日本は働く低所得者に厳しい国 「翁カーブ」が描く現実 負担公平か
食料品の消費減税や給付付き税額控除について議論する「国民会議」が26日、始まった。議論の出発点となるのが「翁カーブ」と呼ばれるグラフだ。収入に占める税金と社会保険料の割合を示したもので、政府関係者の間で広く共有されている。生みの親である日本総研の翁百合・シニアフェローに聞いた。
◇
――翁カーブとは?
「2023年に税と社会保険料の負担率を世帯年収ごとに国際比較し、リポートにまとめました。グラフが示すのは、世帯年収300万~400万円ほどの子育て世帯の負担が特に重いことです。生活保護の受給基準を上回り、保険料がかかり始める所得水準の人たちです」
――何の負担が重いのでしょうか。
「年金保険料や健康保険料といった社会保険料です。所得税は、所得が少なければ税率は低くなります。一方、社会保険料は負担率がほぼ変わりません。この点は他の先進国でも同じですが、日本以外の場合、低所得層に対する児童手当などの給付が手厚く、負担よりも受け取る金額の方が大きくなっています」
「日本では、低所得だけれども働いて税金や社会保険料を納めている人たちへの支援が薄く、働く低所得者に厳しい国だと言えます。フリーランスも含めて、収入に対して負担率が公正なのか、真剣に検証する必要があると思います」
――どうすれば問題が解決しますか。
「持続的な賃上げに加えて、医療費など社会保障費の増加抑制、生活に余裕のある高齢者への応能負担の検討も必要です。そのうえで、『給付付き税額控除』を導入して、再分配を強化することは解決策の一つです。真に生活が厳しい層に的を絞って手厚い給付ができるしくみだからです」
「ただ、必要となる財源の議論はまだ聞こえてきません。税と社会保険料全体として、所得に応じた負担を求める『累進性』を強め、負担率のグラフをもう少し右肩上がりにする視点も重要だと思います」
「制度の導入には、所得を把握する必要があります。給与所得者はデータがあり、フリーランスなどはマイナンバーを活用して所得を把握する。できるところから始め、徐々に拡充していけばよいのではないでしょうか。スピードが大切です」
――問題が放置されてきたのはなぜですか。
「税制は財務省、社会保険料は厚生労働省といった省庁の縦割りが一因だと思います。働く低所得世帯への手当てを真剣に考えてこなかったことが、減税などの『負担減』を強く求める今の機運にもつながっているのではないでしょうか」
「デジタル版を試してみたい!」というお客様にまずは4カ月間月額200円でお試し
- 【視点】
直近の総選挙でも「社会保険料を減らす」「高齢者の自己負担を上げる」という政策に現役世代の一部の支持が集まりました。その背景に、この記事でも指摘されているような低所得だけれども働いて税金や社会保険料を納めている人たちへの支援が薄く、働く低所得者に厳しい国だということがあるように思えます。フリーランスも含めて、収入に対して負担率が公正なのか、検証される必要があり、それに基づく提案が政治から示されることが必要なのではないかと思います。
…続きを読む