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【コミカライズ対談】山下清悟監督×コミカライズ作家 米田タロウ

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Netflixでの世界独占配信、劇場公開中の『超かぐや姫!』。
その制作の裏には、ツクヨミのライバーのように切磋琢磨し、共鳴しあうクリエイターたちの「KASSEN」があった……!?
今回は、そんな舞台裏もうかがい知れる『超かぐや姫!』の山下清悟監督と、コミカライズを担当した漫画家・米田タロウによるスペシャル対談をお届け!

決め手はこだわりと愛!? コミカライズはこうして始まった

――企画が立ち上がった際、コミカライズを米田さんにお願いしようと思われた決め手はなんだったのでしょうか?

山下清悟監督(以下、山下):まずこの作品はけっこうアクション主体な部分があって、動きをカッコよく見せられるかどうかという部分は重視していました。米田さんの過去の作品などを拝見したところ、男性キャラとアクションにすごくこだわりを感じたのは覚えてますね。自分はブラックオニキスが大好きなので、彼らをすごくカッコよく描いてくれそう、という期待もあったと思います。

米田タロウ(以下、米田):そう言っていただけるのはうれしいですね。実際、いつも楽しく作画させていただいてます(笑)。

山下:それと、ストレートに男性をターゲットにした、女性キャラクターがたくさん出てくるような作品のテイストにはせず、女性寄りの感性で作りたいという考えがありました。性的、恋愛的なエッセンスが出ないように配慮している作品ですので、そこのあたりがストレートに男性をターゲットにした作風だとちょっと違う方向に行ってしまうかなという思いがありまして、そこも結構大きな決め手になったかなと思います。

米田:まさに私はカラッとした雰囲気で、友情、家族、恋愛、いろんなものを含めて、大きな意味での愛や絆を大切にしたいと思っています。そういう作風のところでマッチしたと言っていただけて、すごく嬉しく、また身が引き締まる思いです。

 

漫画だからこその表現を――お互いへのリスペクト

――そうして実際の作業に入られるわけですが、最初の打ち合わせでは、お二人の間でどのようなお話をされたのでしょうか?

山下:大体1年くらい前になるでしょうか……もう懐かしいですね。多分そのときに、「映画として作ったお話なので、そのままコミックにすると面白くないんじゃないか」っていう話をしたと思います。「米田さんの手でリライトしてしまっていいので、面白くなるようにしていただきたいです」というようなことは言った気がしますね。

米田:はい、それは私も覚えてます。そのときに「アニメってこんなにいろんなことができるのに、作っている側はまだできないことがあるって感じているんだ」って、すごくびっくりしたんです。「漫画だからこそ入れられるシーンやエピソードもあると思うから、そういうところをぜひコミカライズでやってもらいたい」とおっしゃられて、もう嬉しいの一言でしたね。

山下:自分はアニメや映画とかよりも、漫画をすごくたくさん読んできた人間だと思っているんです。おそらくその影響で、アニメでもやっぱり「漫画っぽいこと」をやりたいって思っちゃうところがあるんですね。ただ、当然できないことも多いので、漫画表現に羨ましさがあるんですよ。たとえばフキダシの横に書き文字でちょっとした情報が入ってたりとか、コマの外にちょっと解説を入れたりとかあるじゃないですか。あれをやりたい気持ちって、多分アニメの監督ならみんな持ってるんじゃないでしょうか。でも実際にアニメでそういう説明をしようとすると、セリフで言うとか、カットをわざわざ作るとかしないといけなくなっちゃうんですよ。そうすると尺が無限に伸びていってしまう。漫画だとそのあたりのコントロールはしやすいと思うので、うまく生かしながら、キャラの情報量をちょっと足していったりしてほしいって話をしたような記憶があります。

米田:私は普段からバトルアクションを描くのが好きなのですが、アニメで動きを見せられるのが本当に羨ましいと思ってたので、逆にそう言っていただけるのは本当に意外でした。

