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【キャス弓】犬とわたし2/Novel by イヌダ

【キャス弓】犬とわたし2

5,808 character(s)11 mins

犬ネタ書くのめっちゃ楽しい。これも実話を元にしてます。※勝手に使い魔に名付けてます。

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「しまった、塩が足りねぇ……」
 工房にて薬を調合していたキャスターのクー・フーリンが頭を掻いた。
 ケルトのドルイドと言えば薬師でもある。傷薬から惚れ薬に毒薬までとその知識は幅広い。今回はちょっとした魔除の薬を作っていた。塩はその必需品なのに補充し忘れていたらしいく量が足りなかった。しかし補充しに行くにしても鍋に火をかけているので中座したくない。 それならば……。
「おーい、セングレン」
 キャスターは後ろで控えていた二頭の使い魔のうち片方を呼ぶ。真っ白な狼犬は見分けがつかないほどよく似ている。現界が長くなると名前がないのは不便になってきたので、マハ、セングレンと名前が付けられていた。クー・フーリンの生前の愛馬の名前からきている。マハは灰毛、セングレンは黒毛の馬で全然色も見掛けも違うけれど、愛着のある二頭の名前を可愛い使い魔に名付けたのだ。見かけは一緒の二頭なので、理知的で物静かだったセングレンと、気が荒いが愛情深いマハに似た性格に近いほうをそれぞれ名付けた。
 セングレンと呼ばれた狼犬はキャスターの足元にやってきてお座りをして命令を待つ。
「食堂へ行って塩をもらってきてくれ」
 そう言って、キャスターはメモを入れた瓶をセングレンに向けて差し出すと、セングレンは噛み砕かないように慎重に噛んだ。そして立ち上がり食堂へ向かって歩き出す。
 マハと比べて落ち着いた性格のセングレンはこういう"おつかい"にはぴったりの性格をしていた。実際何度もおつかいをしている。
 慣れた調子でカルデア内を小走りでいく狼犬に誰も驚かない。それどころか『わんこのおつかいだ~』とほっこりさせてくれると職員の間で密かに人気だったりする。歩くたびにふりふりと揺れる尻尾が癒されると評判だ。

 食堂に辿りついたセングレンは床に瓶を置き「ワン!」と吠えた。
 するとカウンターからアーチャー・エミヤが顔を出し、セングレンを見て目元を和らげた。
「やあいらっしゃい、今日は何のおつかいかな?」
 エミヤは厨房からでてきてセングレンの傍にしゃがみこみ、わしゃわしゃと頭を撫でる。
「君はセングレンかな?」
 エミヤの言葉にセングレンは正解だと尻尾を振った。エミヤは見ただけで二匹を区別することは出来ない。だが懐こいマハならもっと撫でろとせがむはずだと消去法で分ったにすぎない。いつか見ただけで区別出来るようになるのが密かな目標である。
 拾い上げた瓶の中にはメモが入っており『瓶いっぱいに塩を入れてくれ』という内容が書かれていた。
「全く……、ドルイドたるもの工房の在庫管理くらいできなくてどうする。知性が増しても戦闘民族のガサツさは治らんのだな」
 エミヤはブツブツ言いながら塩を用意するために厨房へ戻った。

