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カフェ『トゥリファス』へようこそ/Novel by 凍護@コメント嬉しい

カフェ『トゥリファス』へようこそ

5,098 character(s)10 mins

セ〇コラボカフェのウェイターアキレウスがかっこよかったのと実装祈願を兼ねたカフェネタ赤騎(→)弓、世界観は自由ですので心の広い人向け/エミヤとジャンヌオルタが仲良かったりと自分カルデア設定があるので注意!
こんな落書きよりもっと書くべきものがあるんですけどね?!すみませんすみません!!

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賑やかな街の一角、最近出来たそのカフェの名は『トゥリファス』。
美味しい料理も然る事乍ら、接客がとても丁寧な金髪の女性や気さくな対応で客の心を掴む男性のウェイターが人気を呼び、この所行列の耐えない有名店である。

平日の昼下がり、ランチタイムの嵐を越えて店が少し落ち着いてきた時のこと。使用済みの食器を盆に載せて次々とカウンターに戻していくアキレウスは、ふんふんと軽い鼻歌をきざんでいた。
爽やかな声が奏でる音はそれだけで草原を吹き抜ける風のように心地よく、ちらほらと残っている客はアドリブのBGMに瞳を閉じて穏やかな時を満喫する。本人が知らぬところでまた人々を魅了する教え子に、皿を受け取っては流しに入れていたケイローンがホールへ顔を出す。
「随分と上機嫌ですね」
「先生!いい所に来てくれたな!ちょっと頼まれてくれませんか?どうかこの通り!」
声をかけられたアキレウスは途端に飛び上がり、つかつか距離を詰めてケイローンの手をがっしりと掴んだ。
瞳をキラキラさせて矢継ぎ早に言葉を重ねたかと思えば今度は深々と頭を下げるアキレウスへケイローンは動揺一つ見せずに苦笑をする。長い付き合いでアキレウスの忙しなさをもう嫌という程理解しているケイローンは、小首を傾けて長い亜麻色の髪を揺らした。
「貴方が頭を下げるなんて悪い予感しかしないのですが…頼み事とは?」
「この所アタックしてる子が今日カフェに来てくれるそうなんだ。ここで一発ポイントを上げたいんでな、来たらキッチンを少し貸して欲しいんだよ」
案の定、予感を裏切らない頼み事にケイローンの額が痛んだ。身内の店といえど仕事中に不埒な考えをのさばらせるとは何事か。しかし当人は一切の罪悪感を見せず、傍から見れば戦事の相談の一つかのように真面目そうな面構えだから始末に負えない。
どこまでも真っ直ぐな教え子に注意すべきか一瞬迷ったケイローンだったが、こちらの手を握り見上げるアキレウスの真摯な瞳に踏みとどまる。
そして少しの逡巡の末、ケイローンは小さくため息をついた。
「なるほど…公私混同は感心しませんが、隠れてやられるよりはマシですからね。構いませんよ。ただし厨房に入るのなら必ず手洗いを欠かしてはなりません」
「いよっし!!ありがとうございますよ、先生!」
途端に飛び跳ねて喜びを示す教え子の笑顔に苦笑したケイローンは、自分の協力を仰ぐほど綿密な準備を行うアキレウスへ興味が湧いた。こざっぱりとした性格のアキレウスならば色事のコマンドもアタックのみで基本的に小細工は弄さない。
そんな男の心を奪い、右往左往させる美姫とは如何に、腕組みをしたケイローンが首を傾げる。
「君がそこまで執心するとはなかなかの相手ですね、特徴を聞いてもいいですか?」
「特徴、ね……」
ケイローンの問いに目を伏せたアキレウスはしばらく唸ると、不意に手をうろうろと動かして自身の胸部の前で膨らませるジェスチャーを取った。
「白髪で…胸が大きい」
「…アキレウス、君には人に対する礼儀や身体的特徴へのマナーをもっと教えるべきでしたね」
「もちろんそれだけじゃねぇよ!おっ客だ!じゃあよろしくお願いしますよ、先生!」
身も蓋もない特徴に額を押さえるケイローンへ慌てて手を振ったアキレウスは、ちょうど鳴った入店のベルにこれ幸いと飛びつくのだった。

