【槍弓】俺が初めて出会ったかみさま
名だたる英雄、それこそ神話に近いものにも相まみえてきたが……あれは、俺が初めて出会った神様だった。
ホロアタのようなえみごのような時空。
槍に真名がバレてないのをいいことに、自分が心臓を貫かれた時のことを槍に熱く語っちゃう弓と、ルーンで士郎を探してたら何故か弓に行きついちゃって「???」となる槍の話。
槍の誤解で、言葉のみですが、士弓を思わせる展開があります。
このネタをつぶやいてから3年。長いことお待たせしました。気長に待っていてくださった皆様に感謝。
- 409
- 528
- 7,040
バイト先の花屋の店先に現れた男を見て、思わず目が丸くなる。
……こいつでも、花を買おうなんて思うんだな。
意外に思って眺めていると、男の方も、ぽかんと口を開けて驚いていた。ここで俺がバイトしているとは知らなかったのだろう。正直言って戦場以外で見たい顔ではなかったが、まぁいい。店に来たのなら、客は客だ。
「いらっしゃい」
おざなりに声をかけると、アーチャーはいつもの不機嫌そうな面に戻った。眉間に皺を寄せ、低い声で言う。
「……貴様、ここで何をしている」
「見てわからねえか? バイトだバイト」
「見たものが信じられないから聞いているんだ、たわけ」
なんだそのピンクのエプロンは、とでも言いたげな目でじとっとにらんでくるので、肩をすくめて言い返す。
「自分の飲み扶持くらいは、自分で稼ぎ出さねえとよ。お前こそ、冷やかしに来たんじゃねえんだろ? 何が御入り用だ? 予算を言ってくれたら、それに沿って包むぜ」
接客対応は慣れたものだ。言い淀むことなく案内すると、アーチャーは「ケルトの大英雄に接客されるとは、畏れ多いな」と皮肉を言った後、渋々といった様子で口を開いた。
「スナック美智子の代理だ。注文していた花束を受け取りに来た」
商店街の外れにあるスナックは、うちのお得意様だ。確かに、花束の注文を受けてはいたが……。
「……なんでお前が?」
いぶかると、成り行きだ、とアーチャーが答える。
「駅前で女性が座り込んでいるところに通りかかってね。ぎっくり腰らしい。歩くのにも難儀していたようだから、手伝いを買って出た」
……いや、だから、なんでお前が。
まっとうな戦士が眉をひそめるような手段を選んで、平然としていたような男が、なんでこんな好青年然とした振る舞いをしているのか。意味が分からん。幾度か刃を交えたアーチャーのサーヴァントと、今目の前でスナックのママの使いっ走りをしている男がどうにも結びつかず混乱していたところで、ふっと最近聞いた噂を思い出した。
最近、深山町に出没する『通りすがりの正義の味方』。やれ迷子を案内していたとか、ひったくりを捕まえたとか、木から降りられなくなった猫を助けていたとか。困っている人にさっと手を差し伸べ、名乗りもせず颯爽と去って行く、白髪褐色肌の、ガタイのいい男。
まさかこいつのことじゃないだろうと思っていたが、そのまさからしい。
敵には非情だが市井の人には優しいとか、そういう逸話を持つ英霊なのだろうか。ならもし次にこいつと一戦交えることになったら、知名度補正とやらでいっそう面白い死合いになるかもしれん、と考えていたところで、頬にひやりと、重く湿った風が触れた。くん、と鼻を動かせば、かすかに濡れたアスファルトのにおいもする。
「……雨か」
答えを返すかのように、ぱらぱらと雨粒がはじける音が聞こえてきた。早速降ってきたらしい。