 セングレンは食堂でお座りをしてエミヤを待つ。厨房にまで入ろうとはしない。衛生面で入っていいのは食堂までと教えられているからだ。
(良いニオイがする……)
 厨房からはエミヤが仕込んでいる肉の良いニオイが漂ってくる。しかしセングレンは動じない。良い姿勢のままエミヤを待つ。
(それに"エミヤ"ならオヤツをくれるはずだ)
 先ほど瓶を渡した"エミヤ"は主人のクー・フーリンが群れの一員に近い扱いをしている男だ。たまに主人と寝所を共にしているし、工房への出入りも許している。もう群れの一員ではないかと思うが、エミヤは別の棲家を持っているのでまだらしい。エミヤは遊びに来るときはよく美味しいオヤツをくれるし、遊んでくれるしブラッシングもしてくれる。早く群れの一員になって欲しいというのがマハとの共通意見だ。
 エミヤはいつも『おつかいのご褒美だ』と言って首にオヤツをぶらさげてくれる。だから、いくら厨房から美味しそうな肉のニオイがしても、涎が咥内に溜まっても、じっと我慢して待つ。
 だが、ふと、甘い美味しそうなニオイが食堂の中からもするのに気付いた。
 ニオイの元を探すと、テーブルの上にピンクの丸い何かが置かれているのに気付いた。本来なら犬は2色型なので色の区別は出来ないのだが、使い魔としての性質上なのか、セングレンは人と色覚も同じものを備えていた。
(これは何だ?)
 この食べ物にしては色彩豊かなものからは砂糖の甘い香りがした。よく見てみると、表面のピンクは米のようにも見える。よく嗅ぐと米に近いニオイがする。米なら食べたことがある。"オニギリ"というものをエミヤがくれたことがあるからだ。
(オニギリなのか?それにしては甘い香りがする……)
 これが何かは知らないが甘くて美味しいものに違いない。この不思議な食べ物からはエミヤのニオイがするからだ。いつも美味しいオヤツをくれるエミヤが作ったものなら美味しいに違いない。それが机の上に何皿もあるのだ。
(……)
 甘いもの好きのセングレンはダラリと涎を垂らした。
 きょろりと周囲を見回した。誰もいない。エミヤもまだ厨房の中だ。嗅いだところ薬や毒のニオイはしない。量からして皆のオヤツ用だろう。主人以外からエサを貰うのは問題だが、無造作に置かれた食べ物を勝手に食べるなら狩りと一緒ではないだろうか?
 我慢が出来なくなったセングレンは机に乗り出し、パクリと一つ食べてみた。
(~~~甘い!美味しい!!!!)
 このピンク色の米はお菓子だったのだ。甘くて柔らかくて何とも言えない触感だった。
(もっと食べたい!)
 あまりの美味しさに味をしめ、今度はいくつかいっぺんに食べてみた。口の中いっぱいに甘みが広がり、なんとも幸せな気分を味わう。
 だが、次の瞬間、息苦しさに襲われた。
(え、何これ!苦しい!!息が出来ない!!!!)
 苦しさの余りセングレンは床に倒れてジタバタと暴れ始めた。
「セングレン?」
 物が倒れる音がしてエミヤが厨房から出てくると、床に倒れているセングレンが目に入った。
「どうしたッ?!」
 慌てて近寄り状況を確認する。セングレンは苦しそうにもがいている。エミヤは机の上に置いていた道明寺がいくつか消えているのに気付いた。
「まさか……」
 エミヤはセングレンの上顎と下顎に手をかけ、パカリと大きく口を開けさせた。喉を覗くとピンク色の物が気道を塞いでいるのが見えた。道明寺は餅米で餡子を包んだ菓子だ。粘着力はそれほど強くないけれど複数個を一度に食べたせいで喉に詰まったらしい。
 エミヤはセングレンの口に手を入れて餅が取り出せないか試した。だが細長い顔をしているせいでエミヤの手では奥まで指が届かない。もっと長い箸などなら届きそうだが、怪我をさせやすいし、落として中に押し込んだら更に危険だ。
 どうするか迷っているうちに、もがいていたセングレンが痙攣しはじめた。
「いかん!」
 窒息性痙攣、脳へ酸素が行き渡らなくて誘発される痙攣だ。非常に危険な状態である。急いで餅を取り除かないと危ない。
「何かあったの?」
「どうしたのだ?」
 エミヤの厳しい声に厨房にいたブーディカとタマモキャットが顔を出した。
「ブーディカ手伝ってくれ!タマモキャットはキャスターのクー・フーリンを呼んで来てくれ!」
「分った!」
「超特急で行くにゃ!」
 状況を見た二人は直ちに動いてくれた。
「こうして大きく口を開いた上体で固定しててくれ」
「はいよ!」
 ブーディカにセングレンの顎を押さえててもらう。
「投影・開始」
 エミヤは掃除機を投影させた。掃除機で直接餅を吸い出す作戦だ。掃除機のコンセントをつなぎ、吸い口にに細長い筒状のノズルを装着する。
 大きく開かせたセングレンの口へノズルを差し込んでスイッチを入れた。
 ズボリ!
「取れた?」
「いや、まだだ」
 大きな吸い込む音がしたので成功したかと思いきや、犬の長い舌を吸い込んでしまったのだ。今度は舌を吸い込まないよう指で押さえながら、再度ノズルを差し込む。慎重に奥の方へノズルを向けて、スイッチを入れる。
 ズボリ!
 手ごたえを感じてノズルを抜き出して見ると、ノズルの中にピンクの餅が吸い込まれていた。今度こそ喉に詰まった餅を吸い出すことに成功したようだ。
「セングレン!」
 声をかけると、ぐったりと横たわっていたセングレンの顔をがピクリと反応し、ゲホッゴホッと咳き込んだ。ゼハゼハと息を繰り返し、おもむろにムクリと身を起こした。その顔はキョトンとしていた。自分に何が起きたかよく分ってないような顔だった。
 その様子を見てエミヤとブーディカは安堵の溜息をついた。
「もう大丈夫そうだね」
「ああ……」
 エミヤはセングレンの頭を撫でた。黒いビー玉のような目がエミヤを見つめている。無事で良かった。
 一安心したところでドタバタと足音が聞こえて来た。
「どうした!」
 駆け込んできたキャスターに事情を説明し、念のため様子を見てもらうよう伝えて、セングレンを引き渡した。


