クーフーリンの暴走
クーフーリンが暴走した時は裸の処女を集めたそうですね/槍弓でランサーがバーサーカー状態になりそれを鎮めるアーチャーの話withダヴィンチちゃん、偏差値の低いギャグです!/いつもブクマや評価ありがとうございます!!お蔭様でデイリー59位&女子に人気36位89位をいただきました!!^^
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激しい爆炎とともに地が割れ、土埃が舞い上がる。
爆心地から退いたレオナルド・ダ・ヴィンチは砂がこべりついて汚れた髪を払い、幾つもの傷を刻まれた杖に視線を落としてやれやれと言わんばかりに首を振る。
戦闘において武器に傷がつくことを気にしてなどいられない。頭脳労働派の魔術師だとしても1戦闘員として覚悟は決めてあるダヴィンチは、それでもどこか呆れたような色を隠さなかった。
なぜならこれは敵との単純な戦闘ではないからだ。今も何人ものサーヴァントを相手取り、呪いを帯びた紅棘を振る青い武装を守った槍兵に、ダヴィンチは仕方の無い子供を見るように頬を膨らませた。
その時ダヴィンチ同様一旦撤退を図った男が傍らに降り立つ。
赤い外套をボロボロにして汗を拭う弓兵のサーヴァント、エミヤにダヴィンチは気安く笑って肩をすくめる。
「まるで止まらないねー」
「呑気なことを言ってる場合かダヴィンチちゃん!このままでは周辺の村にも影響が出る!抑えるのも限界だぞ!」
ランサーのクーフーリンが暴走するきっかけは何だったか、たしか敵があまりにも卑怯な戦法を取ったとかほんのささいな事なのは覚えている。
気のいい兄貴肌は彼方へと消え、ランサーは怒りに支配されてまるでバーサーカーへクラス替えしたかのように暴力的な力を発揮した。
彼を激怒させた敵を瞬く間に屠ったところまでは良かった。しかし問題は、その程度ではクーフーリンは収まってくれなかったのだ。
体内に暴れ狂う熱を発散させるように、大地や目に止まるもの全てへ槍を振るい、それを邪魔する仲間へも見境がない。
まだ余力のある後衛と変わったがまだ披露の色が濃いエミヤに、ダヴィンチは豊かな髪を揺らす。
「んーそうは言ってもねぇ、クーフーリンの暴走は伝承に残るほど苛烈なものだから……そうだ!鎮める方法があった!エミヤくん、服を脱ぎたまえ!」
「なんでさ!!」
弾かれたようにこちらを向くエミヤへまったく悪びれずダヴィンチは美しい微笑浮かべた。
今もドカンドカンと激しい戦闘音が鳴り響く戦場を前にして、一体何を言うんだ君は!?という様子がありありなエミヤに、英雄伝承を詳しく知るダヴィンチは確かに伝説に残っている方法とやらを披露する。
「鎮める方法も現代に残っているのさ。曰くバーサーカー状態のクーフーリンを鎮めるには、裸の処女を集めたそうだ」
「…それで鎮まるあいつは馬鹿なのか」
「でだ、今回参加しているメンバーは服を脱ぐよう説得するより、彼女ら自身に力づくで止めさせる方が早そうだからね」
エミヤのクーフーリンを見る目に含まれる尊敬の値が著しく下がったところで、今も戦火の中にいるサーヴァントに視線を向ける。
伝説の女海賊、影の国の女王、軍神の化身、マスターへ純愛(?)を燃やす姫、マスターの母(?)…確かに今もランサーが五体満足な事に感心を覚える顔ぶれだ。
「しかし、やはりこんな所で全裸というのは…」
「恥ずかしい?安心したまえ!そんなこともあろうかと、この万能可愛いダヴィンチちゃんが最終兵器を持っているからさ!これならば脱がずともクーフーリンの暴走を止めるには十分な効力を発揮するはずだ!」
「準備がいいな、どれ…」
渋るアーチャーにダヴィンチは得意げに胸を張って懐からメモを取り出す。
さすがカルデア1頼りになるサーヴァントだと、エミヤはダヴィンチが差し出すメモを受け取る。そしてその内容へ軽く目を通した瞬間、アーチャーは秘密兵器を地面にパシーンと叩きつけた。
「言えるか!!」
「やっぱり?でもエミヤくんが言えないなら仕方ないな。あーあ、これが一番穏便に済ませられる方法なんだけどなぁー」
内容を見た瞬間顔を茹でダコのようにして叫ぶアーチャーに、予想していたダヴィンチは動じることなくメモを拾い上げると汚れを払う。
まだカッカと顔が熱いアーチャーは、あからさまにこの事態を収束させる手段として最も被害が少なく、最も楽な方法を惜しがるダヴィンチの口ぶりへぐっと歯噛みをした。
リミッターが外れて全力を振るうクーフーリンに怪我がないこれまでが奇跡、いつ動きを止めるだけが通用しなくなるかわからない。
