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第11章 手を離さなかった夜 作:砂浜

そして、あの忌まわしい夜がやって来た。

祖母の容体はとても悪く、もう言葉を発することもできなかった。
日を追うごとに痩せていき、いつも床の布団の上に横たわっていた。

祖母は、私のすべてだった。
彼女がいなければ、私は生きていけなかった。

その夜、学校から帰ると、私はいつものように祖母のそばに座った。
祖母は何も言わず、ただ私を見つめていた。
私はその手を両手で包み込み、黙って座っていた。

日々が過ぎるたび、祖母の体は確実に弱っていった。
歩くこともできず、一日のほとんどを布団の上で過ごしていた。
それでも、その瞳には、変わらぬやさしさと愛が宿っていた。

私は毎日、そばに座り、手を握り続けた。
祖母はもう声を出せなかったが、沈黙の中で、
私は彼女の思いを感じていた。

その愛こそが、私の命の力だった。

彼女を失ったら、生きる意味を失ってしまう
そう思っていた。

あの夜
それが最後の夜になるとは知らずに
私はいつものように、祖母の手を握っていた。

私たちは、約束していた。
「私を置いて、どこにも行かないでね」と。
私は信じていた。
祖母が私を置いて行くはずがない、と。

母が部屋に来て、「もう寝なさい」と言った。
私は立ち上がろうとした。
そのとき、祖母が力なく、けれど確かに、私の手を握りしめた。

もう何日も声を出せなかったのに。
大きな瞳で私を見つめ、
その視線で「何か」を伝えようとしていた。

祖母は、言葉ではなく、目で私と話していた。
きっと「さよなら」を言いたかったのだと思う。
けれど私は、その現実を受け入れたくなかった。

翌朝、祖母はもうこの世にいなかった。
そして、私を連れて行かなかった。

私は、ひとり、取り残された。

あなたがこの文章を読んでいるなら、知ってほしい。

私はこの一行一行を、涙とともに書いている。

涙は雨のように落ち、心は張り裂けそうで、
私は何度も死に、何度も生き返っている。

祖母は、静かに目を閉じた。
私は布団のそばで泣き続けた。
今も、彼女を思って泣いている。
誰も知らない場所で、私は孤独の中、祖母のために泣く。

祖母がいなくなって、
私の中の一部も消えてしまったように感じた。
それでも、その手のぬくもりは、今も覚えている。
あのまなざしを、私は心に刻んだ。

それは、人生で最も深い悲しみだった。
けれど同時に、私は知った。
祖母の愛は、姿がなくなっても、
永遠に私の中で生き続けるのだと。

祖母がいなくなってから、
父と母の家は、二度と静けさを取り戻さなかった。
家の中には、重く冷たい沈黙と悲しみが満ちていた。

朝、目を覚ますたびに祖母の面影がよみがえり、
涙は、私を少しも癒してはくれなかった。

母の厳しさは、私の心をさらに傷つけた。
それでも夜になると、私は日記を開いた。
祖母の思い出を書き続けた。
書くことでしか、あの愛を生かしておけなかった。

時が経ち、私は仕方なくその家の生活に慣れていった。
けれど、いつも感じていた。

この家に、私の居場所はない。

妹は、私の存在を喜んでいなかった。
私は活発で、おてんばで、
家の中は、衝突と沈黙に満ちていた。

学校でも、私は遅れを感じていた。
まわりの子どもたちは、すべてを知っているのに、
私は必死で追いかけるしかなかった。

何度も祖母に、「またあの家に帰ろう」と懇願した。
祖母はいつも言っていた。
「もうすぐ帰るわ」と。
けれど、私たちは二度と帰ることはなかった。

それでも私は、生きるために書き続けた。
日記に思いを綴ることでしか、息ができなかった。

たとえ母が日記を見つけ、
それを読んで私を傷つけたとしても、
私は書くことをやめられなかった。

書くこと
それが、私の深い痛みからの、唯一の救いだった。

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