山下:アクションもそうですし、音楽や動きを含めた総合的な見せ方ができるのは確かにアニメの強みですね。KASSENのシーンの反響で「これ本当にいる?」みたいなことを言われることもあるんですけど、あのシーンがないとかぐやが帰ってしまってもあまり悲しく感じないんですよ。あそこで二人のアクションを通じた友情や、帝との関係の構築を自然と見せられるから、その後の花火のシーンにもつながっていく。動きを通して展開することでプロットを積み重ねるのとは異なる説得力が出る。あれは本当にアニメの力だなと自分は思ってます。逆に漫画だとセリフや出来事で積んでいかないといけないのでやり方が異なる、といった話をして、一長一短をよくわかっているなと、お互いに感じたと思います。

キャラクターの核心――監修と再構成の妙

――キャラクターの設定などの話はされましたか?

山下:彩葉ってどういう子なのか、みたいな話は米田さんから質問いただいた気がするんですけど、覚えてらっしゃいますか?

米田:覚えてます。全体の構成を考えたときに、やっぱりまず酒寄家の話を聞いておきたい、という思いはありました。

山下:そのときに、米田さんに頼めてよかったなってすごく思いましたね。そうやって質問してもらったのって、多分初めてだったんですよ。要は実作業に入ってしまうとスタッフ内では基本的に別の話をするから、設定に関わることとかって逆に話さなくなっちゃってて。外部の人がどう感じるのかっていうのを知った貴重な機会のひとつでした。特に酒寄家の話をしていただいたのが嬉しかったのを覚えてます。

米田:彩葉とお母さんとの関係やヤチヨの秘密みたいなところも、本当に聞きたいこと、話したいことにいっぱいお答えくださったのを覚えてます。そういった部分にあるリアルさがこの作品の良いところでもあると思っているので、それを損なわずに、エッセンスをどの程度の匙加減で入れるか、今後の展開に向けてもぜひ相談しながら進めていきたいです。

――制作に入ってから、ネーム等の監修はどういった部分を重視されていますか?

山下:キャラクターがブレないかどうかの確認が中心ですが、特に彩葉と母親の紅葉との関係性について、裏設定に準じて方向性の調整をお願いしました。それ以外は、米田さんの時系列の入れ替えや場面カットなどの再構成が洒脱で読みやすく、自分たちでは思いつかない手法に「なるほど!」と感心するばかりでした。

米田:漫画ってフキダシというかセリフが持つ力が大きくて。映像と違って読者の方が続きを読みたいと思わないと進まないコンテンツなので、とにかく読みやすさを優先で、セリフを削ったり、言い回しを変えたりっていうのが多かったんです。そういう細かいところに対して「こっちの言い回しの方がいいよ」とキャラクターに寄り添った修正案を山下監督からご提示いただき、助かりましたし、私も勉強になりました。

 

名シーンの裏側と、漫画ならではのこだわり

――具体的に印象に残ったシーンを挙げるとしたら、どこになるでしょう?

山下:第3話の引きのところでしょうか。かぐやが配信を始めて、それを帝アキラが見つけるシーン。「あの頃より楽しそうじゃん、彩葉」みたいなことを言うシーンはアニメにはないんですが、すごくいいなと思いました。こういうのがあったほうがよかったかなと思いつつも、シーンが変わっちゃうのでアニメだと簡単に作れないんですよ。こうして改めて漫画で見せてもらうと、これも正しいなと感じる。そういう場面がたくさんあります。

米田:ありがとうございます。編集担当さんともここを引きにするといいよねって話していたんですが、最初は帝の目をちょっとアップで入れてたんです。でも編集さんからちょっと意味深すぎるかもというフィードバックをいただいて、あえて何も書かずにフキダシで「彩葉」っていうワードを強調する形にしたのを覚えてます。

山下:そういうやりとりがあったんですね。
米田:そうやって私と編集さんで形にしたものを、監督や原作側のみなさんにご監修いただく中で、「ここいいですね」とか「楽しく読みました」みたいな感想を所々添えてくださるのがめちゃめちゃありがたくて。毎度やったーってなっていました(笑)。

山下:そういうところは本編を作るときも結構大事にしていました。アニメのシナリオをみんなでコメントを出しながら作っていたんですけど、ちゃんと「ここが良かった」って言わないと消えちゃう気がして。お互いにそういう意見が見られると、そういう意味に取れるんだ、とか、自分で気づかなかった良さに気づくみたいなこともあって、いいと思います。

――そうした作業を経て、2月10日には単行本第1巻が発売されましたが、改めてご覧になっていかがですか?