 その日の夜、エミヤはキャスターの元へ訪れた。
 室内に入ると、キャスターはベッドヘッドに寄りかかり本を読んでいた。狼犬達はその足元に寝そべっていた。いつも通りの光景に安心する。
「セングレンの具合はどうだね?」
「おう、昼は世話になったな。もう大丈夫だ」
 エミヤはキャスターの隣りに腰掛けると、マハとセングレンがエミヤの足元へ体をすり寄せてきた。人懐こいマハはいつものことだが、二頭ともというのは珍しい。二頭の頭を撫でてやる。
「セングレンも『ありがとう』ってよ」
「そうか……。君が無事で良かったよ」
 多分こちらがセングレンかなと思う方に話しかけて頭を撫でると、ペロペロと手を舐めてくれた。
「お見舞いがてらこういう物を持ってきた」
 エミヤはピンク色の和菓子を差し出した。昼に茶菓子と出されたものと色見が同じだ。
「昼のと違うのか?」
「同じ桜餅だが、昼にセングレンが食べたのは道明寺だ。もち米で餡を包んだ桜餅をそういうのだ。こちらは小麦粉で餡をくるんだ桜餅で長命寺という。これならば喉に詰まることはないだろう」
「ほう、なるほどな。お前ら良かったな!」
 キャスターは二匹にオヤツを差し出した。セングレンにとっては二度も美味しいものを食べられるのだから怪我の功名だろう。いつもより多めに尻尾を振っている。
 その様子を眺めながら、エミヤはポツリと言った。
「君達にオヤツをあげるのはこれで最後にする」
 キャスターは眼を見開いて驚き、人語の分る二匹はガガ――ンッ!とショックな顔をした。セングレンなど口からぽとりと餅を落としてしまった。
「昼の件か?ちゃんと叱っといたからもう大丈夫だぞ」
 キャスターがぺしんとセングレンの頭をはたいた。セングレンも反省しているというようにペタンと耳を垂れる。
 それを見てエミヤは「そうじゃない」と首を振った。
「元はと言えば二匹に人間の食べ物を与えて味を覚えさせてしまった私が悪い。最初から人間の食べ物を与えなければセングレンは桜餅に興味を示すこともなかっただろう」
「そうかもしれんが単にコイツの食い意地が張ってただけだ。気にするこたねぇさ」
「いや、私が犬の躾に無知だったばかりにセングレンには可哀相な目にあわせてしまった……」
「犬の躾って……、こいつら本当の犬じゃねぇからな?使い魔だからな?」
「二匹が使い魔だということに甘えて、何の配慮もせずオヤツを与え続けた私が悪い」
「配慮する必要なんざないだろ。本物の犬と違って何食べたって平気さね。こいつら雑霊だって食うぞ」
「それは能力であって嗜好ではないだろう。ちゃんと犬用オヤツやドッグフードを与えていれば良かったのだ」
「いやいやいや、使い魔にドッグフード食べさせる魔術師なんぞいねぇからなッ!」
「だが……」
 際限なく自分を責め続けるエミヤにキャスターはガバリと片腕で引き寄せられた。その白い頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。
「あ――ッ!落ち込むな落ち込むな!お前は悪くねぇから!!」
「しかし……」
 尚も言い募ろうとしたエミヤにセングレンとマハまでが圧し掛かる。
「クゥンクゥン!(私が悪かったの!エミヤは悪くないから!)」
「ワオワオオン!(エミヤのオヤツ食べられなくなるのヤダ!)」
 一人と二匹に圧し掛かられエミヤはベッドに倒れこむ。キャスターに頭を撫でられ、セングレンとマハに体をこすり付けられてもみくちゃにされた。
(重い……)
 腹と足に大型犬二匹、肩のあたりに大型成人男性一人、合計100kgを越すだろう。重いがモフモフに押しつぶされるのは悪い気はしない。良い毛並みをスリスリと寄せられるのは温かく心地良い。後悔に押しつぶされていた心が癒されるのを感じる。
 だが青い毛並の大型犬は癒すだけでは終わらない。エミヤの体を不埒にまさぐりながら唇を寄せてきた。
「こら、話は終わってないぞ」
 ぺちんと口を塞いだら手の平を舐められた。くすぐったくてざわりとする。邪魔だと手を握られベッドに押し付けられた。
 肉食獣の赤い目がエミヤを捉えた。
「お前さんさぁ、さんざん美味いモン食わせた後で食わせないって、その方が可哀相じゃねぇか?」
「む……」
 確かにその通りなのだ。自分のエゴで美味いモノの味を教えといて、危険だからと取り上げるのは、犬達に自分の失態のペナルティーを支払わせているようなものだ。
「一度ご馳走食って味を占めたら元には戻れねーんだよ。諦めろ」
 キャスターはニヤリと犬歯を見せつけながら噛み付いた。
(それは私も入っているのだろうか?)
 エミヤはそんなことを考えながら目を閉じた。


 後日、エミヤによる食べていい物or悪い物レクチャーが犬達に行われたそうな。



(終わっとけ)




これ、1と同じワンコがしでかした事件が元ネタです。父が無造作に置いた大福を三個いっぺんに食べて喉に詰まらせたらしい。姉の悲鳴で駆けつけたときは床に倒れて痙攣してました。急いで掃除機もってきて救助して助かったけど、私がいなかったらマジに死んでましたね。大福で死に掛けたワンコとして語り継がれてます。どんなに頭良くて警戒心強くても食欲には勝てなかったらしい。苦笑あが

Comments

  • あおい
    March 17, 2018
  • そー
    March 17, 2018
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