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【(槍+術)×弓】 犬ふとん/Novel by イヌダ

【(槍+術)×弓】 犬ふとん

6,859 character(s)13 mins

めっきり寒くなったのでソファでワンコを腹に乗っけながら寝てたらすごく幸せだったので、エミヤんにも体験させたくなったといういつものエミヤもんぺの短文です。三人カポー要素は低めです。体温設定は勝手な想像なので信じちゃ駄目です。犬シリーズのマスターはぐだ子(♀)ちゃんです。

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 カルデアの暖房設備が壊れた。

 某英雄と某英雄が手合わせして興に乗った挙句に宝具を繰り出しやがって修練場を突き抜けてエアコン設備を破壊してしまったのだ。幸いその二人には魔術の心得があるので責任持って修復中である。
 ただ修復するまでには数時間かかる。
 そしてカルデアの所在地は南極である。最低気温マイナス80度、最高気温マイナス30度の極寒の地である。
 当然、すごく寒い。
 地下施設ゆえに外気ほど寒くはないが、それでも寒い。サーヴァントはともかく、人には耐えられない寒さだった。暖房がなければ凍え死ぬレベルだ。
 それ故に、本日の業務は修理が終るまで休止し、職員全員を一箇所に集めて暖をとることにした。

「なるほどな」
「そら災難だな」
「ホントだよー」

 ランサーとキャスターのクー・フーリンは端末でマスターに呼ばれて食堂に来たら、人の多さと中の変わり様に驚いた。
 食堂にあった机と椅子を半分ほど片付けられ、いくつもの石油ストーブと電気コタツが置かれていた。職員皆一様に厚着をして、ある者はコタツの中でまどろみ、ある者はストーブの前でカード遊びに興じていた。カウンターには源頼光とタマモキャットが甘酒と豚汁といった体が温まるものを振舞っている。
 変貌の理由をマスターから聞かされて二人は納得する。説明したマスターもモコモコとした和風の上着を羽織りマシュと並んでコタツに入っていた。その手には甘酒の入った湯飲みが握られている。室内温度は10度以下と低いのに顔色は良い。十分体は温まっているようだ。
「でもかまくらの中にいるみたいでちょっと楽しい」
「私もです」
 二人してニコニコと笑っている。職員達もこの後のメンテが悩ましいようだが深刻な顔をしている者はいない。ちょっとした冬のレクリエーションとなっているようだ。
「やあ皆!焼き芋食べる?出来たばかりでホカホカだよ~」
「食べる!」
「頂きます!」
 席を巡回していたブーディカから差し出されたのは軽く焦げ目がついた焼き芋だった。歓声を上げる二人にならってクー・フーリン達も受け取る。半分に割ると、もわりと上がる湯気と鮮やかな黄色が見えた。かぶりつくとホクホクとした食感と甘みが広がった。少々熱かったが寒い中では熱さもご馳走だった。
「あま~いw美味しい~ww」
「はいww」
「いい焼き加減だな」
「おう」
 立香とマシュはハフハフ言いながら、クー・フーリンはガブリと食べている。
「でもさ、どうやって室内で作ったの?焼き芋といったら落ち葉とか焚き火の中で作るもんでしょ」
 ハフハフ言いながら質問するマスターにブーディカはニコリと笑って答えた。
「お煎餅とかお菓子が入ったアルミの缶箱に空気穴を開けて、中にホイルを巻いたお芋を入れて石油ストーブの上に置いて焼いたのさ。直接ストーブに置くより焦げにくいし、一度に何本も焼けるんだって」
「へ~、アイディアですね」
「エミヤのアイディアだよ」
「あ、納得」
「エミヤ先輩流石です」
 二人はふんふんと頷いた。あの弓兵は庶民的な生活の知恵にも長けているのだ。
「そういやぁ、こういう場面じゃ決まって張り切るアイツが見えねぇな……」
「俺たちが呼ばれたのはそれが理由か?」
 ランサーが見回しても食堂にはエミヤの姿は見当たらなかった。常ならば率先して豚汁や甘酒を皆に配り歩いている頃だろう。そのくせ、コタツやストーブなど、エミヤが投影したと思われる品々が並んでいる。なのにいないということは何かあったのかとキャスターが問えば、マスターは「ご名答」とため息をついた。
「エミヤってば張り切りすぎてくれちゃったんだよねぇ……」
「カルデア内の室内温度はセントラルヒーティングで管理していますので、個別の暖房器具はほとんど無いんです。まさかボイラーの主装置と予備も同時に故障するとは全くの想定外だったので……」
「数少ない暖房器具は人が離れられない現場に譲って、ここにあるのは全部エミヤが投影で出してくれたの。ついでに私とマシュが着ているこの上着もエミヤが出してくれた」
「丹前といって中に綿が入っているそうです。とても暖かいです」
 二人がお揃いで着ている丹前は袖も丈も体を包み込む長さで、赤地に絣模様がはいった可愛らしいものだった。褞袍とも言うらしい。武器以外の物を投影するのは魔力を酷く消耗すると聞いていた。服だけならともかく、これだけの数の暖房器具を投影するなど……、完全に容量不足だと思われる。
「こんだけ色々出したらガス欠になんだろ」
「うん。魔力切れ起こしてフラフラになってた」
「だろうな」
 相変わらずの献身振りに揃って苦笑した。
「だから自室で休むよう言ったの。頷いてくれたけど、エミヤのことだからどっかで無茶してないか心配なんだよね。兄貴達様子見て来てくれない?あと明日も休みでいいからねって伝えて欲しいの」
「了解」
「任せとけ」
 二人とエミヤがそういう仲なのは広く知れ渡っている。割り振られて当然の役割だ。二人は快く引き受けた。
 食堂を出る際に「エミヤのとこ行くならコレ持って行って!」とブーディカから保温袋を渡された。中にはホイルに包まれた焼き芋と保温ボトルに入った甘酒と豚汁も入っていた。「愛されてんなぁ」とランサーがこぼし、「だな」とキャスターも同意する。この手の中にある暖かさがエミヤに伝わるといいと思った。


