とある事件を起こした漫画家の件で、議論になっている点として「もう二度と漫画を発表しないでほしい」と言うのと、「犯罪者であろうと、罪を償った人は社会復帰させるべき」というのがありますが・・・。
「犯罪者でも社会復帰させるべき」は倫理的には正しいと思いますし、「そうでないと犯罪者が更生する意味がなくなり治安が悪くなる」も社会からみた功利的な判断としても正しいと思っています。
しかし、
・法制度レベルの社会復帰
・市場レベルの受容
・感情レベルの拒否反応
あたりをごっちゃにして議論をしてしまうと混乱してしまいそうで、、、このあたりは、レイヤーで分けて議論しないといけないかなと。
そのレイヤーは
① 国家レベル
→刑罰が終われば法的制裁は終了
② 市場レベル
→契約・雇用は自由
③ 感情レベル
→消費者は自由に拒否できる
かなと個人的には思っています。
つまり、消費者が「この人にはもうこの活動をしないでほしい」と言っているときに、国家レベルの法的制裁の話をしても、すれ違ってしまうというか。
また、「犯罪をしたからといって、もう仕事をさせないのはおかしい、また戻れるようにするべきだ」と企業に言っても、企業レベルでは合理的に契約や雇用をするかどうかは、総合的にリスク判断をして最適な判断をすることになります。企業には株主責任やレピュテーションリスク、ステークホルダー配慮があるのです。
※もちろん、国家レベルとかも民主主義国家においてはかなり国民感情も反映されるので綺麗に分かれていると言うわけではないです。そこまで細分化していくと、それこそ議論ができなくなるので、まずは大雑把にレイヤーを分けたという感じです。
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法制度レベルでは社会復帰はされるべきとなっていますが、例えば芸能人の人がひどい犯罪を犯したときに、それを市場として受け入れられるかは別ですし、感情レベルで拒否されてしまうこともあります。
「スポンサーがつかない」とか「視聴者から激しい非難があり、番組継続が難しくなる」とかですね。
なので、特定の人の心に大きく傷を残すような犯罪をした人が多くの人が目にする仕事(芸能界など)に戻るのはやはりハードルができるわけです。被害者の人の心情もありますし、消費者としてもその事件を思い出したり、過去の自分のトラウマを呼び起こしたりするからです。
んで、この辺りも、
・影響範囲
・被害類型との関連性
・再発リスクとの関連
が考慮される必要があるんですが、どれも規定が決まっているわけじゃないわけじゃないんですよね。非制度の、実質的なリスク評価が働いていた上で決定されます。なので、「そのリスク評価がどういうプロセスだったのか」を詳細に計測するのはかなり難しいと思います。
例えば、大麻とかで捕まった芸能人やミュージシャンが比較的復帰しやすいのも、この辺りのバランス的に、許されやすいと言うのがありますが、ひどい不倫をした、とかになると逮捕されるものではないのに、全然復帰できないとかあります。
罪の大きさは、国家レベルでは決まっていますが、企業にとっては消費者の感情によって決まるので、量刑と市場評価は必ずしも比例しない訳です。
なので、「法律的にはそんなに問題じゃないから、復帰させるべきですよね」と言っても、あまり意味はないのかなと。
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というので、これ系の議論をするときには、論点をちゃんと整理しないと、空中戦になって、単なる喧嘩になってしまうかなーと思いました。
個人的には国家は「生きる権利」を保障しているけど、市場は「元の評価」を保障する義務はないので、「もうこの漫画家に漫画を描かせない」は実行されてしまうが、
SNS時代は、市場の反応が過剰になり、事実上の終身排除になりがちなので、それは私刑とどう違うのか?に関しては、結構難しいなあ、、と思ってたりはします。