それから数刻、柔らかな陽の光でぬくぬく暖められるカフェを右へ左へ歩き回って給仕に勤めていたアキレウスは鼓膜を震わすベルに振り返り、次の瞬間太陽のように破顔した。
「いらっしゃい、おお!待ってたぜ!」
トンっと飛ぶように玄関へ向かったアキレウスは出迎えた2人、アーチャー・エミヤとアベンジャー・ジャンヌダルクオルタに笑いかける。
熱烈な歓迎ぶりに肩を揺らしたエミヤはむすっとしたジャンヌオルタの手を引いて店内へ入り、辺りを見渡した。
「ほぅ、明るくていい店だな」
「フン、お世辞なんてやめなさいな。ごみごみしててうるさい店ね、あの聖女様がご奉仕するにはぴったりの場所だわ」
働いてる店を褒められて素直に嬉しそうだったアキレウスは、すかさず評価に水を差す冷ややかな女の嘲りへ眉間にシワを寄せる。当初アキレウスが誘っていたのはエミヤのみ、何でも奢るから一度来てくれと誘い拝んで頷かせることに成功したのだ。
その時渋るエミヤへ誰かと一緒でもいいからと口を滑らせたのが運の尽きだったか、お人好しはそれを額面通り受け取りとんだ同行者を連れてきてしまった。
「おいおい連れてくるにももっと良い奴が居ただろうに」
苦い顔をするアキレウスへ軽く頭を下げて詫びたエミヤは、ツンとそっぽを向くジャンヌオルタを見下ろす。
「気を悪くしたらすまない。しかし私が出かける準備をしていたら彼女が周りをそわそわと…」
「勝手な憶測を広めないで!だからあれはたまたま偶然通りかかっただけだと言っているでしょう!さぁ、早く案内してください。いつまで客に立ち話をさせる気ですか?」
「ったく、お席はこちらですよ」
経緯を口にしようとしたエミヤを素早く遮ったジャンヌオルタは憎たらしげに眉を潜めながらアキレウスを見上げる。
どうやら彼女も自分の元となった存在が働いているというカフェが気になっていたようだ。まったく素直でない知人の別側面に嘆息しつつアキレウスは脇に挟んだメニューで空いた席を指し示した。

最初の飲み物の注文を聞いてオーダーカードを持ってきたアキレウスに、キッチンからケイローンが顔を出す。賑やかさを感じて顔を出せば、明らかに他の客相手とは違う落ち着きのなさを見せるアキレウスに先ほど聞いていた話が蘇る。
白髪に大きな胸…特徴にぴったり該当する相手を見つけ、ケイローンはやや意外そうに目を丸くさせた。黒のタイトなワンピースに同色のファーが付いた紺色のジャケットを着ている女性、聞いた特徴の通りワンピースの布地を押し上げるのは大きなボリュームの胸だ。
抜けるような白髪と陶器のような肌、細部が異なっていてもその顔は見慣れた聖女と瓜二つだ。噂に聞くオルタナティブ、英霊の別側面を煮詰め形作られた存在である。
また一筋縄ではいかない相手を選んだ教え子の審美眼に遠い目をしたケイローンは、カップを用意しながらソワソワしているアキレウスがソーサー以外に用意している皿へ目を止めた。
「お目当ての子が来店したようですね、ちなみに何を作るつもりですか?」
余分な皿は計画していた距離を詰める一手という物だろう。脇の水道で手を洗い、慣れた手つきでキッチンを漁るアキレウスは事前に仕込んでおいたタッパーを並べる。
「距離を詰められるチャンスも早々ないからな、ここは勝負をかける」
ぱかりと開けたタッパーの中には焼き上げられたパイ生地が入っていた。バターの芳醇な香りを感じた次の瞬間鼻を刺す強烈な甘い香りに、ケイローンはギョっと目を見開く。
焼かれたパイ生地に挟まれたたっぷりの刻んだナッツ、さらにその上からかけられた地獄のような量のシロップは見覚えがある。
既に用意していたお手製の菓子ににんまり笑ったアキレウスは自信に満ちた顔で胸を張った。
「バクラヴァだ!」
バクラヴァ…それはギリシャ伝統の焼き菓子、ナッツを挟んだパイの上からシロップをかけたものだ。ただしとても甘い。歴史は古く、ギリシャ人の中では熱狂的支持を得ているとかいないとか。ただしとても甘い。
ケイローンも食べたことはあるが強烈な甘みは忘れられない。しかもその時は熱い状態のパイにお好みでシロップをかけるもの、今アキレウスが用意していたのはシロップに漬けられて時間が経っている。
想像に難くない強烈な甘さに、思わず戦慄したケイローンはご機嫌で盛りつけを始めるアキレウスに慌てて駆け寄った。
「バ、バクラヴァ…!待ちなさいアキレウス!お相手はギリシャの生まれではないのでしょう!ならばもっと大衆向けのものが…!」
「意地悪言わんでくださいよ先生、世界でこれより美味い菓子は無いでしょう!」
制止しようとするケイローンの言葉を遮り、肩をすくめるアキレウスはまるで困ったように笑う。玉砕の道を鼻歌交じりに歩む教え子の背中にケイローンは言葉を失い、ただただ懸想する相手が並外れた甘党であることを祈るのだった。