アーチャーはぴくりと肩を震わせると、振り返って店の外に目をやった。商店街の買い物客が、慌ただしく傘を開いていくのが見える。一方のアーチャーは、手ぶらだ。……幸運値低そうだよな、こいつ。俺も人のことは言えねぇけど。
雨はみるみるうちに勢いを増し、ザーザーと音をたてて降っている。アーチャーはしばらく店の外を憎々しげににらんでいたが、ため息の後、ぼそりと言った。
「すまないが、花は袋かなにかに入れてもらえるか?」
「そりゃ、かまわねぇが……」
アーチャーの言葉に、俺は思わず顔をしかめた。
もちろんビニール袋の用意はあるが、花を運ぶなら霊体化は出来ない。こいつ、この雨の中傘もささずに帰るつもりか。
「開店は20時からだろ? 急ぎなのか?」
「いや、急ぎというわけではないが……」
「なら、止むまでここで待っとけよ。見ろ、勢いよく降っちゃいるが、空は明るい。通り雨だろう」
カウンターの内にある小さな丸椅子を引っ張り出して、ゴトンとアーチャーの前に置いてやる。アーチャーはまるで警戒しきった野良猫のように、黙って椅子をにらんでいるばかりで、なかなか座ろうとしなかった。まぁ、気持ちは分からんでもない。今は休戦中とはいえ、切った張ったの命にやり取りをした相手の前で、座ってのんびり雨宿りという訳にもいかねぇか。
無理に座れとも言えず、とりあえず、バックヤードに予約の花束と、雨の日用のビニール袋をとりに行く。両手一杯に荷物を抱えて戻って来ると、アーチャーは椅子をカウンターから遠ざけたうえで、ちょこんと浅く腰掛けていた。迷った末、届け物を濡らすよりは待った方がいいと判断したのだろう。位置はカウンターと出入り口の、ちょうど中間くらい。壁を背にして座っている。腕を組み、静かに目を閉じ、むすっとした横顔が見える。
つい先日まで心地よい殺気のやり取りをしていた相手が、花に囲まれて居心地悪そうにしている。なんだか可笑しな気分だ。
さて、雨が止むまでにもうひと仕事するかね。
美智子ママの顔を思い浮かべながらすっすっと直感で花を選び取っていく。しゃんと伸びた明るい色の花が、あの女傑には似合いだろう。注文にはないミニブーケ。お得意さんへのサービス兼、見舞いの花だ。
茎の長さをそろえていたところで、アーチャーが横目でじっとこちらを見ているのに気がついた。敵意はないから放っておいても良かったが、目線は手元に置いたまま、気まぐれで声をかけてみた。
「どうした。何か用か」
アーチャーは気づかれるとは思っていなかったのか、少し肩を揺らした後、小さな声でもごもごと言った。
「……バイトを始めてまだ日が浅いだろうに、ブーケ作りもするんだな」
「おう。見よう見まねだが、なかなか様になってるだろ? 結構評判なんだぜ、俺のブーケ。
これは、お得意様の美智子ママにサービスだ。お大事にって伝えて渡しておいてくれるか?」
「了解した。なるほど、彼女の雰囲気に合った花だな。評判というのも納得だ。粗野で粗暴な男だと思っていたが、意外な特技があったとは」
「……てめぇは一度貶さなきゃ褒められねぇのか」
苦々しい思いでパチンと茎を切り落とす。
「ま、恋人に花を贈る時は、うちを利用してくれよ」
「サーヴァントは死者だぞ。どうせ幾ばくもしないうちに消える身だ。そんな機会、あるわけないだろう」
空気を和らげるための軽口に対して、にべもない返事。やはり、こいつとは相容れん。俺は深々とため息をついた。
「かったい考え方してんのな。現界なんてまたとない奇跡だぜ? ほんの一時ならなおのこと、とことん楽しまなきゃ損だろ。
……つっても、お前は生前でも、浮いた話はなさそうだけどな」
