一般社団法人「聖菩蓮新宿駆込寺」相談員の清水葵さん。同法人では、活動のための資金を募っている(https://seiboren.jp/support-2/)(photo 野村昌二)
一般社団法人「聖菩蓮新宿駆込寺」相談員の清水葵さん。同法人では、活動のための資金を募っている(https://seiboren.jp/support-2/)(photo 野村昌二)

前提に「若い女性の性搾取」

 23年初め、娘は実家に戻り、やがてホストとの関係は切れた。しかし、夜の仕事はやめられなかった。キャバクラで働き、一人暮らしと実家を行き来する生活が続いた。

 母親は自分を責めたという。

「私の育て方が悪かったのではと何度も思いました」

 そんな時、悪質ホスト問題に取り組む一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会(現・聖菩蓮新宿駆込寺)」の存在をテレビで知った。相談に行くと、相談員から「怒りたい気持ちは分かるが、逆効果になることもある。今は見守るしかない」と助言を受けた。

 母親は同会の家族会に参加し、悪質ホストクラブへの対応を求め、国会議員に何度も陳情した。

「これは消費者トラブルではありません。最初から若い女性の性搾取を前提に仕組まれた、劇場型の詐欺です」

 娘は大学を中退し、夢だった留学も断念した。現在はキャバクラを辞め、会社員として働いている。高校生の頃の優しかった娘に戻ったような気がしている。ただ、600万円の借金は消費者金融からの借り入れで、今も残っている。娘が少しずつ返済している。母親はこう語った。

「ホストクラブは、若い女性を借金漬けにして性搾取に追い込む構造があります。騙された本人が悪いと言われることがありますが、恋愛に免疫のない若い女性の恋愛感情を操る、犯罪ビジネスです。決して、自己責任で片付けられる問題ではありません」

 聖菩蓮新宿駆込寺の相談員、清水葵さん(26)によれば、悪質ホストの問題が顕著になったのは、コロナ禍が明ける22年頃だという。「コロナ禍で飲食店が廃業し撤退したあとに、ホストクラブが一気に入ってきました。するとホストも急増して、ホスト間の競争が激しくなりました」

 とりわけ危険なのは「まだ売れていない」若手のホスト。売り上げを確保するために手段を選ばない。マッチングアプリや大学のキャンパスに入り込み、客になりそうな「カモ」を探す。

ホストクラブが集中する新宿・歌舞伎町。歌舞伎町には約300軒のホストクラブがあり、「日本一のホスト街」と言われる(photo 野村昌二)
ホストクラブが集中する新宿・歌舞伎町。歌舞伎町には約300軒のホストクラブがあり、「日本一のホスト街」と言われる(photo 野村昌二)

体を売ってでも貢ぎたい

 そうして見つけた女性に対して、まず恋愛感情を抱かせ、関係を深めながら高額な支出へと誘導していく。恋愛経験が乏しく、遊び慣れていない子ほど「彼のために頑張りたい」と考え、やがて体を売ってでも応援したい、貢ぎたいという考えにまで追い詰められていく、という。

「彼のために生きるのが目的になってしまいます。家族がどれだけ説得しても効果は薄く、いわば“マインドコントロール”に近い状態だと思います」(清水さん)

 マインドコントロールから抜け出すのは容易ではない。相手への気持ちが冷めるか、借金が限界に達するか、何か大きな壁にぶつからない限り、自らの置かれた状況に気づくことは難しい。

 昨年6月、改正風俗営業法が施行され、料金の虚偽説明や客の恋愛感情につけ込んだ飲食の要求、客が注文していない飲食の提供などが禁止となった。しかし、清水さんは、「実態は今も変わっていない」と話す。

 聖菩蓮新宿駆込寺には現在も、月に15~20件の相談が全国からメールや電話で届く。「娘がホストにハマった」「娘と連絡が取れない」――。世間体を気にして周囲に打ち明けられず、一人で抱え込む親は少なくない。

 清水さんたちは、きょうだいや友人など別のルートから連絡が取れないかを一緒に探りながら、定期的に無料の相談会も開き、家族が孤立しないよう支える。

 悪質ホストの被害を食い止める手立てはあるのか。

 清水さんは、ホストクラブに対する具体的かつ実効性のあるルール整備が不可欠だと訴える。

「酩酊状態のお客を過度にあおらない、料金メニューを明示する、金額設定を見直す――。まずは業界全体で、そうした基本的なルールを決めるべきです」

 こうした業界自主規制の徹底に加え、悪質ホストクラブを経営するグループを摘発することも有効だろう。一刻も早い実効性ある対策が求められる。

(AERA編集部・野村昌二)

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