「お待たせしました。こちらご注文のドリンクと本日のサービスデザートです」
ジャンヌオルタと他愛のない言葉を交わしながらお冷で喉を潤していたエミヤは、隣から伸びた腕に顔を上げる。
卓上に用意されていくソーサーと揃いのカップ、加えて皿に乗せられた覚えのないパイ生地の菓子にエミヤの眉が下がった。
「デザートは頼んでいないが…」
「だからサービスだって言ったろ?」
戸惑いがちのエミヤにアキレウスは声を潜ませウィンクを返す。耳元で聞こえる密やかな声と端正な容姿がいたずらっぽく唇の端を上げる様子に、思わず目を奪われたエミヤは慌てて礼を口にした。
律儀な想い人にハートをガッチリ掴まれたアキレウスがさらに口説き文句を重ねようとしたその時、わざわざ腕を伸ばしたジャンヌオルタが体を押しのける。
「一々大袈裟な男ね。ああ、ここには劇作家も働いているんでしたね?では働いているのは劇団員の方かしら?あの聖女気取りも含めて、まぁお似合いですこと」
さらに吐かれる衰え知らずの嫌味に今度こそアキレウスの額へ青筋が浮かぶ。やはりジャンヌオルタがエミヤについてきたのは聖女の仕事ぶりを見る以外に、己への牽制も含まれていたようだ。
聞いた話では世話焼きのエミヤが飽きることなくこの素直でないコミュ障女と交流した結果、ジャンヌオルタ本人は決して認めないが相当懐いているらしい。
そんな彼女が、己を狙っている男の元へ一人でのこのこ出かけようとしている弓兵を見つければ放ってはおけないだろう。
刹那バチバチと火花を散らす2人に、変なところで鈍感なエミヤは気づかない。ジャンヌオルタの口汚さだけが火種になっていると思っているエミヤが仲裁に入り、ジャンヌオルタへ用意されたフォークを手渡す。
「やめたまえ、ジャンヌ。せっかくの心遣いだ、有難くいただこう」
そう言って自身ももう一つのフォークを手にし、エミヤがパイ生地に亀裂を入れる。促されたジャンヌオルタもデザートへ手を伸ばし、フォークで切り分けたパイをエミヤと同じタイミングで口にした。
「うっ…!」
「なっ何よこれ!歯でも溶かす気ですか!?」
が、その瞬間金色の瞳を零れんばかりに見開いて思わず吐き出しかけた口を抑える。
たった一口頬張った瞬間味覚を埋め尽くす甘みという甘みは嫌がらせを疑うレベル、しかし己と同じように口を手で覆い顔色を青くさせるエミヤを見て可能性は消滅した。
ケイローンが危惧した通りの結果に陥る2人へ堂々と胸を張ったアキレウスはにんまりと笑って自信作の勝負料理を語る。
「美味いだろ?こいつは俺の故郷の味、バクラヴァだ!普段はメニューに乗っていない品だが、あんたの為に特別だ」
「そ、それは感謝…っする」
また顔を近づけて囁くアキレウスに今はときめく余裕もないエミヤは、えづきながらも口に残ったものを何とか飲み下す。
胃の中へ押し込んでもなお喉奥まで焼く甘さは当然これまで経験したことのない部類で、エミヤの脳内は驚きに慌てふためいてるようだ。
たった一口でステータスに混乱を付与するとは新手の精神攻撃かなにかか?と問いたくなるが、礼節を弁えたエミヤはシロップに毒された唾液と一緒にその言葉を嚥下する。
一瞬でお通夜のように静まり返り、自らの口の中で手一杯になっている2人に、幸か不幸かアキレウスは気づいていない。
「今日は俺の奢りだから遠慮なく飲み食いしろよ、お二人さん!追加の注文はあるか?」
「で、ではエスプレッソを…なるべく深煎りのものでカップはラージサイズにしてもらえると有難い」
「受けたまりました」
追加注文をオーダーシートに書き留め、ウェイターは軽い足取りでキッチンへと向かう。
対してラージサイズのエスプレッソという聞き覚えのない注文を聞いていたジャンヌオルタは、気付け薬を片手にこの甘さの暴力と向き合い、完食しようとしているエミヤへ畏怖に近い尊敬を感じるのだった。

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  • April 26, 2022
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