山下:そもそも影も形もなかったオリジナル作品を、別の方の視点で再解釈して作ってくださっていることに純粋に感動しました。アニメは単発の映画作品ということもあって、少年漫画などの文法とはまったく違う、かなり特殊なシナリオ構造で作られているのですが、コミカライズは漫画としてちゃんと面白く読める作品になっていて、米田さんの再構成がしっかりハマっていると感じました。第1話とかを見たタイミングでは、まだアニメが完成していなかったので、そういう意味でも結構新鮮な感じはしましたね(笑)。

米田:いろんな方のおかげでこうして1冊にまとまって、私個人の初単行本でもあるので、とても嬉しいし、ありがたいです。作画では3Dモデルを本格的に導入するなど試行錯誤しましたが、第1話は一年近く前の制作とかになるので、改めて振り返ると前の自分の絵が気恥ずかしいところもありますね(笑)。

――そういう漫画ならではの構成や表現の部分で、意識しているのはどんなところでしょう?

米田:毎話「ここぞ」という見せ場を用意するようには意識しています。先程の読みやすさの部分もそうですし、スマホで読まれることも前提に、コマやフキダシを大きくしてテンポよく読めるようにしつつ、手や仕草でもキャラクターの感情を表現するように心がけました。顔は一番なんですけど、顔の次にやっぱり手が表現として優れているので、そこを入れるようにはしていますね。たとえば、机を挟んで会話をしている場面であえて隣に動かして同じコマに収めるようにしていることもありますし、やはり立ち回りというか、キャラの動き方とかを気にしています。でももちろん、アニメのあのテンポの良さとキャラクターの動きの可愛さっていうのは、そのまままるっと参考にさせていただいて、そこから漫画に落とし込んでいくことは常に意識しています。

山下:勉強になります。いや、本当に。ちなみに、米田さんの好きなキャラって誰なんですか?

米田:難しいですね…! それこそ箱推しなんですけど……でもあえて一人っていうと忠犬オタ公が好きです。お姉さんっぽいデザインも好きですし、盛り上げ役みたいなところも。何よりかぐやいろPの最古参ファンみたいなところもあったりして。

山下:そうですね、オタ公は裏設定がすごいいっぱいあるキャラで……かぐやが優勝宣言したときも、オタ公だけ表情が違ったり。

米田:そうなんですよ。「お?」ってなってるんですよね。あそこ。小さいカットですが、そのシーンも漫画でしっかり入れちゃいました(笑)。

「オモシレー男」と「日常の補完」

――逆に、特にここは思い切ってアニメと変えた、というシーンはありますか?

米田:あえて触れるんですけど。帝アキラの「顎クイ」はまさにそういう部分ですね。

山下:あそこね(笑)。僕、帝ならやりそうだなって思って、監修時はさらっと通したんですが、米田さん的には意味を持って入れてくれたところだったんですね。

米田:あそこのKASSENが始まるシーンはアニメだと、「黒鬼ご来臨!」ってドーンと派手に出てくるんですよね。

山下:虎バイクに乗ってね(笑)。そういう、セルフプロデュースをするヤツなんですよ。

米田:そういうところも含めて、いわゆる「オモシレー男」だと思って(笑)。ただ、そういう演出は漫画だとページ数の関係で入りきらなくて。でもここでやっぱりちょっと、帝のキャラを印象付けたいという考えで、結構思い切ったカットではありました。たしか監修出しの時にはネームの隅っこに「お触りなしですか?」みたいな確認のメモを書いていましたね。もしNGだったら髪の毛をちょっと触るとか、手を添えるだけとか、そもそも接触は無しにするとか、パターンはいろいろ考えていて。まあ、でも帝はキザで、俺様キャラですし、第一案はこれで、という形で。

