会で、山田さんは子ども政策について「別の山に登っているのではないか」と発言していたが、その意味は?

 子ども・子育て政策は多岐にわたる。2021年1月に菅義偉首相(当時)に提言し、23年4月にこども家庭庁が発足したが、もともと「こども庁」が必要と思ったのは、子どもへの虐待、子どもの自殺、不登校の問題など、あまりにも子どもの置かれた環境がひど過ぎて、戦後最悪の数字が並んで、これは政治問題じゃないかと思ったから。子どもの命を救おうと。同時に、子どもが幸せに、楽しく、安心して生活できない社会はよくないと。

 その問題を解決しようと思ったら、組織が非常に縦割りで厚生労働省、文部科学省、警察庁とかいろんなところが関わってくる。一方で、複数の部署にまたがる課題に対しては、各省庁から「担当部署がありません」と言われたこともある。

 縦割りのほか横割りとも言っているが、子どもたちは霞が関、永田町にいるわけではない。子ども政策の現場は自治体にある。ところが、人口が数万人以下の自治体では、子ども担当の部署すらない場合が多い。子ども政策を現場だけに任せるには限界がある。

 育てる側のライフサイクルで見ると、いくつかの壁、困難なことがある。子どもを妊娠してからの周産期前後、妊産婦は10~20%の割合で産後うつになるし、孤立しているのは間違いない。昔の大家族とは違って、今は核家族、共働きが前提だから。

 就学前の保育の問題をどうするのか。小学校に上がれば、学童をどうするのか。高等教育にはすごいお金がかかる。子どもが育っていくためにも三つの大きな壁がある。

 子ども、その家庭を中心に考えた場合の困難な問題を解決するための施策が、子ども政策の第一義ではなかったか。それがいつの間にか少子化対策となって、何かお金を配るような話ばかりで、経済対策、経済政策のようなものが優先されてしまったようだ。

 私がずっと主張していることは、「チャイルド・デス・レビュー」(予防のための子どもの死亡検証)の確立。どんな理由であれ、子どもが亡くなってはならない、不幸にも亡くなったのであれば、その理由は全て解明し、手を打てるようにすること。文科省や警察庁が集めているデータはいいかげんで、自殺数も合わない。もっと悲劇的なのは、子どもの虐待死で最も多いのが0歳0カ月という事実。それは無理心中もあるが、殺人だ。こういう問題を放置するわけにはいかないというのが第一義にあった。

 そういう施策やお金がゼロではないけれど、大きく張られているわけでもなく、違うところに巨額のお金を一生懸命突っ込んでいる節もある。

 そういう意味では、何を解決しようといていたんだっけ、頂上にたどり着けるのだろうか、登っている山が違うのかもしれないという思いがあった。

子どもの自殺、虐待、不登校の議論は?

 特に違和感があるのは、岸田政権の中での「こども未来戦略『加速化プラン』」。政府は、このプランを子ども政策の決定版のように言い始め、加速化プランばかりがフィーチャーされた。それはおかしい。子どもの自殺や虐待とか、不登校の問題とか、そういうのはどこへ行ったのか。「こども未来戦略会議」(議長・岸田文雄首相)では十分に議論されなかった。

―山田さんは集会で、「本来は困難な問題を抱える子どもやその親のためにつくった組織が何か経済的な少子化対策の方にばかり向いているのではないか」と語っていた。

 それも大事なことで、否定はしないが、違う山登りをし始めていないかと感じている。もし経済対策を考えるのであれば、たぶん登り方も登る山も違うのではないか。それはこども家庭庁だけでは解決しない問題だ。


―少子化対策を考える場合、若者の賃上げ対策など他にいろいろな問題がある。

 そう。何だか知らないけど、こども家庭庁を少子化対策の担当部署みたいにしてしまった。子ども政策だけで(少子化対策の)山を登ろうとしているのは、違うと思う。全然登っていないというわけではない。3合目ぐらいまでは登った。ただ問題は、この先登っていったときに、本当にわれわれが目指すような頂上やゴールがあるかどうか。そこは、いま一度見直さなければいけない。

少子化対策に子どもたちは関係ない

―子育て支援を求める市民団体にも「子育て支援より少子化対策を」と強調される論調に違和感があるようだ。

 今はもう少子化なんだから。今いる子どもたちにとっては、今が少子化であろうと少子化でなかろうと関係ないことだ。人口が将来どうなろうと、今いる子どもたち一人ひとりを大切にしなければいけないのであって、何でその生身の子どもたちの議論を脇に置いているのかと思う。

 少子化の問題というのは、将来のマーケットの話だ。今いる子どもたちの話ではない。確かに、少子化によって今いる子どもたちもいずれ経済的に困難な問題を抱えるかもしれないけど、それは今の子どもたちにとってダイレクトな問題ではない。

 もっと子どもたちが苦しんでいる状況を知るべきだ。小中高校生の自殺者数は514人(2022年確定値)。若い子の死亡原因の1位は、がんではなく自殺だという事実がある。それは地獄ということだ。希死念慮を抱えている子がまだまだいる中で、そこの対策は進んでいるのか。不登校は近年ものすごく増えている。文科省は学校に来ることが全てのように言う。だって居心地が悪いし、居場所じゃないと思っているから行かないのに、そういうことでいいのか。そういうことはあまり議論されていない。こども家庭庁をつくってどれほどの議論をしてお金をつけたのか。

「子ども」が政権の中心テーマ

 ただ、今の子ども政策の全てを否定しているわけではない。子ども政策は重要だし、岸田政権としての看板だ。その中身はともかく、政権の看板として一丁目一番地に置いているのは革命的だ。

 わたしは19年から自民党に所属したが、その頃の自民党はマッチョな政党で、やれ外交だ、安保だという感じの中にあった。子どもの権利もやっと議論できるようになって、ここに来て大きくかじを切って、子ども政策を安保と並んで議論しているのが不思議なぐらいだ。

 歴代政権を見ても、「子ども」というテーマは大きい。日本の首相が大規模に子ども政策をやると言ったのは、相当評価しなければいけない。それまで、山を登ろうともしなかったし、山の形も見えなかった。少子化担当大臣を何代も置いた割には大きな進展はなかった。

 今まで「こども庁」の議論は水面下ではあったようだけど、政治的には発案されなかった。自分は(こども家庭庁創設の)「火付け役」と自負しているが、岸田政権で子ども政策の山登りは確実に始めた。子どもが堂々と政権の中心テーマになり、世の中の雰囲気も変わった。これは大きな成果で評価したい。

(時事通信社『厚生福祉』2024年8月23日号から転載)

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