売られた喧嘩は買う方だ。先ほどの嫌味の仕返しとばかりに、煽るような口調でアーチャーを見る。即座に噛みついてくるかと思ったが、アーチャーはぱちりと目を瞬いた後、黙りこくってしまった。返事がないのは図星だからか、それとも、会話に飽いたからか……。
肩すかしを食らった気分だった。仕方なしに作業に戻る。静かになった空間に、しゅるしゅると仕上げのリボンをかける音が響いた。手元に目線を戻し、左右のバランスを整えていたところで、ぼそりと、低い声が聞こえた。
「大英雄の恋愛遍歴に比べたらささやかなものだが、私にだって忘れられない人くらいいるさ。そうだな、私にとっては過ぎた……月並みな言葉で言うと、運命の出会いだったよ」
予想外の穏やかなトーンで、返事が返ってきた。一拍遅れて顔をあげて、アーチャーを見る。半分独り言のようなものだったのだろう。アーチャーはぼんやりと店の外に目をやり、雨の降る様子を見ていた。
俺はこくりと息を呑んだ。性格には難があるものの、神経を極限まで尖らせた、命と命のやり取りが出来る申し分のない好敵手。その過去に、興味はある。
「へぇ。生前の話か? 聞かせろよ」
アーチャーは腕を組むと、さも意外そうな顔でひょいと片眉を上げた。
「貴様も物好きだな。相手は既に死者だぞ。聞いたところでどうということもない話だろう」
「だったらなおさら話したっていいじゃねぇか。お前だけ、俺の過去を知ってるのはフェアじゃねぇだろ?」
視線が絡み合う。アーチャーは小さくため息をつくと、そっと白い睫毛を伏せた。
「言って置くが、恋人ではないぞ。ついでに言うと、女性でもない。ただ、私にとって特別な人だったというだけだ」
ぽつりぽつりと、まるで雨粒が落ちるように、低く穏やかな声が言葉をつむいでいく。澄んだガラスのような鉛色の瞳は、商店街の町並みを見ているようで、その実何もその目には映していないのだろう。焦点は、もっと遠くに結ばれている。きっとこの男が、生きていた当時に。
「出会ったのは生前だ。私はまだ年若く、未熟で……その人には、出会い頭であっけなく殺されかけたよ」
「お前が?」
守り上手のこいつが初手でやられるとは、にわかには信じがたい。思わず驚きの声が漏れた。アーチャーは目だけでちらりとこちらを見た後、ふっと唇に苦笑いを浮かべた。
「もし私が、貴様から見て、少しは動けるようになっているのなら……その人のおかげでもあるのだろうな。彼と手合わせしたのは数える程だが、その動きは、今でも私の目に焼き付いている。真似できるようなものではないが、少しでも近づきたい、次は一矢報いたいと、腕を磨き続けたから……」
アーチャーは懐かしむように目を細めると、しみじみとつぶやいた。
「……美しい、一閃の光のようだった。殺される瞬間だったというのに、見惚れてしまったよ。あれほど洗練されて、美しい動きを、私は見たことがない」
アーチャーの右手が、そっと自身の胸元に触れた。
「……あの夜から、俺の心臓は、彼に奪われたままなんだ。
名だたる英雄、それこそ神話に近いものにも相まみえてきたが……あれは、俺が初めて出会った神様だった」
伏せられた白い睫毛の先が、音もなく震えている。大事なものを噛みしめるようなアーチャーの表情を見て、俺は息を呑んでいた。
アーチャーという男は、間違いなく腕は立つ。それでもいつも冷め切った目をしていて、人として決定的な何かが欠けている。そう思っていた。
それが、今はどうだ。目の前に座るこの男に、人間らしい感情の片鱗が残っていたことを知り、俺は心底驚いた。作り物めいたガラス玉のようだった鉛色の瞳に、じわじわと熱が通っていくのが分かる。
こいつは、本当にアーチャーか?