 * * *


「あんだけ出せばさすがに大人しく寝てると思うぜ。アイツの部屋に行くか?」
「そうだな、だが念のため呼んどくか」
 キャスターは口笛を吹いて使い魔を呼んだ。普段から現界してたがこの寒さに辟易して消えていたのだ。マハとセングレンは若干迷惑そうな顔をしている。モフモフの狼犬の使い魔といえど寒いのは辛いのだ。
 不満気な二匹にエミヤの場所を探せと命じる。大好きなエミヤのところと聞いて、二匹は耳をピンと立てて小走りにかけた。
 二匹のあとをついて辿り着いた場所はエミヤの自室前だった。二匹はカリカリとドアを引っかいて『ここにいる』と訴えた。クー・フーリンが開閉ボタンを押すと自動扉が開いた。鍵をかけてなかったらしい。薄暗い室内に入るとひんやりとした冷気が頬を打つ。吐く息が白い。冬木で過ごした正月の外気温並みの寒さだった。
「冷凍庫かよ……」
「こりゃ人間なら凍死するレベルだな」
 部屋の主は大人しくベッドの上で寝ていた。人と違って息はしてないので胸は上下しない。まるで死人のようだ。もちろんサーヴァントだから死んではいない。だがこの寒さの中で寝ていたら死んでると勘違いされるレベルだ。マスターが見たら「霊安室かよ!」と切れること請け合いだ。
 サーヴァントは極寒の中でも問題ないが温度差を感じない訳ではない。カルデア内では人間の時と同じ状態で現界しているので人間と同じ体温を維持している。なので外気と体温の温度差があれば『寒い』『暑い』と感じ取ることが出来る。人間と違うのはそれが体調に変化を与えないだけだ。問題はないが気分は違う。人ならば寒ければ『温まりたい』だとか『寂しい』と思うものだ。心の動きは人間もサーヴァントもさほど違いは無い。自分のために電気ストーブの一つも出さないエミヤを見たらマスターは間違いなく切れるだろう。そして悲しむだろう。自分達が様子を見に来て正解だ。
 ベッドに近寄り頬に触れる。室温同様ひんやりしていた。体温を人並みに保つ魔力もないらしい。全く起きる気配がないのはこちらに害意がないからか、さもなくばそれほど魔力切れが深刻なのかどちらかだ。恐らく両方だろう。起きる気配のないアーチャーの様子に心配になったのか犬どもも「くぅん?」と心配気な声を上げた。
「大丈夫だ。寝ているだけだ」
 キャスターはポンポンと二匹を撫でた。エミヤの状態は魔力が空っ穴だが消滅するほどじゃない。10段階あるとしたらラスト1段残っているレベルだ。大人しく寝ていれば明日には4段階くらいには戻り通常業務をこなせるだろう。
(だがここまでやるかね)
 献身の加減を知らぬエミヤにため息をつく。ランサーもバリバリと後ろ頭をかいた。二人の脳裏にあるのは『馬鹿が』の三文字だ。もちろんエミヤに向けての感想だ。
「ったく世話の焼けるヤツだぜ」
