【本体話】五次槍が五次弓の座におじゃましました
ネタバレは仕様です。キャラ崩壊は仕様です。最近stay night(realta)とhollow ataraxiaを駆け足プレイしたばっかりのニワカが書いたのでたぶん盛大に色々間違ってるけどそれも仕様です。
中途半端だけど疲れたので一旦ここで切ります。【追記】Σ (゚Д゚;)ビクーリ 閲覧、評価、タグありがとうございました。
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今日も今日とていつものごとく。
血も涙もない鬼畜上司に有無を言わせずド修羅場に放り込まれた英霊エミヤ氏は、骨身粉砕奔走し、ようやく事態にケリをつけて己の座に帰ってきたところだった。
当然のことながら疲労困憊している。
丘の上に足を投げ出して腰を下ろし、深い疲労が滲む眼差しで眼下の大地を茫洋と眺める。
無数の剣に埋め尽くされた曠野がどこまでも果てしなく広がっている。まったくもって、殺風景極まりないいつもの光景である。
溜め息をつき、凝りまくった首を左右にコキコキ振る。英霊なので別に筋肉に乳酸が溜まったりはしないが、疲れると魔力の流れが滞ったりとか、まぁ色々あるのである。首回りも酷いが僧帽筋もかなり酷い。ガチガチに固まっている。ほぐすように頭を後ろにぐっと反らしてみた。
頭を反らせば、目を閉じでもしない限り必然的に空を見上げる羽目になるわけで。
赤茶けた陰鬱な空。そこに巨大な歯車が浮かび軋みながら回り続けてる。これまたお馴染みのなんとも気が滅入る光景であった。
癒されないこと夥しい。
再び深く溜め息をつくと、そのまま上半身を倒して固い大地に転がった。
目を開けていると鬱色の空と殺伐とした歯車が見えるので、瞼を閉ざす。しかし生憎と耳には蓋が付いていないので、耳障りな歯車の軋みが頭蓋に流れ込んでくるのは止められない。
…有休が、欲しい
英霊エミヤ氏はしみじみと思った。
ちょっと前までは、そんなことを思う心の余裕すらなかった。
不本意極まりない心を抉られる業務内容、劣悪な労働環境、明後日の方向に投げ捨てられた福利厚生、サビ残休出上等な上に手当どころか報酬ZERO……ブラック企業というより、節子それ奴隷や状態である。それが終わりなく永遠に続く苦痛に、持前の自虐壁も相まって
退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、退職したい、死にたい、いやもう死んでるか、消えたい、存在抹消したい(以下、エンドレスリピート)
といった感じで、危険水準まで追い詰められて相当に病んでいたのだが。
先日分霊が持ち帰ってきたとある時空での5次聖杯戦争の記録に触れて、答えを得た、というか、初心を取り戻した。
もうちょっと、頑張ってみるか。
以前よりも前向き、というか、どう足掻いても逃げられそうもないので色々諦めて腹を括ったエミヤ氏だった。
しかし、心持ちが多少上向いたところで環境は変わらない。
こうして座に戻っていても、いつまた鬼上司に呼び出されるかわからない状態では心が休まらない。
また、こうして束の間座に戻ったところで、この殺伐とした風景。
癒しには程遠いどころか、むしろ却って心が荒むっていうか。
剣は己の起源だし仕方がないにしても、それしかないというのはいかがなものか。
空の色も、もうちょっと何んとかならんのか。
自分の心象風景とはいえ、これはちょっと酷過ぎる。
……ゆっくり時間が取れたらアレコレ弄りたいんだが。
有休取って、座(と書いて、おうち、と読む)のリフォームがしたいなぁと。
そんなことを取り留めもなく考えながらエミヤ氏が丘の上で大の字になっていたその時。
ぎゃわんッと、
耳障りな、しかし耳慣れたいつもの歯車の稼働音とは明らかに異なる、何かがたわむような物凄く嫌な感じの音が。
はるか上空、天頂付近で鳴った。
ワンアクションで跳ね起きる。靴底が砂を擦る。勢いで近場に刺さっていた剣を何本かなぎ倒したが頓着せず、視線を異音が鳴った上空へ向ける。
鷹の目を使うまでもなく一目瞭然、明らかな異状を目視でも確認した。
天の一点が内側にたわんでいた。火に炙られたような赤茶けた空の天頂の一点が、引き攣れて飴のように歪み伸び、落ちかかるように迫っていた。
丁度、粘弾性に富む材質で構成された半球を外側から鋭いもので強く突き、その結果を内側から観測しているような。
馬鹿な、と思わず零れかけた意味のない言葉を喉の奥で散らす。
有りうるはずのない事態だった。英霊の座に物理的に干渉しうるほどの“力”など、そんじょそこらにあるはずが……
……あ、でも、英霊といっても所詮守護者だし。
ガイア組の正規英霊の座に比べたら、安普請なのかも。
空の異常を凝視する座の主の脳裏を、一瞬そんなネガティブな思考が過った。
そして、
よくわからんが、一応ローアイアスでも出しておくか
詠唱を始めかけた時。
先ほどの異音など比べものにならない大轟音と衝撃波が、エミヤ氏と彼の座を襲った。
轟音に次いで地を走った衝撃波で吹っ飛ばされたエミヤ氏が、痛む頭を振ってようやく起き上がって目にした光景は。
惨憺たる有様だった。
濛々と舞い上がった砂塵は未だ収まらず視界は悪い。しかし砂塵のベール越しからでも、地に深く突き立っていたはずの剣の群れの半ば以上がなぎ倒されているのが見えた。
その上、空にあったはずの巨大な歯車の一つが、落ちて転がっていた。
のろのろと視線を上げる。先ほど観測した天頂付近の撓みはもはや撓みではなく、どうみても明らかに“穴”が空いていた。“穴”の真下のあたりの空間が妙にぽっかりと空いている。落下した歯車はあの辺りにあったもののようだ。
なるほど、玉突きか
現実逃避的に妙に冷静に思考する。
初撃では撓みこそすれなんとか耐えたものの、二撃目には耐えかねて貫通。座に穴をブチ開けて落ちてきたナニモノかはそのままの加速度で直下の歯車に衝突し、結果として歯車が落下してこの有様、とあいなったようだ。
……で、人の座に穴なんぞ開けてくれた大馬鹿者は、いったいどこに?
眉間に寄った皺を揉みほぐす英霊エミヤ氏の肩を、背後からナニモノかがぽんっと気安く叩いた。
「よお、久しぶり」