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ほぼ漫画業界コラム45【ある友人の話】

本日は番外編です。創作術でも漫画業界の話でもありません。まあ、僕の周りにいる変わった人を紹介する回です。それでも良ければ読んでください。

昨晩は前職の飲み会に参加した。結構な時間まで皆飲んでいて、最近はサクッと一次会解散なのがデフォだった僕にとって、サラリーマン時代の気分を思い出させるいい機会だった。話題は前職の人事についてとか、今やってる企画の話とかが中心だ。実際、前職と弊社の全力を賭けた企画も年末に始まる。

作家の立場になって前職の編集者達に担当についてもらうのは、変な感覚だ。彼らは僕にとって後輩であり先輩であり、取引先であり、担当さんでもある。そして僕のコラムの読者でもある。話題になるのは当然回顧録だ。毎週更新していたとき前職は戦々恐々としていたらしい。ただ入社時のエピソードはともかく、僕は誰のことも悪く書くつもりはなかった。名前を出すのは公人である編集長と経営者ぐらいだ。だが、昨日絡まれた。ある人間に猛烈に抗議された。「何故、俺を出さなかったのか!」と。今日は二日酔いだし、創作論を書く元気もない。何故か肩も重い。多分その人の生霊か何かが肩に乗っているらしい。なので彼のことを書こうと思う。

瓜生昭成(通称アッキー)というその男は、僕の同期に当たる人間で当時少年サンデーで一緒だった。イニシャルでも名前を出してなかったが、仲は良かった。彼は僕が人生で会ってきた中で最もキャラが立った人間だったので、興味本位でたまに飲みに行った。彼は元々、グラビア誌『sabura』出身で、毎夜六本木でパーティをするパリピだった。彼は生粋のナンパ師で女性の敵のような男だった。とんでもないエピソードが沢山あるが、その中でも一つ。彼は大学時代、毎日毎日イベントのために渋谷の交差点でナンパをしていた。半分事業化していたそれをヤクザの人に見咎められショバ代を払うように要求された。拒否した彼はヤクザに前歯を全部叩き折られた。だが、二時間後。彼は血が滴る口をマスクで隠しながらナンパを続けたという。そんな話を飄々と話す彼は、只者ではなかった。昨年ガーシーが世に出た時、瓜生の同類だと思った。そういえば彼の家で飲んでいたら与沢翼さんとか、お笑い芸人とか、俳優とか、アイドルとかがふらっと家にやってくる。そんな人だ。

そんな人間が約20年前に『sabura』からサンデーに異動してきた。僕は激しいサンデーの【かわいがり】からようやく卒業した頃だった。サンデーの先輩方の次のターゲットは彼だった。先輩方の多くが針のようになって瓜生を突っつきだした。なんと瓜生は漫画を読んだことがなかった。最後に読んだのは小学生の時らしい。えんどコイチ先生の『ついでにとんちんかん』だけらしい。その後、結構やられているのを見て僕は助け舟を出した。漫画編集のやり方とか漫画の読み方とかを教えた。頭は抜群に良く、すぐにノウハウを吸収していった。ただ25歳過ぎるまで漫画を読んだことがないのはハンデが重いと思っていた。この人事はちょっと可哀想に思えた。サンデーでは持たないと思った。

だがヤクザ相手に立ち回っていた瓜生にとってサンデー編集部の【かわいがり】など全く意に介していなかった。校了飯という毎週の飲み会で瓜生がいじられ始めた。しばらくすると謎の港区女子達が飲み会をジャックした。編集者の多くは僕も含め隠キャの集まりなので、彼らは瓜生に恐れ慄いた。某有名女優であり歌姫でもある方から編集部に電話がかかってきたこともある。…メチャクチャTVで見る歌姫の名だ。「私、瓜生くんの彼女なんですけど!」。その歌姫と交際?してた瓜生は揉めたらしい。警察沙汰になりそうだったので編集長が必死に対応していた。僕はいつか何かの事件で、彼が逮捕されるだろうと思っていたが。2023年現在、彼には逮捕歴がない。意外に真面目な男だった。タバコもやらない。飲み会の場も、少しおかしな雰囲気になると、ちゃんとお開きにする。危機回避能力が高い男だった。初めは無茶苦茶な仕事ぶりで、何度も炎上騒ぎを起こしていたが、徐々に仕事を覚えてきた。たまに飲む面白い男という事で僕は付き合いを続けた。話が面白いのだ。すぐに港区女子を呼ぼうとするが、僕はそれは断った。彼とサシで飲むのが好きだった。

その後、僕は裏サンデーの編集長になりサンデーを出た。さらにその後、マンガワンの編集長になった。そして編集部が増員するタイミングで部下として彼はやってきた。僕は希望していなかったので困惑した。が、来てしまった。一瞬頭を抱えたが、数年ぶりに仕事をする彼は以前とは別人だった。ナンパの要領で沢山の有能な新人作家を集め、育てていた。

彼はその後『血と灰の女王』など多くのヒット作を手掛ける。その後、マンガワンが一度組織崩壊して、僕もメンタル崩壊を起こしたときに毎日、マンションの下に来て飲みに誘ってくれたのも彼だ。そういえばCygames社長を紹介してくれたのも彼だ。彼は懸命に僕を助けてくれた。ある日、なぜこんなにしてくれるのか尋ねた。10数年前僕がサンデーで彼を助けたからだという。僕はとっくにそのことを忘れていた。そんな事もあったっけ。こんな感じで瓜生に感謝の意を伝えます。ありがとう瓜生。

まだ肩が重い。そろそろどいてくれよ。


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ほぼ漫画業界コラム45【ある友人の話】|Zoo (石橋和章) 漫画原作者&漫画編集者
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