「全くだ。さてどうしたもんかね……」
 魔力供給するには抱くのが一番だ。しかし弱って意識のない相手を抱くのは気が進まないし後がうるさい。血を飲ませても後味でバレて後がうるさい。魔力のこもったルーン石を飲ませるにも寝ていてはできない。
 キャスターはとりあえず部屋を暖めることにした。このまま寝かせるのは寒々しすぎる。炎や松明を司るKENのルーン石を取り出し空中に放る。それに保護のEOLHのルーンを発動させて室内を巡らせた。こうしておけば直に温まるだろう。
 さて次は魔力供給か……と思ったところで、いつの間にかランサーが布団を剥いでエミヤの黒い上下の寝巻きを脱がしていた。
「おい……」
 ランサーの行動にキャスターは驚いた。キャスターは非常事態以外で強引な魔力供給はマナー違反だと考えている。拗ねて後が面倒だし、胃袋を捕まれている手前できるだけ避けたい。槍の自分も同じ考えだと思っていたのに強攻策をとるらしい。
 驚くキャスターを余所に、ランサーは自らも礼装を解いてベッドに入りパンツ一丁になったエミヤを抱き込んだ。「つめてっ!」と言いながら布団を被る。
 そしてキャスターを見てイラだった声をかけた。
「おい、何してんだよ。お前も脱いで入ってこいよ。お前らもだ。オレ等でこいつを暖めるぞ」
 ランサーの意図を理解してキャスターはハッとする。自らも礼装を解いてベッドに潜り込む。犬にも「ヨシ」と言って足元に潜り込ませた。二人と二匹でエミヤを暖める構図だ。
 魔力に余裕のある二人は体温を上げてエミヤに体温を分け与えながら魔力も馴染ませる。体液交換をしないので少しずつだが肌を合わせていれば魔力を譲渡することが出来るのだ。
(そういやこんなやり方があったな……)
 冷えた人間を暖めるには裸になって体温を分け与えるのが常道だ。サーヴァントとして効果的な方法をと考えるあまり人であった頃の方法を失念していたようだ。
 エミヤを挟んでランサーと目があった。
「オレがコイツを抱くと思ったか?」
「まあな」
「寝てるときにヤったら後が面倒だろ」
「分かってる。だからどうすっかと考えてたが……このやり方は盲点だったな」
「考え過ぎなんだよ。ドルイド様は知的になりすぎたようで」
「うるせぇ」
 布団の中でランサーを蹴るとくつくつと笑われ、使い魔には迷惑だと足を甘噛みされてしまった。
「この方法はレアルタ式だとよ」
「何だそりゃ」
「マスターが言ってたぜ。ちとまどろっこしいが悪くねぇな」
「ああ」
 ランサーは欠伸をして「眠ぃ」と目を閉じた。キャスターも温さに瞼が重くなる。抱き込んでいるエミヤは少しずつ温まってきた。触れていた大理石に体温が移るように、人肌の温度に近づいていく。これで目覚めたら、まるで自分達が命を吹き込んだピグマリオだ。そんな益体もないことを考えながら目を閉じた。