これ以上ないベストな手段を提示された正義の味方は、まだ葛藤に手を震わせながらダヴィンチの手からメモを奪い取った。
中心地に戻ったアーチャーは絶えず上がる土埃に顔をかばう。
まるでミサイルが延々と爆裂しているような凄まじさ、やはりこの世で最も怖いものは女性だな…と少し遠い目になりながら、アーチャーの瞳は猛攻を受けながらも槍を振るうランサーを見つけた。
「ランサー!止まれ!!」
アーチャーが張り上げた声に、ランサーはまるで聞こえていないかのように何の反応も示さない。
戦闘モードのクーフーリン独特の有様、目元に幾重もの深い溝を刻んで瞳孔は針のように細まっている。
そんな姿にただの人の子の体が怖気づきそうになるのをぐっと堪え、アーチャーは手にしたメモを握りしめると書かれた内容を全力で叫んだ。
「止まってくれたら…ッ今夜、私を好きにしていいから!!」
瞬間しん…と静まり返る戦場。
チクチクと刺さる視線の痛さ、そして予想をはるかに超えるあまりのいたたまれなさに、アーチャーのガラスの心は悲鳴を上げる。
しかしその中で、クーフーリンは他のサーヴァントに襲いかかる寸前で動きを止めていた。
「ほら!反応したよ!畳み掛けるんだ!」
目ざとく変化を発見し、形のいい目にキュピーンと光を携えたダヴィンチは崩れ落ちそうになるアーチャーの背を支える。
ただの静止では止まらなかったくせに何故こんな馬鹿げたことには反応するんだ!!と激しく抗議したいアーチャーに、ダヴィンチは喝を入れるようにバシンと背中を叩き、それに触発されたエミヤはメモをぎゅっと握った。
「あ、うッ…何をしてもいいぞ!どんなプレイだって思いのままだ!拘束したって複数プレイだって!ああどんなことだってしてやろうとも!コスプレだってやってやるさ!猫耳メイド制服医者にスーツ!イメクラだって付き合ってやるぞ!『えっちな私へ…ご、御主人様がおしおきしてください』くらいいくらだって言ってやる!他にも体位だって君が求めるものをしていい!正常位だろうがバックだろうが48手コンプしてやろうじゃあないか!だから…っだから止まるんだ!!」
誰も言葉を発するものはいなかった。
まるで特異点『強烈視線氷河期』が出現したように、ただただエミヤは注がれる視線にガラスの心をドスドスと貫かれ、いっそ消えたい…と願う。
しかしその凍りついた場の口火を切ったのは、これまでどんな静止の言葉も振り切り、暴れ回っていたランサーの真っ赤に染まった顔からこぼれ落ちた声だった。
「……マジで?」
ぷしゅーと顔から蒸気が上がり、今なら風呂桶どころか湖ですら一滴の水も残さず蒸発させられそうなほど興奮に体を熱くさせたランサーは、鼻から血をたらりと流して硬直していた。
なんとも欲望に忠実すぎる有様に怒る気も起きず、サーヴァントの手から一人また一人と武器が下ろされていく。
そんな大成功を収めた作戦に、発案者のダヴィンチはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜びながらとうとううずくまってしまったエミヤの背中を叩いた。
「やったよ!大成功だよエミヤくん!君の魅了スキルはクーフーリンに限り女神も超えるよ!」
「う…あ…ぁ」
「まるで怒り狂う王蟲を鎮めるナ〇シカのようじゃないか!」
「ナウ〇カを侮辱するな…」
日本人サーヴァントとして不適切な名作引用に最後の力で苦言を洩らしたアーチャーは、いっそ自分こそ暴れ回りたいと顔をおおった。
おまけ
迷惑をかけたマスターに謝罪したランサーは、歩調に隠しきれないウキウキを滲ませてまだうずくまっているエミヤを見下ろした。
「なぁお前が言ってたことって…マジか?」
もちろん先ほどのことは自分の伝承を踏まえたダヴィンチの作戦であり、エミヤはカンペを読んだだけに過ぎないとランサーは知っている。しかし万が一でもチャンスがあるなら貪欲に確認しておいた方がいい。
ほぼ諦め半分のランサーの問いかけに、もぞっと体を起こしたアーチャーはキッとはた迷惑な男を睨むとすぐに視線が逸らす。
「う、出来ればでいいんだが…」
予想していなかった反応に息を呑むランサーの前で、アーチャーはまだ羞恥による涙を滲ませながらランサーを上目遣いに見つめた。
「優しく、してほしい…」
「悪りぃ、ちょっとタンマ…」
「なぜ消える!!??」
サァァァ…と金色の粒子になって消えるランサーは、心臓の位置を押さえつつそれはそれは幸せそうな表情だったらしい。