山下:そこがディレクション対象っていう感覚すらなかったくらい解釈一致でしたね。改めて聞かれても、帝なら顎クイでしょう、VR上のことですし!(笑)。

米田:よかったです(笑)。ほかには大きな追加ですと、第4話の「仲良しのやつ」のあとに、かぐやと彩葉がちょっと大規模なライブをやるシーン。コメントをニコニコ動画みたいに流したりして。それこそアニメではがっつり描かれなかったんですけど、かぐやと彩葉にとって思い出深い出来事のひとつだったと思うんですね。さらにその後、疲れてもうぐちゃぐちゃの部屋で二人で寝てるっていう、このコマがすごいお気に入りです。きっとこの日は彩葉もやり切って、参考書も読まずに、そのままもうガクッとスマホをいじりながら寝落ちしたか、かぐやとワイワイしてそのまま寝ちゃったんだろうなと。

山下:本編では描かなかったけど、おそらく毎日こうやって寝てたんでしょうね。こういう欄外の部分をちゃんと補完していただけるっていうのは、本当に監督冥利に尽きるというか、嬉しいですよね。ありがたいです。

――単行本の表紙や、Xの告知などでの米田さんの描きおろしイラストはどうご覧になっていますか?

山下:いやあ、最高です! 告知などもいっぱいやっていただいてるし、アニメ側の告知にリアクションしていただいてるのもすごく嬉しくて。「ヤチヨぬい」(※ヤチヨの手作りぬいぐるみ)にも可愛いって反応してもらったり。本当にいろいろコミットしていただいてる感じがXから伝わってきて、いつもありがたく拝見しています。

米田:ヤチヨぬいのファンなので(笑)。あと、私はファンアートを描くのが大好きなので、「超かぐや姫!」でもいろいろ描いていて、外に出していない落書きもたくさんあります。隙あらば何か描きたいくらいの気持ちです!

 

届けたい想いは「すべての媒体でかぐやを浴びてください」

――最後に、このコミカライズを通じて読者に届けたいものは何ですか?

米田:『超かぐや姫!』はガッツリ2時間半近くある大作アニメで、そこに一気に浸れるっていう魅力がある作品だと感じています。その中で、コミカライズがその入門編というか、ちょっと見てみようかな、どんな雰囲気の作品なのかなっていう人に手に取ってもらう、窓口のひとつになれたらいいなと思っています。コミック配信サイトで第1話を見て、第2話はじゃあまた次の機会に、ということもできますし、自分のペースで楽しんでいただけたら! もちろんコミックス1巻で一気に読んでいただいたり、その先も見たいと思ったら、「Netflixで見れるじゃん!」みたいな形で続いてもらえたらうれしいです。もちろんすでにアニメを見た方にも、コミカライズでの違いを楽しんでいただいたり、YouTubeのMVや、ノベライズなどなど、そうして多方面で楽しめる『超かぐや姫!』の、ひとつのピースとしてハマっていたらいいな、という想いで作らせていただいております。ぜひぜひアニメともども、拙作も何回も見て楽しんでいただければ幸いです。

山下:本編とコミカライズ、ノベライズは、ストーリーの部分ではある程度沿いつつも、それぞれの媒体を活かした魅力や楽しみ方が詰まっている作品に仕上げていただきました。複数の媒体で多角的に楽しんでいただくことで、作品の「解像度」が上がっていく。解像度を上げる方法がたくさんあるコンテンツになっていると思うので、ぜひぜひ、さまざまな形で物語を楽しんで、配信の良さも生かして、何度もどっぷり浸ってほしいという気持ちです。すべての媒体でかぐやを浴びてください(笑)。

▼コミカライズ「超かぐや姫!」 カドコミで連載中!
https://comic-walker.com/detail/KC_008281_S?episodeType=first

▼コミックス「超かぐや姫!」1巻 好評発売中!
https://www.kadokawa.co.jp/product/322509000193/