 * * *


 エミヤは薄暗いはずの室内で熱源を感じ、ふと目覚めた。
(もう修理が終ったのか?)
 目を開けると部屋は薄暗いままだったが松明のようにオレンジ色に輝く石が室内をゆっくりと回っていた。まるで小さな太陽だ。
(ルーン石か……キャスターの仕業だな)
 そう言えば布団の中が妙に温い。ついでに言えば、足元はちょっと硬い毛だがサラサラのポカポカだし、両隣もサラサラしっとりとした感触にポカポカだ。更に言えば腰と胸元をゆるく拘束されて重みを感じる。不本意だが非常に慣れた感触だ。すぐに正体が分かった。
(二人とワンコさん達が潜り込んでいるのか……)
 両隣には裸のクー・フーリンが二人、サラサラとした感触は二人の髪の毛だ。自分が裸なのも気付いたが驚くには彼等との接触に慣れすぎている。辛うじて下穿きを身に着けていることから、二人は体温を分け与えて魔力供給として肌を合わせてくれているのだと理解する。こちらが十全な時は多少の無茶をするが弱っている時は驚くほど紳士的な面を見せる時がある。
(後の返礼が怖いがな)
 とりあえずは深い感謝を抱きながら二人の寝顔を見る。ランサーは少しだけ口を開いて無邪気とも言える寝顔を晒していた。キャスターは目元の皺と口を閉じている分だけ大人びた寝顔だ。二人からは僅かにタバコの臭いがする。不快感はない。二人の体臭と相まってむしろ安心すらする。逆にタバコの臭いがない二人なら別人だと警戒心を抱くだろう。料理の邪魔をするタバコの臭いは嫌いな方だったのに慣れとは恐ろしいものだ。
(温い……)
 布団からはみ出る顔は相変わらずひんやりとしているが布団の中はぬくぬくだ。二人は常より体温を上げている。まるで電気あんかのような温さだ。しかも足元では「くぅくぅ」「すぴすぴ」と可愛らしい寝息をたてるワンコさん達がいるのだ。普段からブラッシングしている毛は多少硬いがサラサラのモフモフだ。足が触れているだけで幸せな気分になる。
(何とも贅沢な犬布団だ……)
 温かい布団に温かい体温、可愛らしい寝息に、慣れ親しんだニオイ……。眠る必要がないサーヴァントでも眠気に誘われる。どんだけ腑抜けたのかと複雑な心境だが眠気に襲われているのは事実なのだから仕方ない。
(出たくないな……)
 魔力は三分の一ほどに回復している。動ける程度に回復したのだから二人を起こして礼を言うべきだろう。食堂の様子も見たい。だが心地よくて布団から出る気が起きない。いつまでも二人と二匹の体温をぬくぬくと堪能していたくなる。
 考えてみれば、血のニオイも、性のニオイもさせずに、こうして裸で同衾するなど初めてだ。こんな穏やかな気持ちで触れ合うなどとても貴重な気がする。もう少し堪能していたい。触れ合う素肌が心地よくつい身を寄せてしまう。
 しかし身じろいだことで二人を起こしてしまった。
 ランサーとキャスターはもぞりと体を起こしエミヤを覗き込んだ。ランサーはするりとエミヤの首元を撫でて「ん、あったけぇ」と頷いて頬に唇を落とし、キャスターも「まあまあ戻ったな」と頭を撫でて額に唇を落とした。まるで幼子にする仕草が照れくさくて奥歯を噛んでしまう。
「その……礼を言う」
「水臭いこと言うんじゃねぇよ」
「気にすんな」 
 二人はくしゃりと笑んでエミヤの体をぽんと叩く。
 足元の二匹も身を起こして布団の上に身を乗り出した。ペロと差し出したエミヤの手を嘗めた。頭を撫でてやるとふりふりと尻尾を振ってくれるのが愛らしい。
 エミヤは礼を口にしながらも、二人と二匹が起きてしまって温もりが急速に離れていくのが残念だった。
「マスターが明日は休みでいいってよ。あんま無茶すんなよな」
「預かった焼き芋や豚汁があるぜ。食うか?」
 二人の声にも生返事で返してしまう。
 覇気のないエミヤを見てランサーとキャスターは顔を見合わせた。
「ボンヤリしてんな。まだだるいのか?」
「ちゃんとした魔力供給すっか?」
 心配と色のまじった声に背を向けてエミヤは枕に顔をうずめた。
「アーチャー?」
「どしたよ」
 くしゃくしゃと後ろ頭を撫でられて、エミヤはぼそりと呟いた。
「……寝る」
 もっとこの中でまどろんでいたいのだと口にするのは抵抗があったので端的に希望をのべるに留める。
(まだ十全に魔力が戻ってないのだからおかしくないはずだ)
 そう自らに言い聞かせて熱が集まる頬を枕で隠した。
「……」
「……」
 このまま趣味と実益をかねた本格的な魔力供給に雪崩れ込むと思っていた二人は肩透かしを食らう。どこまでも合理的な弓兵にしては予想外の発言だった。
 だが自分から滅多に休もうとしない弓兵が「休む」と宣言するならそれなりの理由があるのだろう。それを邪魔するほど野暮ではない。少々面白くないが付き合ってやるのが男の甲斐性というものだ。
 二人は諦めて布団の中に戻ることにする。
「ほんじゃま、今日は添い寝に徹しましょうかね」
「明日覚えてろよ」
 うつぶせに寝るエミヤの背に重なるようにしてランサーとキャスターの手が回される。ベッドから降りていた犬達も再び足元で丸くなった。
 再び訪れたぬくもりにエミヤは深い安堵のため息をこぼし瞼を閉じた。

 


(終っとけ)



昔古い事務所のときに石油ストーブ使ってました。そこで焼き芋をするのが冬のお楽しみでした。ホントにホクホクの美味しい焼き芋が出来るんです。美味しかったなぁ。

Comments

  • July 4, 2022
  • (`_´メ)
    November 10, 2020
  • そー
    November 25, 2018
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