俺は戦慄した。淡々と剣を振るうだけの人形に、命が宿る瞬間を、見せられている。
息を深く吸い込めば、甘い花の匂いが鼻をついた。この雨だ。しばらく客は来ないだろう。商店街からも人影が消えている。しとしとと続く雨の音に、こいつと二人で閉じ込められている。まだしばらく、雨は止みそうにない。長く息を吐いた末、俺はゆっくりと唇を開いた。
「……驚いたぜ。皮肉屋のお前が、手ばなしで褒めるとはな」
「それほどいい男だということさ」
アーチャーはくっと喉の奥を鳴らして笑った。先ほど貶し半分に褒められた俺としては、暗にそれほどの男ではないと言われたようで面白くない。それと同時に、この皮肉屋をしてここまで言わしめた相手のことが気になってきた。
「お前にそこまで言わせる奴なら、そいつも英霊になってるんじゃねえの? だったら、こうして聖杯戦争に召喚される可能性もゼロじゃねえ。再戦だって夢じゃねえだろ」
「再戦、か……」
アーチャーは少し視線を落とすと、小さく首を横に振った。
「たとえ奇跡と奇跡が重なって再会が叶ったとしても……彼は、私のことを覚えていないよ。私にとっては鮮烈な思い出でも、彼にとっては、手にかけた有象無象のうちの一人さ。顔も、名前も、忘れられている」
自嘲も、恨みも感じない。ただ当然の事実を述べたかのような、断定めいた口調だった。
「でも、それでいいんだ。未熟な私など、覚えていてほしくない。少しはまともになった、今の私を見てもらえればそれでいい。
再戦だと知っているのは、私だけでいい。あの眼が私を写して、あの声が私を呼んで、そうして……彼に、一端の戦士だと認めてもらえたのなら、これ以上の幸福はないさ」
ほんの一瞬だったが、アーチャーの表情がふわりとゆるんだ。
それを見て、思わず息を呑む。人を小馬鹿にしたような嫌味な笑みでも、口の端をあげた自虐的な笑みでもない。ただのガキみたいな、屈託のない笑み。あのアーチャーが、こんな顔で笑えるとは知らなかった。
……そういえば俺は、こいつの真名はおろか、宝具さえ知らないのだった。活躍した時代も、国も、その最期も。
こうして近くで眺めてようやく、この男が案外童顔だということに気がついた。しかめ面をやめて前髪をおろせば、雰囲気が一変するだろう。じっと見ていると、アーチャーが居心地悪そうに身じろぎした。
「……何だ」
「いや。思ってたより、素直に喋るなと思ってよ」
こいつがここまではっきり心の内を語るとは思わなかった。何となく、そういうことが苦手なんじゃないかと思っていた。しかも、俺相手に。
アーチャーは「確かに、少し喋りすぎたか」と苦い顔でこぼした。
「貴様が妙なことを言うからだ。ランサー」
「あ?」
「……生前は、一度も、誰にも、明かしたことがない思いだった。
こんなことなら生きている間に一度くらい、正直に伝えておけば良かったかもしれないと後悔していたところで、貴様が、またとない奇跡などと言うから……それで口が滑った」
「はっ。惚れたなら惚れたって言えばいいだけじゃねぇか。お前がひねくれてんのは生前からか」
「誰もが貴様ほど単純な原理で生きている訳ではない。それに、彼とはすぐ、会えなくなってしまったから」
「あ~、そりゃ……」
お前さんに愛想が尽きたんだろうよ、と茶化しかけて、止めた。
アーチャーは軽い調子で言ったが、こういう勘は悪くないという自負がある。アーチャーはおそらく、その男と死に別れでもしたのだろう。
呑み込んだ言葉の代わりに、同じく軽い調子で問う。
「なぁ、そいつの名は? お前が一目置いてるくらいだ。強いんだろ? 俺もそのうち、まみえることがあるかもしれん」
アーチャーは一度ぱちりと瞬きした後、口の端をつりあげて不格好な笑みを見せた。
「貴様には教えん」
「なら、クラスは? そのくらいはいいだろう。
