高価な美術品も豪奢な調度品も、逆巻くルーンの炎に燃やし尽くされ、主を失った城は、戦いの余韻を包み込み、灰に還るのを待つのみ。
そんな中、アーチャーはある場所を目指して歩いていた。
だか、その歩みは頼りなく、いつもの背筋を伸ばして堂々と歩く彼の姿とは、掛け離れたものだ。
衛宮士郎との闘いの後、ギルガメッシュの急襲から士郎を庇ったアーチャーは、ゲート・オブ・バビロンの宝具によって現界が危うくなる程のダメージを負っていたのだ。
そんな彼がわざわざ向かうのは、この先にサーバントの気配を見つけたからだ。
霊体であるサーバントの本能から、アーチャーは傷を治すための魔力を欲していた。
しかし、普通の人間から魔力を吸い取るような真似を、正義の味方を目指した彼が出来る訳がなく、傷を負った体ではその気配に一縷の望みを掛けるしかなかった。
実の所、自分とは違う道を歩み始めた衛宮士郎を認めてしまった時点で、アーチャーはこの聖杯戦争に参加した目的を失っている。
にもかかわらず、消えずに自分に出来る限りの行動を起こそうとしているのは、自身との闘いで、彼が摩耗して忘れ去ったと思っていたものが僅かながらも呼び起こされた結果なのかもしれない。
アーチャーが目指すその先では、壁に背を預け、自身が放ったルーンの炎が燃え盛る様を眺めるランサーがいた。
アーチャーの元マスターであり現セイバーのマスターである遠坂凜を逃がした彼は、マスターである言峰綺礼に自害を命じられ、自身のエモノで心臓を貫いたのだった。
皮肉にも神話の再現であるかのように、ゲイ・ボルクによって貫かれた心臓からは未だに血が滴り落ちている。 ランサーがいかに生き延びる事に特化していようと、その心臓を刺したのは、彼自身の呪いの魔槍なのだ。
流石の彼も座に還るのは時間の問題だろう。