「里親制度シンポジウム」リポート ~ こどもたちの“いま”と、私たちにできること~
みなさんは「里親制度」という言葉を耳にされたことはありますか?
里親制度とは、親と暮らせないこどもを自分の家庭に迎え入れ、行政や里親支援機関から生活費や養育に関するサポートを受けながら、チームでこどもを育てていく仕組みです。
現在、日本には親と離れて暮らすこどもたちが約4万2,000人います。
そうしたこどもたちが家庭的な環境で育つことができるよう、里親制度に対する理解を進めるための取り組みが全国で進められています。
こども家庭庁では、毎年10月を「里親月間」と定め、里親制度を広く知ってもらうための普及啓発活動を集中的に行っています。
その一環として、10月4日に「里親制度シンポジウム」が開催されました。今回は、そのイベントの様子をリポートします。
第1部:映画『花束』上映会
(サヘル・ローズ監督 × 岩井俊二エグゼクティブプロデューサー)
東京都内のホールで行われたシンポジウムには、会場に100名以上の方にお越しいただき、オンラインでは約250名の方にご参加いただきました。
第1部は、社会的養護経験者の若者たちが出演する映画『花束』の上映会(リアル会場のみ)でした。サヘル・ローズさんが監督を務め、岩井俊二さんがエグゼクティブプロデューサーを担当されました。
出演した若者たちは明るく生き生きとしていましたが、それぞれに虐待、死別、路上生活など、過酷な幼少期を経験しています。
外からは見えにくい「生きづらさ」を抱えた若者・こどもたちの姿を通して、私たち大人が何をすべきかを問いかける作品でした。
第2部:映画「花束」に関わった方によるトークセッション
佐東亜耶さん × ブローハン聡さん × 咲貴さん
第2部では、映画『花束』に関わった3人が登壇されました。
プロデュースを担当した佐東亜耶さん、出演者のブローハン聡さん、テーマソングを歌う咲貴さんです。
佐東亜耶さんは、俳優の佐藤浩市さんとともに、東京都の「フレンドホーム」制度を通じて、児童養護施設のこどもたちを週末や長期休みに預かる活動を続けてきました。
その経験をもとに、「親と暮らせず生きづらさを抱えたこどもたちがいる。私たち大人は、その存在を“なかったこと”にせず、行動してほしい」と語られました。
ブローハン聡さんは、児童養護施設で8年間を過ごした経験から、「里親の良さは、『行ってきます』『ただいま』が言える相手が同じであること」とお話しされ、会場は静かな感動で包まれました。
咲貴さんは、成人後に佐東さんの家庭で暮らし、「家族の温かさを知ったことで、自分の中の“家族”のイメージが変わった」と語られました。
第3部:当事者・里親によるクロストーク
小賀坂小春さん × 齋藤直巨さん × 三輪清子さんご夫妻
第3部では、里親家庭で育ったこどもと、現役の里親に登壇していただきました。
3歳から里親家庭で育ち、今年大学に進学した小賀坂小春さんと、里母の齋藤直巨(なおみ)さん。
さらに、里親であり研究者の三輪清子さんと、その夫・真穂(まさほ)さんです。
小賀坂さんは、里親家庭で育つ良さを3つ挙げました。
1つ目は「自分のルーツを消さずに、そのままの自分でいられること」。
2つ目は「人生の選択肢が広がること」。
3つ目は「安心できる“故郷”があること」。
齋藤さんは、小賀坂さんをあたたかく見つめながら、「嵐を乗り越えてきたこどもたちに“凪”のような時間を作ってあげたい。羽を休めて、いつか自分の飛びたいところへ飛び立てるよう見守っていきたい」と語られました。
三輪清子さんは、「子育てで大切にしているのは、伸び伸び育ってほしいということ。こどもが実親さんの話を自由にできる環境を大切にしている」と話し、夫の真穂さんは「妻の実家がファミリーホームをしているのを見て、10年以上かけて自分もやりたいと思うようになった。こどもたちを受け止める里親の存在が、こどもたちの未来へ確実につながっていると思えたんです」と語られました。
~このシンポジウムを通して~
登壇者それぞれの経験と、こどもたちへの愛にあふれた言葉が印象的な3時間でした。
このシンポジウムが、参加者一人ひとりが「自分にできること」を考えるきっかけになったこと、そして里親に関心のあるひとりでも多くの方が「いま、里親になろう」と一歩を踏み出すきっかけになっていることを願っています。