召喚されるとしたら、何のクラスだ?」
「……さて。多芸な男だからな。適性クラスは複数あるだろう」
「お前とやりあった時の得物は、何だったんだ」
しつこく食い下がると、アーチャーは一瞬ためらった後、小さな声で言った。
「……槍だ」
ざわり、と。胸が騒いだ。
この弓兵が、手放しで褒めるほど惚れ込んだ男は、俺と同じ槍使いだったらしい。ならなおのこと、顔でも拝んで手合わせ願いたかったが……聖杯戦争での対戦は難しそうだ。
残念だな、と思っていたところで、ばさばさという物音が聞こえてきた。
通りを歩いていたご婦人が、折りたたみ傘を畳んでいる。雨があがったらしい。
アーチャーはゆっくりと椅子から立ち上がると、台の上の花束を丁寧な所作で抱えた。
「では、長々と邪魔をしたな」
簡単な挨拶の後、そのまま去っていこうとする背中を呼び止める。
「おい、アーチャー」
「まだ何か?」
怪訝そうな顔で振り返ったアーチャーに、短く問う。
「お前は、何処の英霊だ」
そう言った瞬間、ぴり、と空気が緊張する。アーチャーの顔から、表情が消えた。冷えきった鉛のような目がそろりと差し向けられる。
「……なぜ、そんなことを聞く?」
「なぜって……」
それこそおかしな質問だ。敵方の情報が知りたいなんて、当然のことだろう。腕が立つとあればなおのこと気になる。そもそも、最初に学校でやり合った時から、再三繰り返してきた質問だ。こいつが一度も答えないだけで。
ぴたりと据えられた鉛色の目。息すら殺して、全神経を尖らせて俺の様子をうかがっている。今さら俺の言葉一つにここまでの警戒を見せるのが、不思議だった。いや、これは警戒というよりも……怯えている、のか?
いや、まさか。
俺は心の内で、その馬鹿げた考えを即座に打ち消した。あの夜、教会の前で向かい合った時でさえ、震えのひとつも見せずにふてぶてしい顔をしていた男だぞ。
俺は姿勢を正し、アーチャーと正面から向き合った。怪訝そうな顔になったアーチャーを見つめながら、すっと息を吸う。
「俺は太陽神ルーと、アルスター王の妹デヒテラの子、赤枝の騎士団のクー・フーリン。
お前も名乗れよ、弓使い。
お前とはとことん気が合わねぇが、それでも、その腕だけは認めている。
俺が、その男の代わりに、お前の名前を呼んでやる。だから……教えろ」
どこで育って、どういう戦いを経て、どんな最期を迎えたのか。
俺は知らない。知りたい。
嬢ちゃんに召喚された、アーチャーのサーヴァント。それ以上のことが知りたい。
アーチャーの目が、大きく見開かれる。その時の奴の表情を、どう言ったらいいか分からない。驚いているようにも、喜んでいるようにも、やはり怯えているようにも見えた。
はく、と。アーチャーの唇がわななき、声にならない呼気が漏れる。まるで水中にいるかのように苦しげに息をしている。俺はじっとアーチャーの返事を待った。そして、
「私は……アーチャーだ」
低くかすれた声で、ようやく、アーチャーは言った。
「誇って名乗れるほどの名は、持っていない。しがない弓兵だよ。
だから……貴様にとって、私はアーチャー。それで充分だ」
それだけ言うと、アーチャーは再度くるりと背を向けた。今度は呼び止めない。遠ざかっていくアーチャーを、俺は拳を握りしめて見ていた。
俺が呼ぶのでは足りない。俺が認めるのでは足りない。
この男が肩を並べたいと思う男は、心底刃を交えたいと思う男は、名前を呼ばれたい男は、俺ではないのだと、突きつけられた気分だった。
そりの合わない、いけ好かない男。それでも、一目置いていた。俺の真名を知ってなお、一歩も引かず挑んでくる。俺の宝具をしのいでみせた、奇妙な弓兵。
そいつが、俺以外の槍使いを見ている。
俺はそれが気に入らないのだと認めるのに、しばらく時間がかかった。